第五十五話「最終決戦激化」

 Side 春龍


 巨大円盤が浮上していく。


 それと同時に複数のメンバーの反応が円盤内部の中心地に転移した。


 同時に全ての敵の戦力が巨大円盤に集中していく。


 春龍は頭上を見上げながら嫌な予感を感じた。


『春龍様、これは――』


『フェイラン。敵はたぶん逃げるつもりよ』


『え?』


『理由は分からないけどね』


 フェイランは『ここまで暴れておいて――』とぼやいた。

 この通信を聞いた皆も同じ気持ちだろう。


『なに? この反応は――』


 ふと作戦区域内部に巨大な赤と青の双頭の龍のロボットとロボットアニメとかに出て来そうな外観の戦艦がワープアウトして来た。

 戦艦のデッキの上には見覚えのある巨大ロボットがある。


 全高50m近くあるマッシブなスーパー系の黒いロボット。

 頭頂部には機関車に付いてそうな煙突、ツインアイに口元は縦のスリットが入ったマスク。

 大きな丸い肩に図太い豪腕、自重を支えるための太い足。

 背中には古き良きガスボンベ型昭和ブースター。

 名をテッコウオー。

 

 使い勝手が悪い春龍の切り札だ。


 あの美少年兄弟と一つ目の科学者が持ってきてくれたようだ。



 Side 嵐山 蘭子


 嵐山 蘭子は最初呆然とした。


 そして次にブチ切れていた。


 自分達は命を賭けた戦いをしている。


 だから殺されても文句は言えな立場は理解している。


 だがそれを理解するのと納得するのかは別問題だ。


「そこをドケェえええええええええええええええええええええ!!」


 嵐山 蘭子は赤いバイクを模したパワードスーツの性能を全開に引き上げて――通り道にいる雑魚を片っ端から粉砕し、隔壁をぶち抜き、生徒達の反応目がけて突き進む。


 森口 沙耶とグレース・ナディア、姫路 凜は置いてきている。


(もうすぐ辿り着ける――!!)


 敵の士官級だか幹部クラスと思わしき一体の上半身を蹴り砕いて大きな広間へと辿り着いた。


 50m近くある大きなゲートの前に同サイズの白いロボットが守っていた。


 周囲には雑魚が展開していたが構わず蘭子は突貫する。



 Side 天野 猛



 猛達は囚われていた。


 猛だけではない。


 城咲 春歌、揚羽 舞、天村 志郎、宮園 恵理、倉崎 稜、闇乃 影司が金色でグリーンのカバーが付いたカプセルの内部に閉じ込められていた。

 それが空中に浮かんでいる。


 脱出しようにも上手く体に力が入らない。

 そう言う超テクノロジーが使われているのだろう。

 皆も同じ状況だと考えるべきだ。



 今いる場所はとても広い。

 サッカーの試合や野球の試合が十分出来るレベルだ。

 

 広場の中央には地面と天井と繋がっている柱、その真ん中に黒い球体があった。

 そしてその前面には誰かがいた。

 二人いる。

 銀色で機械の脳が剥き出しになっている、黄色いツインアイの黒いローブを身に纏ったロボット。

 その背後には二本のアンテナと土星の輪っかのようなかぶり物を付けたマントを靡かせる、大きな杖を持った存在がいて、ただそこにいるだけでとんでもないプレッシャーを感じる。

 

『私の名はブレン――』


『そして私はブレン軍の真の支配者――ギャラクス』


 電子頭脳のロボットがブレン。

 後ろにいる土星の輪っかの様な被り物を付けた存在がブレン軍の真の支配者、ギャラクス。

 分かり易い解説だ。

 

 ブレンも只者ではない威圧感を放っているが真の支配者を自称するギャラクスはブレンとは比べ物にならない程の存在感を持っている。


『私達は本来ならば今から二年後に地球を支配するつもりだったが――結果は見るも無惨な有様だった――』


 と、ブレンが語る。

 正直理解が追い付かない部分もあるが、滅亡の未来を回避するために予定を繰り上げて地球に来たのだがどう考えても同情する余地はない。 

 

『そうして地球を襲撃したのはよかったが君達の力は想像以上だった。だから一旦体勢を立て直すつもりだ』


「つまり逃げるつもり?」


『その通りだ』


 どうやら声は届いているらしい。

 通信が妨害されていて分からないが皆も猛と同じように疑問などをぶつけているのだろう。


『妖精文明の力、神殺しの力、因果の魔人、創星の力――これを手中に収めればこの全宇宙だけではない! ありとあらゆる目に付いた世界が我々の物となろう』


「分かり易い悪党ぶりで何よりだよ」


 高らかにブレンがそう語る。

 まるで特撮番組の悪党の教科書みたいな奴だなとか思った。

 ここまでくるといっそ清々しい。)


『油断はするなブレンよ。勝ちを確信するにはまだ早い』


 ブレンの態度をギャラクスが諫める。


(まさか自分達の行動が裏手に出るなんて・・・・・・) 


 そんな二人に構わず猛は別の事を考えていた。

 奴達の目的が地球の支配である事はある意味では間違いではなかった。   

 だがその目的よりも自分達――理解出来ない部分もあるが――まさか変身に使う動力源の方が本命だったとは思いもよらなかった。


 悔しい。


 悔しくて悔しくて悔しくて――涙が出そうになる。


『クソ!! また闇乃 影司が!?』


 激しい物音が聞こえた。

 ブレンが驚いている。

 どうやら闇乃 影司が暴れているようだ。


『どんどん力が戻って――いや、パワーアップしていく!?』


 そして爆発が起きた。

 煙が上がり、中から闇乃 影司――怪人にしか見えないフォルムがパワーアップしていた。

 大きな紫色のクリアパーツが付いた肩のアーマーや羽の追加が特徴的だ。


『こいつは私が抑えよう。お前は脱出に専念しろ』


 ギャラクスが直接相手をするつもりらしい。『ははっ』と言ってブレンが下がる。

 そしてギャラクスと影司が対面する。互いの距離は10mもない――


「え?」


 猛は思わず目を疑った。

 ギャラクスが左手を突き出した。

 クレーターが出来る程の勢いで闇乃 影司は壁に激突する。

 そして天井、床、彼方此方に勢いよく叩き付けられ、最後は空中に浮かんだギャラクスに引き寄せられ――


『フン!!』

 

 大きな爆発の煙が上がった。

 

「影司君!!」

 

 猛は思わず叫ぶ。

 助けに行くために、ガンガンとカプセルを叩いて壊そうするが上手く力が入らず壊せない。


『貴様――まだ起き上がるか!!』


 影司は――煙の中からゆっくりと歩きながらギャラクスの方に歩み寄っていた。

 そして額の宝石から閃光が放たれるがギャラクスに届く途中で止まり、闇乃 影司に跳ね返って再度爆発する。

 闇乃 影司は弱くない。

 敵が強すぎるのだ。

 

『まだ弱いとは言え、流石は闇乃 影司か!!』


 だが闇乃 影司は構わず飛び掛かっていく。

 殴られ、蹴られ、杖で殴られ、とにかく一方的に為す術が無いまま攻撃を受け続ける。

 勿論反撃しようとするがそれは悉く不発に終わり、手痛い反撃を受けた。


「もういい!! もういいから!! 無茶しないで!!」


 猛は泣きながら闇乃 影司を止めようとする。

 何度も傷付き、倒れようが立ち向かっていく。

 その姿は格好良くて、心が震えて、そしてとても悲しい。

 

(諦められるか――)


 闇乃 影司の声が頭の中に響く。



「(諦められるかよ)」


『ほう、何を諦めないと言うのだ?』


 影司の決意の言葉を上から目線で挑発するギャラクス。


「(諦められるかよ!! せっかく人間捨てて!! こんな力持ったのに!! また大切な人を守れないなんて馬鹿な結末があるか!!)」


『だが現実は覆せん!!』


 ギャラクスは闇乃 影司へ目にも止まらぬ早さで急接近し殴り倒す。

 勢いよく影司は再び壁へと激突した。


 同時に円盤が激しく揺れ始める。

 

  

☆ 

 

 Side 春龍

 

 一方その頃、円盤の外では赤と青の双頭の機械龍と100m級巨大ロボットへと変形した戦艦と、自分の愛機――テッコウオーに乗った春龍は巨大円盤の上に乗って激しい戦いを繰り広げていた。

 敵のロボットやら戦艦級円盤、戦闘機級円盤諸共敵の本拠地である巨大円盤に攻撃を繰り返す。

 巨大円盤の彼方此方から砲台が現れるが構わず粉砕する。


 しかし巨大円盤はドンドン上昇していき、後数分しないもウチに宇宙空間へと行くだろうが構わず攻撃を続けながらある場所――巨大円盤中央部の三角コーンのように突き出た突起物――その先頭の球体へと前進する。


 仲間――この場合は組織の同僚と言った方がいいかも知れないが一つ目博士が言うにはこの円盤その物がブレン軍率いるブレンと言う敵の親玉であるらしい。

 そして今目掛けている部分は敵の司令部――頭脳に当たる部分だそうだ。

 またその真下には敵の心臓である動力部があり、そこを破壊すればこの円盤もお陀仏と言う事だそうだ。


 円盤の上昇は想定外だが円盤の爆発による被害を考えた場合はありがたいとも言える。


 地上の方では救助作業が本格化している。


「後で何か奢って貰わないと割に合わないわね!!」


 テッコウオーの円形の両肩から極太のビーム。

 口元のマスクのスリットから嵐。

 ツインアイからレーザー。

 大きな轟音を勢いよくロケットパンチで発射して視界内に入る敵の巨大戦闘ロボットや敵円盤を片っ端から叩き落としていく。


 同僚の一つ目博士が駆る変形戦艦ロボット、グレートノアが体や両指の砲台を使い、美少年双子であるシェン兄弟が駆る赤と青の双頭龍、アルトロンも口から吐く炎と氷のブレスで勢いよく敵を破壊していく。


『春龍様。欧州からソーディアンの援軍も到着。ラウンズもいるようです』


「遅刻よって伝えときなさい!!」


 フェイランの通信に荒っぽく返して破壊活動を続行する。


  


  

 Side 嵐山 蘭子


(クソ・・・・・・ここで立ち止まってらんねーのに・・・・・・)


 

 目に付く範囲の雑魚は倒したが嵐山 蘭子は50m近くある敵の白い巨大ロボットに苦戦を強いられていた。

 とにかく堅い上に反応速度もロボットとは思えない程にいい。

 道中倒した連中とは桁違いの強さだ。

 そうして片膝付いて息を切らしているとロボットの胴体から閃光が放たれる。


「ちょっと先走りすぎよ」


 緑色の魔方陣を展開して森口 沙耶が蘭子を庇うように立ち塞がる。


「そうね。急に血相変えて飛び込んでいくんだから」


 続いて姫路 凜が愚痴交じりに言う。


『大変だったよ。ともかく敵の本命はこの中だと言うワケだ』


 と、グレースが呆れつつも剣を構えた。


「悪い・・・・・・」


 素直に蘭子は謝罪する。


「ちょっと、一体じゃないの?」


 ズシン、ズシンと地響きを響かせながら眼前にいるロボットと同機種のロボットが左右の通路から一体ずつ追加で現れる。

 正面のロボットと合わせて計三体だ。


「こいつは本腰入れないとな――」


 そう言って蘭子は立ち上がった。

 同時に通信が入った。

 そしてバイザーに映った顔は教え子の柊 友香と橘 葵。

 今は学園島――天照学園にいる少女達だ。


 他にもリンディ・ホワイトや中等部生徒会長の三日月 夕映、グモたんにJOKER影浦の秘書の杏堂 ナツミまでもいる。


 代表して意を決するように柊 友香が言った。


『今戦っている皆さんに力を届けます!!』


 

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