第二十六話「ヒーローでも補習は受けるんです」
ヒーロー部の顧問である嵐山 蘭子先生は相変わらず、ブラウンの髪の長髪はボサボサ。メガネを掛けてくたびれた白衣を身に纏っていて、女性や教師云々以前に大人としてどうなのソレ状態だった。
教師である彼女の眼前には猛と春歌の二人の姿があった。
彼女はヒーロー部の顧問であると同時に、天野 猛や城咲 春歌のクラスの担任でもあり、どうしてもヒーロー部などの活動で遅れ気味の教科などの授業を請けおったりしていた。クラスは違うが森口 沙耶なども一緒である。
一学年上に天村 志郎や揚羽 舞、そしてヒーロー部の代表である姫路 凜は学校事態違うのでこの場にはいなかったりする。
ヒーロー部の活動は以前語った通りかなり忙しい。
と言うのもデザイアメダルが想像以上にばらまかれていたのが原因であり、学園の彼方此方でメダルから怪人化して暴れ回ったりするなどの事件が他人の都合お構いなしに起きたりするのが原因だ。
人を媒介にしないデザイアメダルの怪人は動きが緩慢だがタフでパワーもあるのでかなり危険である。
そのため、どうしても近くにいるヒーローの出番と相成るワケだ。
警備部もパトロールを強化しているが学園全体をカバーするには人手が足りず、それにブレイバーユニットの数も人材育成もまだまだであり、以前猛が言った「自分達はお役目ご免」と言うわけにはいかなかった。
「お前達も大変だな」
と、教壇に頬杖を付いて気怠げそうに嵐山 蘭子は語る。
「うん。大変ですよ」
「私も――」
猛と春歌も口々に言う。
怪人は何時出現するかは分からない。
授業をどうしても飛び出さないと行けない時がある。
学園側も理解しているのでまだマシな方だ。
「うーん・・・・・・そう言えば私あんまり学校に顔出してなかったわね」
「お前、教師からすると厄介なタイプの学生だよな」
と森口 沙耶に蘭子は嫌味を言う。
沙耶は大天才の部類である。テストでトップの成績を維持するのは余裕である。
にも関わらず体育の成績も良かったりする。
人類皆平等など嘘っぱちであるのがありありと蘭子は分かる気がした。
「そういや最近他校の仲の良い女の子と出来てるって話、あれ本当か?」
「うーん第三者がいる前にそう言うのは聞くのはどうかと思いますわ先生。まあ相手の答え次第?」
「まあ私に責任がこなけりゃどうでもいいんだけどな」
「「ちょっと・・・・・・」」
ヤサグレ気味に言い放った蘭子の言葉に二人は「それでいいのか」と思った。
「つっても教師も大変だぜ。最近の親は子供の躾まで教師に任せるらしいからな。あ~就職先間違えたかな~? ヒモになりて~誰か経済力があって面倒見のいいルックスそこそこの男いないかな~」
「よく教師として採用されましたね・・・・・・」
身の蓋も無い願望に春歌はどうしてこの教師がこの学園の教師として採用されたのか、そもそも天照学園の教師採用基準がどうなってるのか分からなかった。
「そりゃ私だって知りたいよ。こう見ても私暴走族だぜ? ライダーだぜ? それに最近変な玩具屋に入れるようになって――そこでバッタリアイツと遭遇して・・・・・・」
「玩具屋? そう言えば変身アイテムがどうとか以前言ってたような・・・・・・」
猛は以前の幼稚園でのやり取りを思い出す。
「そりゃアレだ猛。霧の玩具屋って奴。都市伝説で伝わってたけど本当に実在したんだな。んでそこでリンディの奴と遭遇してよ」
これを聞いて春歌はふと思った。
「――前も聞きましたけどリンディ・ホワイトさんとは仲がいいんですか?」
「ああまあな。よく一緒に飲む仲だよ。前も話した通り、今は学園のためにチャリティ興業して期間限定でプロレス業に復帰してるんだわ。興業は中々のもんらしい。暇だったら覗いてみるのも悪くないかもな。ミサキの奴も何か学園に来てるし――」
どうやらリンディも霧の玩具屋に出入りしているらしい。
興業も凄く上手く行っているそうだし、先生の言う通り一度覗いてみるのも悪くないかもしれない。
ミサキは何物かは知らないが。
「リンディさんも霧の玩具屋に?」
「ああ、そうみたいだな――本当にヒーロー活動しているかどうかは知らないけど、あいつ物騒な快楽主義的な所があるからな。それに行動力もある。突然海外にあるアメリカのサイエンスシティに移って、そこでも女子プロ活動続けながら飛び級しまくって・・・・・・不満言ってるけど何だかんだで人生楽しんでるよなアイツ」
春歌の疑問に蘭子は答えた。
アメリカのサイエンスシティとはいわばアメリカ版天照学園の様な最先端科学都市と認識してくれればいい。
サイエンスシティと天照学園は交流が深く、その甲斐あってか互いの学園から飛行機の直通便も出ている程だ。
「ミサキもミサキで何やってんか分からないけど、まあ碌なもんじゃねえだろ」
「ミサキさんって誰なんですか?」
と、猛が疑問を口にする。
「うん? まあヒーロー続けるつもりなら何時か会う時もあるだろう」
「そう――」
「まあ無駄話はここまでだ。プリントはちゃんと提出しろよ」
「どうでもいいけど、この学園黒板は電子黒板なのに未だに紙媒体なのね」
と、沙耶が疑問を漏らすが。
「それは校舎によりけりだし、運営者の思想の問題だな。教育現場も時代に合わせて変化する事も重要だが変化すりゃいいってもんじゃねえ。仮に全部デジタル化した場合、デジタル知識が必要になり、ただでさえ重労働の教師へ更に負担掛ける結果になるしな」
「まあ一理あるわね」
沙耶が頷く。
教師と言うのは大変である。
教科の進行度合いのチェック。
各クラスの生徒の提出物などの確認。
プリント作りやテスト作り、テストの採点。
更には受け持ったクラスの面倒も見なければならないし、部活活動の面倒なども見なければならない人もいるだろう。
これで生徒達が出来、不出来以前に人間として欠陥を抱えているのが四、五人でもいたらそれでも授業に支障を来す。だからと言って即退学とかすれば教師の存在意義に関わるわけで――
軽く考えただけでもこれだけの仕事をしなければならない。
それに時代に合わせて様々な問題が出て来てそれに対応もしなければならない。
インターネットの普及により誕生した学校裏サイトやSNSでの意味不明な悪行投稿などもその例だ。
他にもモンペ、体罰問題など、キリが無い。
「だろ? 教育現場の限界と言うより人間側の限界って奴だな。生徒の誰も彼もが天才ってなら話は別なんだろうが・・・・・・そんな教育現場に教師なんて必要ないだろうしな」
「教育って大変なんですね」
春歌がこれに同意した。
「分かったら少しは敬え、崇めろ、讃えろ」
(((本当にこの人大丈夫なのかな・・・・・・)))
などと心の中で猛と春歌は思ったりしていた。
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