第十六話「集結せよ」



 学園島の彼方此方で戦いが発生していた。


 その間にブラックスカル、ムクロは直接学園の中央部にして中枢である、セントラルタワーの屋上へと辿り着いた。


 途中まで陸路。


 そして途中から空路。

 制御した飛行型怪人を使ってだ。


 学園中にバラ蒔いた全デザイアメダルの起動装置もコンテナに積み、そのコンテナも飛行型怪人を使って運搬させる手筈だ。


『やはり待ち構えていたか――』


 ブラックスカルのボスはセントラルタワーの屋上で黒いレヴァイザーと黒崎 カイトと向かい合う。

 既に二人とも変身済みだ。


『お前はここで倒す』


『まだ復讐の途中なんでな。手早く片付けさせて貰うぞ』


『ほう――』


 ブラックスカルは歩み寄る。

 黒いレヴァイザー、マスクコマンダーはブラックスカルの武装の変化に戸惑っていた。


 黒いメダルが装填されたバックルベルトは構わない。

 だがローブを身に纏い、ウォッチのメダル装填部を連結させた物をサスペンダーの様に胸部に巻いている。

 腕にはデザイアメダルを入れてないウォッチが。

 そして手には日本刀を持っていた。メダルが装填できるようになっていた。


『お前達を倒さないと装置の設営も出来んと言うわけか・・・・・・』


『ああ、その通りだ』


『あの装備、嫌な予感がする。さっさと始めるぞ――』


 カイトは強気だがコマンダーは警戒心を露わにしていた。


『出来るかな? お前達二人に?』


 そしてブラックスカルは掻き消えた。


『まずい!?』


『なっ!?』


 黒崎カイトのブラックセイバーのボディが彼方此方から火花が飛び散る。

 斬撃によるダメージだ。


 対してコマンダーはどうにか防ぎ、交わし、目に見えない攻撃に対して反撃する。


『加速能力か!?』


『これを凌ぐとは中々やるな?』


『鍛え方が違うんでな』


『本当はもっと楽しみたかったが・・・・・・』


 メダルが周囲に現れる。

 そして次々と胸部に連結されたメダルの装填部分にメダルが装填されていく。


『ファイア』


『アイス』


『ストーム』


『サンダー』


『ミラージュ』


『アイアン』


『グラビティ』


『ブースト』


 腕にもメダルが装填される。


『コマンダー』


 最後に日本刀の柄の部分に一つメダルが装填される。


『スラッシュ』


 計十のメダルが装填された。


『特撮映画の知識も役に立つ物だ』


『馬鹿な、そんな事をすれば体が――』


 コマンダーは驚愕するが――


『普通の人間ならばな――私はもう人間など超越している』


『おい、コマンダー。これ不味いじゃ無いのか?』


 さしものカイトも危機感を感じる。


『君は一旦逃げて――!!』 

 

 コマンダーは逃げるように促すが。


『逃すか――』 


 体がとても重くなる。

 そしてブラックスカルに装填された全てのメダルは禍々しい輝きを放ち始めた。

 その光は日本刀に集束されていく。


『本当はもっと楽しみたかったのだがな――』


 瞬間、セントラルタワーの屋上で大爆発が起きた。



 あらかた怪人を倒し終えた猛や春歌にもセントラルタワーの大爆発の様子は見て取れた。

 その一方で生徒は皆、生徒会長、三日月 夕映の指示で各学校の体育館に避難している。 


「な、何が起きたんでしょうか?」   


「ねえ、確かブラックスカルの計画ってさ、ある装置を発生させて学園中にばらまいたメダルを起動させるって言う話だったよね?」


「そ、そうでしたか? じゃあ、まだされてなかったんですか?」


「うん。僕もテッキリそうだと思ってたけど、もしそうなっていたらたった二人で防ぎきれる数じゃ無かったと思うし」


「な、成る程――」


 春歌もそう言われて納得がいった。


『ここに居たか』


 ふと白い蛇を模した戦士が現れた。

 デザイアメダルは使っていない。


「君は――」


『お前とは病院前で一回顔を合わせたキリだったな――巳堂 白夜だ』


 その名前を聞いて猛は合点が行った。


「巳堂 白夜――巳堂家って確か理事会の――息子だったの?」


「と言う事は理事会の裏切り者って――」


 春歌も気付いた。

 アーカディアの面々が睨んでいたとおり巳堂家はやはり裏切っていたのだ。


『想像通り、巳堂家ってわけだ。そんな事より急ぐんなら急いだ方が良い。俺も行く』


「え? でも君はブラックスカルの――」


 猛は困惑した。

 テッキリ妨害されるものと思ったからだ。


『悪いがもう付いていけなくなった。それに父親もボコボコにして来たしな。今はケジメを付けるためにあのセントラルタワーに向かっている』


「ケジメを付けるって・・・・・・」


『ブラックスカルをぶん殴りに行く』


「そうか――分かった一緒に行こうか?」


「い、いいんですか?」


 今度は春歌は困惑する。

 二つ返事で猛が裏切り者で敵同士の言葉を信じて共闘しようとしてるからだ。


『まあ行き成り信用出来るわきゃないよな――とにかく俺は先に行っとくぜ』


 そう言って彼は駆けだした。

 スーツの跳躍力を活かして素早く建物を飛び越えてショートカットし移動していく。


「どうするんですか?」


「僕達も向かおう――」


 猛が先に急ごうとしたその時だった。


『死にたくなかったら止めておいた方が良いぞ』


「――カイト」


 猛達の近くに黒崎 カイトのブラックセイバーがボロボロになって降り立って来た。


「どうしたんですか?」


『ブラックスカルに先に挑んでみたがこの様だ。手も足も出なかった』


「そんな――」


 猛は黒崎 カイトの実力は実際に手合わせしたからよく知っている。

 ブラックスカルに単独で挑んだとしても手も足も出せずに負けるわけは無いと思っていたが、ボロボロの姿を見る限り言葉通りの結果になったのだろう。


『アイツは高速移動能力を持っている。それだけじゃなく胸に蒔いている特殊な装置の力で複数のメダルの力を同時に操る事が出来る』


「つまりエターナルみたいになってるんだね」


『はっ?』


 訳の分からない例えを猛が出してカイトは一瞬「?」となる。


「ともかく知らせてくれてありがとう」


『行くのか?』


「うん、大切な学園を守りたいから」


『そうか――』


 そして猛は駆け出した。


「ま、待って下さい!!」


 春歌もその後を追った。


(行ったか・・・・・・しかしこのままやられ放しって言うのも癪だな・・・・・・飛べるか?)


 そして黒崎 カイトも再戦を決意した。



 三日月 夕映はどうにか生徒会室にいた。


 そこの連絡施設を使って生徒会だけでなく理事会の娘の権力までもを利用して様々な場所に呼びかけていた。

 

 同じく生徒会室に辿り着いた生徒会役員の手助けもあり、どうにか根回しの作業も一段落し、彼女はセントラルタワーに目をやる。


「やれる事はやりました。後は姫路さん達に託すしかありません――」


 そう言ってセントラルタワーの方に視線を向ける。



(この学園ってこんなにヒーローがいたのね)


 一方で姫路 凜は中央の学園区を駆け回っていた。

 怪人から人々を守る為に戦っている。

 道中存在を知らないヒーロー達も立ち上がっていてくれたようで楽に仕事が済んだ。


 思いの他この学園はヒーローだらけだったらしい。


 だがそれでも延命措置に過ぎない。

 先程屋上で大爆発が起きたセントラルタワーを見る。


 あそこで何か激しい戦いが起きている。


 そしてブラックスカルの計画は特殊な装置を使って一斉に学園中にばらまいたメダルを怪人化させる事だ。


 電波状況や効果範囲をを考えるなら高い場所で学園の中央にあるセントラルタワーは正に打って付けである。


『凜、聞いてる?』


「舞? 舞なの? 今どこ?」


 突然舞から通信が来た。


『志郎の指示で学園中を飛び回ってた。手動で怪人化させてる奴を叩き回っていたけど――今はセントラルタワーに向かってる。春歌達も向かってるみたい』


「分かった。私も向かうわ。たぶん例の装置もそこにあるのね。そして黒幕も恐らくは――」


『その予測正解よ。ただ以前の戦闘データーとは比較にならないぐらい強くなってるみたいだけど』


「こう言う時アメコミだとこう言うのよね?」


『なに?』


「チームアップよ! 力を合わせて団結すれば倒せない敵なんていないわ」


『そうね、それがベストね』


 意外な返事に凜は逆に戸惑う。


「貴方こう言うノリ嫌いそうだったけどそうでもないの?」


『偶にはこう言うのも悪くないと思っただけよ。それにこんな格好して戦ってるんだから今更よ』


「そう」


 口元で笑みを浮かべながら凜はセントラルタワーへと向かう速度を速める。



 バイクで跨がる志郎は現在セントラルタワーに向かっていた。


『志郎聞いてる? 私達はバックアップに回るわ。後の事は任せて大元を叩き潰しに行きなさい』


『分かりました。世話を掛けます沙耶さん』


『ふふ、私もこの学園嫌いじゃ無いしね』


 通信が切られた

 森口 沙耶はセントラルタワーに向かっているグループのためにバックアップに回るようだ。 

 それはハヤテも同じらしい。


(この事はまだ知らせるわけにはいかないでしょう)


 まだ若葉 佐恵の死は皆には伝えていない。

 動揺させるわけにはいかないからだ。


(皆、何だかんだでこの学園の為に覚悟を決めてますね――)


 それは頼もしくもあり、そして不安を感じさせた。

 若葉 佐恵を眼前で看取ったから尚更だ。


(・・・・・・考えていても仕方ありませんね)


 そこで状況を整理しよう。

 アーカディアのメンバーのほぼ全員が向かっている。

 他のヒーロー達や森口 沙耶達を始めとしたグループは避難誘導や発生した怪人を倒しに回っている。


 警備部門、軍事部門も混乱を収拾する為に後手に回っている。


 日本政府は論外だ。

 これまでの悪事が暴露されて学園島所ではない。

 自衛隊どころか指示を出す政府の機能が麻痺している状態だ。

 独断で動こうにも近くの基地は壊滅状態である。


 最早戦争状態である。


 そしてその戦争も早くも最終局面に近付いている。


 全てはセントラルタワーで決着が付く。


『ケリを付けに行きましょうか』


 志郎はバイクを加速させた。    

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