第4話『目覚めたときのこと』
美来、次はどんな話をしてくれるんだろうな。8年分だから、色々と話のネタはありそうだけど。
「次は何について話しましょうか。智也さんのことを見つけて、写真を撮り始めてからは特に変わったことはありませんからね。智也さんに通う大学や会社についても、聞き込み調査をしてちゃんと分かりましたし」
「……普通のことのように話すけど、なかなか恐ろしいことだよ」
しかも、金髪の女の子から僕のことを訊かれた、という話が周りから全然聞いていなかったから。
「それでは、ついにあのことについて話しましょうか」
「あのこと?」
「ええ。性的なことに目覚めたときのお話です」
きゃっ、と美来は今から盛り上がっている。まあ、美来のことだし、性的なことについて目覚めた話もいずれはすると思っていた。性的なことに目覚めるということは、中学校に入学する前後のことかな。
「智也さんのことは6歳の頃からずっと好きですが、その……具体的な妄……想像をし始めたのは小学6年生くらいだったでしょうか。成長期に入り始めたときです」
「そ、そっか」
美来が小学6年生くらいだと、僕は大学2年生のときか。
羽賀は僕とは別の大学に進学し、岡村は今も勤めている土木系の会社に就職した。だから、僕は彼らよりも大学で知り合った友達と一緒にいることが多くなった。その中には女性もいたっけ。
「こんなこと、智也さんにしか話さないんですからね」
「……そうであってほしいな」
内容が内容だけに、美来はしっかりと話せないかもしれないな。様子を見ながら彼女の話を聞くことにしよう。
*****
小学6年生になり始めたときくらいから、成長期に入ったためか急に体が大人っぽくなっていきました。これで、智也さんが通う大学の女性の友人の方に近づけているのかな、と日々の成長に喜びを感じていました。特に、買ってもらったブラジャーがキツくなってきたときなんて……うふふっ。
恋愛系の少女漫画だったり、ドラマだったり、アニメだったり。そういうものに触れて、智也さんと私ならどうなんだろうと想像していました。気持ちがキュンとしました。
ある日、友達と……え、えっちな感じの要素が強い漫画を読ませてもらってキスシーンとか、裸になって体を重ねるシーンとか……それらがとても刺激的で。今度はそのシーンを智也さんと私だったらどうなるんだろうと考えたら今度は体がキュンとなったんです。初めての感覚で。とても気持ち良くなって。
「智也、さんっ……」
家に帰って、部屋で1人になったら、ずっと智也さんのことを考えていました。頭の中で智也さんとキスしたり、体を重ねたり。
その時期に買ってもらったスマートフォンで色々なことを調べました。もちろん、子供の作り方や厭らしいことも。
「智也さん。大好きです……」
智也さんに会いたい気持ちや一緒になりたい気持ちが、どんどん具体的なものになっていきました。
でも、智也さんと再会するまではあと4年待たなければいけない。結婚できる年齢になったら、智也さんと会うと決めていましたからね。再会するまでは智也さんと一緒にいる場面をずっと想像していました。
*****
さっき、かなり興奮していたからどうなるかと思ったけど、思いの外しっかりと話してくれたな。
美来は僕と初めて出会ってから10年の間で、身体的にも精神的にも成長した。
その中ではもちろん、性に関することに興味を抱き、僕という好きな人がいるから、具体的な想像をしたんだと思う。あと、小学6年生のときには、もう僕のことを今のように「智也さん」と言っていたんだな。
「想像の中だけでも、智也さんとキスしたりしたときは幸せでした……」
「ははっ、そっか」
「でも、実際にキスする方がより幸せな気分になれますし……本当に智也さんと結ばれて良かったと思います」
「そうか。まあ、キスしたときとか、本当に幸せそうだもんね」
「ええ」
そう言うと、美来は僕にキスしてきた。まさか、キスしたいからこの話をしたのかな。唇を離したときの彼女はとても嬉しそうな表情をしていた。
「こういうことを、智也さんと再会するまではずっと想像していたんですよ」
「それだけ僕のことが好きなんだね」
「……ねえ、智也さん。今夜……イチャイチャしましょうよ。明日からもお休みなんでしょう?」
「……分かった」
今週はずっと夏期休暇として休みを取ってあるし。今夜はゆっくり美来と……するか。
美来の思い出話が思った以上に盛り上がったからか、気付けば時刻もお昼ご飯を食べるような時間帯になっていた。
「あっ、もうこんな時間ですね。続きはお昼ご飯を食べてからにしましょう」
「やっぱり、まだまだ話すことはあるの?」
「8年前に智也さんのことを見つけてからは、再会するまでやっていたことは基本的に変わっていませんからね」
僕のことを遠くから見て、隠し撮りをするってことか。時々、僕のことについて情報収集をしたと。8年間、よく僕に気付かれなかったな。
「でも、話すことはまだありますので、午後もお楽しみに」
「分かった」
「お昼ご飯はパスタでいいですか? 早く続きを話したいので、さっと作って、さっと食べちゃいましょう」
「ははっ、話す気満々だね」
こんなにも楽しそうな顔をしているんだから、午後もいい話が聞けるのだろう。そんな期待をしながら、僕は美来の作ってくれた昼食を食べるのであった。
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