雪が降る★2016.12.
「みなさん、よい冬休みを」
帰りの会が終わって、皆、先生と年内最後の挨拶をする。
「先生、ばいばい!」
帰る準備ができて、先生に手を降った。
「はーい、
先生も、優しい顔で手をふりかえしてくれた。
「ゆきちゃんまたね!」
今年最後の下校。いつも通り、おさななじみのなっちゃんと帰ってきた。
「うん!なっちゃんまたね!」
なっちゃんと別れたら、家まではもうすぐ。
私は、そこから走って家まで帰る。
「ただいまー!」
……。
…………。
………………。
鍵を開け、深呼吸をして。それから元気よく扉を開けたのだけれど、家の中はシーンとしていて、私の声だけが響く。
……いつもの、私のお家。
鍵を閉めてリビングに向かう。
そして、テレビをつけると、北海道のスキー場が映っていた。
「行ってみたいなぁ……」
雪で遊びたい。
スキー、してみたい。
楽しいのかなぁ……。
しばらく色々なチャンネルのテレビを見てたけど、飽きてきて、結局テレビを見るのはやめた。
ランドセルを持って、部屋に行く。
そして、冬休みの宿題を始めた。
夢を見た。
私は北海道のスキー場にいて、私の両隣にはお母さんやお父さんがいて、、、私は笑っていた。
お父さんの手にはスノーボードがあって、お母さんの手にあるのはソリ。
私の左手はお母さんの右手に包まれていて。
空からはふわふわの雪が降っていた。
目を覚ますと、外はもう暗かった。
宿題の途中で寝てしまったようだ。
リビングに行くと、そこにはまだ誰もいない。
テレビをつけようとリモコンを手に取ったとき、鍵を開ける音が聞こえた。
私はリモコンを置き、玄関へと急ぐ。
「ゆず、ただいま」
そこには、お母さんがいた。
「おかえり、お母さん!」
私はお母さんの手を握り、一緒にリビングへ向かう。
「今日は、お父さん早く帰れるって」
「ほんと!?」
お母さんの言葉に、私は嬉しくなり、足取りが軽くなる。昨日は、夕飯を一人で食べた。お母さんと食べることが多いけど、その次に多いのは一人で食べること。だから、家族が揃う日は本当に嬉しい。
「もちろん。今日の夕飯はみんなで一緒に食べましょうね」
「ゆずひめ、ただいま」
ほどなくして、お父さんも帰ってきた。
「おかえりなさい、お父さん!」
私は、リビングに入ってきたお父さんに抱きついた。
その後、ちょっと遅い夕飯の準備が整い、全員が席についた。
「いただきます」
久しぶりの感覚に、私の手も口も止まらない。
たくさん話して、たくさん笑って。
お父さんもお母さんも、今日はいつもよりたくさん一緒に遊んでくれた。
翌朝。
寒くて布団からでるのを迷う。
けれど、うっすらと開けた瞳にうつった外の風景にばっと起き上がる。
窓ガラス越しに外を見ると、うっすらと雪が積もっていた。
雪は今も降り続いている。
外に出ると、お母さんがカバンを手に車から降りてきたところだった。
「おはよう、ゆず。早いのね」
「おはよう。どうしたの?」
仕事に行ったはずのお母さんがいることが不思議でたまらなかった。
けれど、お母さんはにっこりと笑う。
「休みになったのよ」
車のロックをかけ、私のもとまで駆け寄り、私の手をとった。
「さ、外は寒いわ。家に入って暖まりましょう」
「ただいま」
ほどなくして、お父さんが現れた。
お母さんを見て、「あれ?仕事は……?」と呟くのが聞こえた。
「オフィスの暖房が壊れたみたいで、臨時で休みになったのよ。あなたは?」
お母さんもそれを聞き取っていたらしく、ニコニコと答える。
「あぁ、こっちは北海道からくるはずの荷物が今日中に届かなくなって、仕事が出来なくなったんだよ」
お母さんはきょとんとしている。
「雪がひどいらしくてね」
お父さんが補足すると、お母さんはなるほど、と納得したようだった。
「それより……これ、組み立てないか?」
お父さんは抱えていた箱を軽く持ち上げて見せた。
それは、去年飾ったツリーだった。
「あぁ!ツリーね!たしかに、せっかく休みなんだし、もうだしちゃいましょうか」
お父さんはツリーを脇にかかえ、お母さんはカバンを手にもっている。
私の前を歩く二人の姿は昨日、夢で見た光景と重なる。
私は、お母さんのあいている方の手をとり、「私もやるよっ!」と言った。
その日は、外はすごく寒いけど、心の中はとてもあたたかい1日だった。
家族3人で楽しく過ごした1日は、私にとってはかけがえのない冬休みの思い出。
もうすぐ1日が終わる。あくびをしながら窓の外を見ると、真っ暗な世界で、白い雪がまだ降り続いている。
楽しい1日だった。
今日はもう終わってしまうけど……。
……まだまだ雪は降りやまない。
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