第4話
「本日はありがとうございました。あの、なんとお呼びしたらいいのでしょうか」
先輩が婆さんに謝意を示す。
新大久保の裏通りはさすがに照明の数も減るが、それでも多くの街灯やネオンがあり、人の目もある。だからあからさまに敬礼などの動作はできない。どこで誰につながっているかわかったものではないから。
深夜も人通りの絶えない新大久保。あちこちからエスニックな香辛料の香りが漂ってきて、安心した僕は少し空腹感を覚えてきた。
婆さんと別れたら先輩と何か食事するのもいいかな。それより本部に連絡して車を手配してもらうべきか。
そう考えて、ここがホテル街でもあることに気づいてしまった。そうだよ身体休める必要あるよ。いや変な意味じゃないよ変な意味じゃ。第一先輩がそんな事は、いや何考えてるんだ僕は。でも先輩だって疲れてるよな。うん絶対疲れてる。お風呂だって入った方がいい。あ、そんな、ダメです先輩。でも先輩がそう言うなら……。
ブーン、ブーン、とスマホの振動音が聞こえてきて、僕を現実に引き戻した。婆さんがポーチからスマホを取り出す。
「喂(ウェイ)? ……アイヤ! 相手早いナ! 大丈夫か? 頑張って逃げるいいナ!」
なんだ? 不穏な感じだぞ。先輩と僕は顔を見合わせる。
「あー、さっき分かれたチームの車ナ、変な車が後ろいるって電話ナ。でもプロだからダイジョブ」」
おい! 今スマホ切る直前に、タタタタって乾いた連続音してたぞ! 都内で自動小銃撃ってるのか!
「ダイジョブ、ちゃんと逃げ切る。みんなプロだから」
ホントか?
「こっちも逃げようナ。外はアブナイから下いこ」
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