第79話 ねぇ、まこちゃん






ねぇ、まこちゃん。


痛かった?


俺、沢山噛んで吸って舐めて。

沢山の跡を付けたよね。

痛かった?



怖かった?

あんなに怯えるなんて。


嫌だった?

突き飛ばされて、逃げられるなんて。



ねぇ、まこちゃん。






何で、誰かと付き合っちゃったの?





俺は別に、まこちゃんと付き合いたい訳では、無かった。


でも、誰かのものになってほしい訳でも、無かった。

可笑しいなぁ。

おかしいなぁ。



どうして、こんな事を思うんだろう。


まこちゃんと居ると、ふと思うんだ。





——あぁ、食べちゃいたいなぁ…って。





自分の中に、居てほしかったのかもしれない。

何処にも、行かないでほしかったのかもしれない。


そう。

今みたいにね。



俺が何も出来ないでいるうちに、まこちゃんは席に着いてしまって。

俺はその背中を、ぼんやりと見つめた。



「…裕也と真琴、何かあったの?」



ふと聞こえた、智紀の声。

心配そうな顔をして、俺に問いかけている。


うわぁ、よく見ているなぁ。

察しが良すぎて、嫌になるよ。



「あはは、何でもないよ?」



思わず苦笑した俺は、そう言い逃げして、自分も席に着いた。




ほんと、嫌になっちゃうよ。





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