第7話 茶色い目







おかしい。

俺はおかしい。


人肌恋しくなったから?

触れたその手が温かかったから?


…何なんだよ、この感情…。

離れられるのがこんなに寂しいことは、今まで無かった。



男がまた口を開く。




「そんな顔するなよ」


「そんな顔…?」


「不満そうな顔だよ」


「…してない」



俺が否定すると男は笑った。


細められた目。睫毛が少し上を向く。

あ。こいつ、睫毛なげーな…。



「…お前の目の色が好きなんだよ」


「は…?」


「髪は真っ黒なのに、目は茶色いんだな」


「…よく言われる」


「だから目を閉じないで。見たい。閉じられたら、俺だって不満だ」



冗談交じりな男の声。



目は茶色いんだな。



それは、よく言われる言葉だ。


遺伝で肌と目の色素が薄い俺。

そして髪だけ黒々としてるのも、家族全員おそろいだ。



でも、久しぶりに言われたかも。

少し懐かしく感じて、思わず小さく笑った。





「…お前、綺麗だな…」





男は、ぼそりと呟いた。




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