15日目・龍の踊り手


『な、なんだ?いきなり俺はピンチになってないか!?』


ドライトにくっついて、電気室に来た俺はいきなりピンチになっていた。


今の俺は目の前に美少女が4人いて、その内3人が俺にジリジリと迫ってきたので電気室から逃げる様に外に出ている。

美少女が迫って来るのは嬉しいが、手に手にメイスやらナイフやら魔法の杖を持って迫ってくるので、今は恐怖しか感じていない。


頼みのドライトはどう見ても刀にしか見えない剣を抜刀した美少女の顔にしがみついていて、美少女達を宥める気がないようだった。


「名前を言いなさい?

それになんでドライト様の周りをこそこそついて回ってたの?」


神官風の美少女が一歩前に出て聞いてくる、顔はニコヤカだがその笑みに俺の背筋に悪寒が走る。


「お、俺の名前は灰谷星司、ドライトの「「「ドライトの!?」」」い、いや、違うんだ!」


呼び捨てがまずかったのか、美少女達の殺気か一気に膨れ上がる。

まずい!っと思った瞬間だった、横合いから声をかけられたのわ。


「星司、何をして……何よあんた等は!星司に何するつもりよ!?」


「どうしたの、星ちゃん!?」


円と香織姉がエスカレーターを上がって来たようだ、どうやら中々降りて来ない俺を心配して見に来たようで、美少女達に囲まれた俺を見て怒って叫ぶ、その声に後ろから香織姉の顔が見えて驚いて声を出している。

そして円と香織姉の叫び声が聞こえたのか、朝日達の声も聞こえてくる。


「今の声、牧野に香織姉さんか!?」


「上で何かあったのか!?」


「警戒しながら上がるぞ、何が出てくるか分からないから気をつけろ!」


弘志とネイサンの声もしたかと思うと、エスカレーターを駆け上がって来る音が聞こえ、仲間達が姿を現す。


目の前に迫ってきていた美少女達が一瞬そちらに気を取られた瞬間を見逃さずに、俺は仲間達の方に逃げ出した。




「なんか増えたわね?」


「あんた等、何者よ?」


「そこのクズの仲間かしら?」


「ドライト様!眩しいですから懐中電灯を消してください!」


俺が仲間達と合流すると、それを気にするでもなく猫耳の美少女と神官服の美少女が質問してきて、魔法使いみたいな格好の美少女が俺の事をクズと言うと、円達も殺気だつ。


刀を持った剣士風の美少女はドライトがまとわり付いてて、顔にL型懐中電灯の光を当てて眩しがらせている。


「何こいつ等?」


「と言うか、ドライトさんの事を様付けって……」


「何にしろ得物を捨てろ!

多勢無勢だぞ!?」


円、梨花、朝日が順にそう言い、朝日の言葉に全員が半円を画く様にセイネ達を包囲し始める。


「はん!包囲したとか人数で勝ってるからって、勝てた気になるなんて未熟者だわね!」


「魔法はあまり使わない方が良さそう出すわね……

ならこの杖で、ボコボコにしてあげますわ!」


「うーん、後輩も居るみたいだし?1つ胸を貸したげますか!」


アレナム、リティア、セイネが次々と発言する。

包囲される形になったセイネ達だが、余裕しゃくしゃくの様だった。


「ド、ドライト様、離れてくれないと邪魔です!」


「……レイナはダメです、ここで私を守るのですよ?」


ただレイナだけはドライトがレイナの頭にしがみついていて、後方に下がって自分を守れと言っているので戦いに不参加になるようだった。




「うーん、それじゃあ私の相手は……そこの子とそこの子、そのパートナーかな?その隣の男にそっちの狐耳、あんたで良いわ?」


そう言って猫耳の美少女セイネは、円に百合ちゃん、弘志とエルケを指名する。


「ちょっとセイネ!独りで取りすぎじゃないの!?

ったく、じゃあ……私はそこの余裕ぶった奴に、隣の子とそこの……後輩?うん、その2人で良いわ!」


次に神官服の美少女、アレナムが朝日と桐澤さんにネイサンとケイティを指差してかかってこいと言う。


「アレナムちゃんも人の事が言えませんわね……まぁ、残り物には福が有る。と言う言葉があるらしいですし、あなた達の相手は私がしてあげますわ。

レイナちゃんはドライト様のご命令ですから、残念ですわね?」


最後に魔法使い風の装備の美少女が、レイナと呼ばれた剣士の美少女に軽く会釈しながら俺と梨花と香織姉を見てきた。


「ドライト様!分かりましたから!私は参加しませんから、ここで大人しくしててください!」


剣士のレイナは刀を鞘に仕舞うと、ドライトを捕まえて抱っこして傍観する事にしたようだ。


そして俺達はと言うと、その舐めた態度に武闘派の弘志と百合ちゃんは唸り声が聞こえるほどに怒っていて、普段は冷静な朝日と桐澤さんもアレナムを睨み付けるほどに怒っていた。


そしてセイネとアレナムにリティアが薄ら笑いで三方に散っていく。

怒り心頭の仲間達がその後を追いかけようとしたが、それを俺が止める。


「皆ちょっと待て、あいつ等はあの駄龍の知り合いみたいだから気をつけろ、相当やると思うぞ?」


俺がそう言うと、隣にきたエルケがジッと3人を見ながら言う。


「あの4人、間違いなければ龍の踊り手の4人よ?

生半可な相手じゃないわ!」


エルケが龍の踊り手と言うと、ネイサンとケイティが目見開き驚いている。


「有名なの?」


円がそう聞くと、ケイティが答えてくる。


「ええ、1人1人がSランクの冒険者で、パーティーとしては唯一のSSSランクのはずよ?」


「少し前に行方不明になったって聞いてたけど、こんな所に居たのね……?」


エルケがそう言うと、ネイサンから意外な名前が出てくる。


「確か、キャロリンって人がリーダーじゃなかったか?

それらしい人は居ないが……?」


「その名前、ちょっと前に聞いたな……あ!キャンプの時に来たよな?」


「香織姉さん、呼べないんですか?」


「無理ね、ネットはずっと切れてるわ」


俺達が集まってそう話していると、俺達に怒鳴り声が飛んでくる。


「おら!怖いなら土下座して謝れ!

そうすれば、許してあげるわよ!?」


アレナムが待ちきれないとばかりに煽ってきた。

その言葉に俺達は、それぞれの相手が待つ方向に向かうのだった。




「あのドライト様……」


「レイナの言いたい事は分かります。

しかしあなたまで参加すると殲滅力が高くなりすぎて、星司さん達の経験になりません!

だから今回は我慢するのですよ?」


「は、はぁ……それは納得したのですが、良いのですか?」


「……へ?何がですか?」


「いえ、セイネちゃん達にしろ灰谷さん達にしろ、怪我でもしたらキャロちゃんが怒るし泣いちゃうんじゃないですか?」


「………………?………………!?………………!!

す、すぐに追いかけて止めるのですよ!」


「考えてなかったんですね……」


レイナは手足をジタバタと動かして暴れるドライトをしっかりと抱き抱え直すと、皆の後を追うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る