12日目・デコトラ発見!


「あ、居た居た、香織姉!そんなところで何してるの?」


円が車止めの近くの荷物の山に隠れた、香織姉を見つけて呼びかける。


「しっ!こっちに来て隠れて、早く!」


俺達が来た事に気がついた香織姉は、慌てて静かにするように言うとこっちに来いと言う。


その言葉に戸惑いながらも、俺達は香織姉の近くまで息を潜めて向かう。


「香織姉さん、どうかしたの?

それに学園長達は?」


梨花がたずねると、香織姉はトラックが多数停まっている、荷下ろし場の方を指差し答えてくる。


「今、あそこに偵察に行ってるの、違和感を感じて学園長さん達に言ったのよ?

そうしたら一応見てくるって言って向かったわ」


「違和感?……なんか変なところ有るの?」


円がそう言って首をかしげると、香織はさらにトラックを指差して言う。


「見て?荷下ろし場に停まっている車の前にも何台か止まってるでしょ?

あれじゃ荷下ろし場に停まっている車が出られないじゃない、普通はあんな停め方しないはずよ?」


香織姉に言われて気がつく、確かにあれでは荷下ろし場に停まっているトラックを出すのに、いちいち前の車を動かさなければならない、普通はあんな停め方はしないはずだ。


そんな事を考えていると、学園長達がトラックの影から走り出してくる、学園長は何故か逆方向に走り出そうとしてマサミさんに捕まって引っ張られているが、そしてそんなマサミさんが慌てて言う。




「有った、有ったわ!ドライト様のデコトラが有ったわ!」




「こんな所に隠していたのね……」


「まぁ、木を隠すなら森の中って言うからな」


桐澤さんと朝日がそう言いながら荷物の影から顔を出し、トラックの様子をうかがう。


「しかし何だってこんな所に隠したんだろうな?」


ネイサンがそう言って不思議がっているので、香織姉が「推測だけど……」と言い淀みながら答える。


「あっちこっちに食料品や飲料水が置いてあるでしょ?

あれはデコトラに積みきれなかった分じゃないかしら?

それにここなら他にもトラックがたくさん有るから、朝日君が言ったように隠すのにうってつけだったんじゃないかしら?」


「なるほど……」


「いや、物資がいっぱい有って来て、荷物を積んだら動かすのが面倒になって置いてあるだけなのよ?」


「「「はぁ……」」」


なんでこんな所に有るのか理由を聞いて、俺達はあきれた声を出す……誰だ?


「メ、メルクルナ様!」


「ハァーイ?」


何時の間にか俺達のすぐ横にメルクルナが居た、マサミさんが驚きその名を呼ぶと、メルクルナは手をフリフリ返事をしてくる。


「い、何時の間に!?」


「全然気配が無かったぞ!?」


いきなり現れたメルクルナに驚きながら、俺達は後退るが周囲からさらに声がかけられる。


「フフフ……油断大敵ね?」


「もちろん私達も居ますよ?」


「デコトラは渡さないわよ?」


「ヅラの用意は良い?」


「「「な!?」」」


何時の間にか俺達はエルナルナ達に囲まれていた、それはともかくチエナルナは俺達に禿げ薬を使うつもりか?ヅラを俺達に勧めるな!


「なんにしろ皆さん、ちょっと拘束させてもらいますね?

いえ、そんな長期間じゃないですよ?1週間ほどです、デコトラを別の安全な場所に動かし終わったら解放しますから、抵抗しないでくださいね?」


そう言って俺達に近づいてくるメルクルナ、女神達はニコニコと笑っているが凄まじいプレッシャーを感じる。


俺達は身を寄せ有って逃げられないか隙をうかがうが、メルクルナ達の連携は完璧で全く隙がない。


そんな俺達を見ながらエルナルナが言う。


「フフ……ドライトさんに連絡される前に捕まえられて良かったわ……」


その言葉を聞いたクリスティーナ学園長がスマドを手に持ち、キョトンとしながら言う。




「え?もう連絡しましたよ?」




「「「……は?」」」


学園長の言葉に女神達は固まり動きを止める、そんな女神達に学園長がトドメの言葉を言い放つ。


「あ、ほら!いらっしゃいましたよ!?」


そう言ってクリスティーナは車両の出入り口を指差す、そこには走りこんで来たドライトが居た。


それは良いのだが、ドライトは何故か頭の角の部分にL型懐中電灯をくくりつけいて、着物を着て右手に青竜刀を持ち、左手にはRPG―7を持っていた。


「……八つ墓村か?」


「ああ!そう言うことか!……なんで八つ墓村!?」


朝日と俺がそんな事を言っていると、女神達が慌てて逃げ始める。


「ちょ、ちょっと!あれはドライトさんの本気の装備じゃない!」


「エルナルナ姉さん、そんなことより逃げないと!」


「あれ?ユノガンド様は?」


「イートインを漁ってたわ!」


「よし!見捨てて逃げよう!」


最後にチエナルナがそう言うと、女神達は顔を見合せてから頷き合い。


「「「よし、逃げよう!」」」


使える主神を見捨てて逃げることに決めたようだった。

だが逃げようとした店内への出入り口を向くと、そこにはユノガンドが立ちふさがっていた。


「このアホ共が!ドライトが来たから何だと言うのじゃ!?シリカ達はまだ来とらんから、5対1で戦えばよかろうに!

それにチエナルナよ、わらわを見捨てて逃げようとは良い度胸じゃの!?」


ユノガンドに怒鳴られた女神達は身をすくめているが、チエナルナが一歩前に出て言う。


「お言葉ですがユノガンド様が逆の立場だったらどうしますか?

それに5対1って変じゃないでか?6対1ではないですか?」


チエナルナの言葉にユノガンドは胸を張って言う。


「そんなの逃げるに決まっとろうが!

それに5対1で間違いないのじゃ、お主等がドライトを押さえている間にわらわは逃げるからの?」


「「「クズすぎる!」」」


ユノガンドの言葉に思わず俺達と女神達が声を揃えて叫ぶ、そしてユノガンドとエルナルナ達は取っ組み合いのケンカを始めるが、円の一言で正気に戻る。




「ケンカをしている暇が有るなら逃げれば良いのに……」


「それ(よ、じゃ)!」


ユノガンド達は一斉に逃げ出そうとする、だが―――


「あら?逃がすとお思いですか?」


「人の家の物をパクったんだから、覚悟は出来てるよな!?」


「……殺!」


サルファ、カーネリア、アンジュラのドライトの嫁、3人囲まれていた。


「……仕方がないのぅ、ドライトはわらわが押さえる、エルナルナ達はサルファ達を殺るのじゃ!」


「シリカさんは居ないみたいね?

3対5よ、殺ってあげるわ!」


そう言うと戦闘態勢に入る女神達。


「龍の戦闘力を嘗めないでもらいたいわね?

リア、アンジェ、やるわよ!」


「おう!」


「……殴る!」


龍達も戦闘態勢に入り緊張感が増すなか、ユノガンドがドライトに向かい叫んだ!


「ドライトよ、タイマンじゃ……かかってくるがよいぞ!

……ドライトよ、何をしとるんじゃ?」


ユノガンドの雰囲気がおかしいので皆がそちらを見る、するとユノガンド視線の先に青竜刀の切っ先と、RPG―7の弾頭部分が右に行ったり左に行ったりしてて、ドライトの姿は見えなかった。


何故か?


思い出して欲しい、運送会社の荷物の集荷場や大規模スーパーの荷下ろし場を……

荷物の積み降ろしをしやすいように、トラックの荷台に合わせた高さになっている。


そう、1メートル程の身長で、両手に武器を持ったドライトはそこを上れずに、右往左往していたのだ!




「ドライト様、あそこを上れないんじゃ……」


それに気がついたエルケがそう言うと、全員が驚愕の表情で彼女を見てからドライトの方を見る。


右往左往していた青竜刀の切っ先とRPG―7の弾頭部分が移動をやめて止まり、プルプルと震えている。


「当たりかよ……」


「ってか、飛べばいいんじゃないの?」


そう円が言うとメリルルナも「そうよね?」っと同意しているが、俺が何故飛ばないか、否、飛べないかを教えてやる。


「着物を着ていただろ?あれで羽が広げられないんじゃないか?」


「なるほどのぅ……む?移動し始めたぞ?」


ユノガンドも納得してそう言うと、ドライトが出入り口の方に向かって走っていく、それを見たマリルルナがサルファ達をニヤニヤと笑いながら見て言う。


「一旦外に出て店内を通ってくるようね?

それまでに私達と戦って、あなた達だけで耐えられるかしら?」


そう言われてサルファ達は一歩引く、ユノガンドやエルナルナ達はニヤニヤ笑いながら二歩前に出る、その時だった!




[ブロロロ~……ドガ!]




外からドライトの妹のステラとルチルがゴーカートに乗ってやって来て、ドライトを跳ねたのだ!


そして撥ね飛ばされたドライトは、放物線を画いて荷下ろし場の中に入り込んだ。




「……盗っ人は皆殺しです!」




こうしてショッピングセンターの戦いが始まったのだった。

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