6日目・物資


「あの、バックヤードで何をしていたんですか?」


そう言って香織姉が、謎の淑女に質問すると謎の淑女はため息をつきつつ教えてくれる。


「ファミ◯キが突然たべたくなったのざますが、無かったので探していたざます……」


「そりゃローソ◯には有りませんよね!?」


「変わりに艦◯れのコラボしてたざますので、パクって一杯手に入ったざますわ!」


「何してるんですか、ロッテンドライヤー女史……」


そう、バックヤードから現れた謎の淑女は……ロッテンドライヤー女史だったのだ!


そしてとりあえず全員で、ロッテンドライヤー女史のちょっと後ろをゾロゾロと着いていく俺達。

なんで直ぐ近くに居ないのか?そりゃロッテンドライヤー女史が、ブンブンと鎖がまを振り回しているからさ!


「そこざます!」


[ドゴォン!]


「ギャアァァァ!?」


「か、壁が粉々にぃ!?」


「に、逃げろ!多少の痒さは我慢して、走って痒い痒い!?」


「じょ、女史!鎖がまは勘弁アベシ!?」


通りの角に感染者が隠れていたらしく、ロッテンドライヤー女史の鎖がまで壁を粉々にされるとみんな逃げ行く。

そして、逃げる途中でボコボコにされている。


「助かるな、隠れてる感染者はロッテンドライヤー女史が全部始末してくれる」


「本当ね、でも不思議ね?感染者ばかりでドライトゾンビが1体も居ないわ?」


ヒロさんとクミさんがそう言うと、ハナエルさんが不思議じゃないわ?っと言ってくる。


「ドライトゾンビはここにロッテンドライヤー女史が居るのに気がついてるのよ、それで自分達が逃げるために感染者をけしかけて、ボコボコにされてる間に逃げてるのよ」


「ひ、ひでえ……」


恐ろしく卑怯な手段で逃げるドライトゾンビに、俺達は別の意味で恐怖した。




「でも心配だよね?」


「ん?何がだ?」


盗賊の少女、エルケが心配だと言うと、魔法剣士でリーダー格の少年のネイサンが何が?と聞く。


「何がって、公園で待ってる先生達や他の生徒達よ!」


「一応、先生達が守りを固めているから大丈夫だとは思うが……相手が相手だからなぁ?」


「そうなのよねぇ……」


そう話しているなか悪いんだが、俺は全員を呼び止める。


「ストップ、ここも見ていこう」


「おいおいまたかよ……」


「私達は本当に急いでるんだけど?」


「悪い悪い、ここは何が有るのか見るだけで、探索はしないからさ」


ネイサンとエルケ達には悪いが俺達も物資、特に武器が欲しいと中が見えない店舗を見かけると、開けて探索していたのだ。


「しかしあの駄龍の手の平の上で踊らされてる気がして、気に食わんな」


朝日がそう言いながら、エルケが鍵を開けるのを後ろで見ている。


「そりゃ間違いなくそうだろ、ここ一帯に丸して武器有り、何て書いてあるんだからな」


「そうだな、俺達が武器がほとんど無いのを知ってるんだろうな……

地図を手に入れて帰る途中に運良く、武器が置いてあるなんて不自然すぎるからな」


ここに来るまででネイサンやエルケと話したのだが、何故教師でなくネイサンやエルケ達が探索に出たのかと言うと、彼等は学園の授業が終わってから訓練と小遣い稼ぎにダンジョンに行くつもりで、装備を整えてあったからなのだそうだ。


教師達もいきなり飛ばされたために、護身用のナイフやショートロッド位しか持っていなかったので、装備を整えてあった生徒達を中心に探索隊が編成され、ネイサン達は探索に出ていたのだそうだ。


「武器だけでなく、工具なんかも欲しいんだがなぁ」


「とりあえず先生達や星司達の仲間と合流して、しっかりとした拠点確保してから探索した方が良いと思うぞ?」


「うーん、拠点を確保して壁の強度を上げのにも工具は必要だから、先に確保したいんだけどな?」


「贅沢は言えないだろ?

天使達や竜人達も徒党を組み始めたようだし、先に寮を確保するべきだと俺は思うぜ?」


「やる事が多すぎるわりに、人が足りなさすぎるか……」


俺とネイサンが今後の話をしていると、エルケの鍵開けを見ていた朝日が話しかけてきた。


「星司、ネイサン、当たりだ」




俺達はエルケが開けたドアから店内に侵入して、物色を始めていた。


「……なんだ、当たりって言ってたけど、こんなのを探していたのか?武器にはならないだろ?」


ネイサンはそう言って近くに有ったバスケットボールとバレーボールを手に取って見比べている。

そう、エルケが開けたドアから入った店は、スポーツ用品店だったのだ。


「ネイサン違う……有ったこれだ、おい、これと同じので鉄製のがないか調べてくれ」


「ん?こりゃ、棍棒か?」


ネイサンがそう聞いてくるで俺は答える。


「こりゃ野球、ベースボールって言う球技で使う道具だよ。

本当は……ああ、そこに有るボールを投げてそれで打つんだ」


「へぇ……使いやすそうだし、こりゃ良い武器になるかもな?」


「ああ、だけど木製は止めとけ?鉄製のを探すんだ」


「そりゃまたなんで?」


ネイサンの問いに、俺は野球のルールだなんだで芯が空洞だから強度が心配だと答えて、見つけた金属バットを次々と回収していく。


「なるほど……木製のはどうする?」


「他のを見てからだな、持っていけるだけ持っていきたいが、リュックも背負い袋もそんなに入らないし、他に良い物が有ればそっちを優先だな」


「残していくのは破壊するなりした方が良いんだが……時間がないか……

よし、この金属バットを回収して店内を探索だ」


俺とネイサンがそう言うと、全員が店内や倉庫らしき場所に散っていく。

すると店の奥から円の呼ぶ声がした。


「星司、エルケも来てくれる?

良い物が有ったわ!」


「なんだ円、良い物って?」


「私も?なになに?」


円が見つけたのは弓だった、長弓と単弓だったが、何故こんな物がスポーツ用品店に有るのか判らずに、円に質問をする。




「円、ここってスポーツ用品店だろ?なんで弓なんか有るんだ?」


「ああ、最初に居た学校がさ、私達の学校に似ていたでしょ?

だからさ、武道場も見かけたのよ。

なら弓なんかも有るかなって思ってたのよね?弓道やアーチェリーは、一応スポーツだからね」


そう言って円は長弓、和弓を数張取り出してくる。


「あれ?もっと持っていこうぜ?そんなに有るんだからさ?」


円は10数本有る中から選んで、弦を張った物を5張を手に持っているだけだった。


「長弓、特に和弓は扱いとか難しいのよ、だから私と経験者の百合っちと予備だけで良いの。

それでエルケに見てもらいたいのはこっちなんだけど……使えそう?」


「何これ!?弓?なんか変な物が着いてるんだけど!?」


円が差し出したのはコンバウンドボウだった。

力学と機械的な要素で作られた弓で、円はこれをエルケ達が使えるか確認したくて呼んだようだ。


「こんな物まであったのかよ……」


「アーチェリーだとこっちがメインだからね、こっちの方が使いやすいからこっちを多く持っていこうかと思ってさ」


「変な構造してるけど、基本は普通の弓みたいね?

これなら使えるのが結構いるはずよ!」


エルケはそう言うと、コンバウンドボウを片っ端からかき集め始める、円も梨花と桐澤さんを呼んで弓と弦に矢をかき集め始める。


俺も何かないかと探していると、クロスボウが目に入った。

それを手に取ろうして、俺は背筋に寒気を感じて手を引っ込める。


「あれ?良い物が有るじゃん!

……星司、要らないの?」


「なんか嫌な予感がする、円も触るなよ?」


そう言って円を止めていると、エルケもやって来てシゲシゲとクロスボウを見つめて、商品説明を見て飛び退く。




「ちょ!禿鷹のクロスボウじゃないのこれ!?呪のシリーズよこれ!」


「げ!」


「そ、そんな物をナチュラルに置いとかないでよ!?」


エルケの言葉に俺と円はクロスボウから飛び退く、すると間から手が伸びてきてクロスボウを手に取った。


「これはドライト様とチエナルナ様が苦心して作り上げた逸品ざます!

良い物が手に入ったざますわ!」


ロッテンドライヤー女史はそう言うと、近くに有ったクロスボウ用の矢、ボルトも取って嬉しそうにエプロンドレスに入れて去っていった。


「ロッテンドライヤー女史なら問題ないか……」


「とにかく他の所も探して、役に立ちそうな物を集めよう」


「そうね、女史が出入口の警備、っていうかクロスボウの試し撃ちに行ったみたいだし、当分大丈夫だろうからね」


こうして俺達は店内の探索を再開し、意外な物も見つける。


「おい、弘志、お前もこれを持って……なんだそれ?」


「星司!この店はキャンプ用品なんかも売ってたみたいなんだ、こいつは水の浄水器なんだよ!」


そう言うと弘志は大きめのポリバケツ程の機器を、俺達に見せつける。


「非常時用のか?それなら持って行った方が良いか……他に何か有ったか?」


「おう、あれが1番の目玉だ!」


そう言って弘志は体を横にずらす、するとそこに百合ちゃんが何か長い物を何本も抱えて歩いて来ていた。


「皆!ほら、マチェットをみつけたよ!」


「なんでそんな物まで!?」


「なんにしろありがたいだろ?

回収しておいたから、持っていこうぜ!」


「そうだな、皆で分担して持っていこう。

弘志、お前はその大物の浄水器を頼むぞ?」


「……ちょ、ちょっと待て、俺1人で持っていくのか!?」


「みつけたんだから、責任をもって頼むぞ!」


「冗談だろ!?」


こうして俺達はさらに店内を物色して、他に多少の保存食や缶詰を確保して外に出るのだった。




そして外に出て目にした物は!


「ざますざますざますざますざます!」


クロスボウを乱射するロッテンドライヤー女史だった。


「ちょ!女史!それ禿鷹のクロスボウでしょ!?」


「あぶな!?これ本当に呪われてるぞ!?」


「に、逃げろ……痒!痒すぎる!?」


「女史!私は感染してま、キャァァァ!?カスった?カスったわよ!?」


必死に逃げ惑う天使達に竜人達、 中には感染していない者も居るようだが、ロッテンドライヤーは関係なしに撃ちまくっていたのだった!


「……今のうちに行くか」


「安全に行けそうね」


ロッテンドライヤーの矢が飛びまくるなか、俺達は1時間ほどで賢者の学園の面々が仮の拠点にしている公園に到着したのだった。

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