5日目・共闘


「キャアァァァ!?」


「!? 私の生徒に手を出すな!」


「クミ!」


コンビニの出入口から飛び込んで来た影――ドライトゾンビに押し倒された盗賊の少女が悲鳴を上げる。


その声に真っ先に反応したのはクミさんだった、近くに有った何かの1升ビンを手に取るとドライトゾンビに殴りかかる。


「その手を離せ!ドライトゾンビ!」


「む!?小癪な、頭突き防御!」


振り下ろされるビンに気がついたドライトゾンビはビンに向かって頭を突き出した!


[ゴン!]


「そんな跳ね返された!?」


「フハハハ!私の石頭を嘗めないで貰いたいものですね!?

……あれ?あなたは何で私の下に居るんですか?」


ドライトゾンビはそう言うと、盗賊の少女を噛まずに不思議そうに見つめるのだった。


するとコンビニの外からゾロゾロと1メートル程の姿になった龍達が入ってくる。


「あなたが押し倒したのよ……」


「早くどいてやれよ!」


「これは失礼しました……ありゃ?私に殴りかかる度胸の有る方はどなたかと思ったら、クミさんじゃないですか!」


「……ドライトゾンビじゃなく、ドライト様ですか!?」




「た、大変失礼しました、ドライトゾンビかと思ってしまって……」


「いえいえ、こんな格好なので仕方がないですよ!朝食のオムレツにかけるケチャップをこぼしてドライトゾンビみたくなっちゃったんです。

それよりも店員さん、店員さんは居ませんか!?液体ム◯アルファEXが欲しいんですが!なんならクリームタイプで妥協しますよ!?」


コンビニの出入口から飛び込んで来たのはドライトゾンビではなく、ドライト本体だったようだ。


今は店内で店員を探してパタパタと飛び回っている。


「ドライト様、店員は居ませんよ?

ドライト・オブ・ザ・デッドと聞いて、結構な人数が逃げに入りましたから」


「な!?それじゃあ私は液体ム◯アルファEXを自力で探さないといけないと言うのですか!?

こんなに痒いのに!」


ハナエルがそう伝えると、ドライトは驚き痒がってる。


「ドライト様、ゾンビに噛られたんですか?」


ハナエルがそう聞くと、食料や飲み物を漁っていた龍の1体、カーネリアがやって来る。


「このバカ、蚊に刺されたって言うんだよ?

龍の鱗や皮が蚊ごときに破られてたまるかってんだ!」


「リアは何を言うんですか!蚊は恐ろしいのですよ!?あの突き刺し切り裂くのに特化した口は恐ろしいのです!」


「で、刺されたのかよ?」


「気分ですよ、き・ぶ・ん!」


「よし!俺がム◯を塗りたくってやるよ!」


「ひゃあー!?スースーします!?」


カーネリアは素早くドライトを捕まえると、液体ム◯を塗りたくり始める、ドライトはあまりのスースー感に身悶えするのだった。




「それで、ドライト様は何をしにこのコンビニ?」


「食料や飲み物の補給です、ケプ!……コーラ飲むとゲップが出ちゃいますね!」


そう言いながらドライトはコーラをゴクゴクと飲んでいく。

他の龍もサンドイッチやおにぎりにジュース等を貪っている。


「……食料なら他にも有るのでは?」


「たまにはジャンクフードも良い物だと思ったんですよ?」


そんなことを話していると、外から新たに2体の龍が入ってきた、ドライトと同じ銀色の龍でドライトより一回りほど小さい龍だった。


「兄様、この回りには居ないみたいです」


「あ、ズルいです!私達も食べます!」


2体の龍はドライトの妹のステラとルチルだったようだ、ドライトに何かの報告をすると2人もサンドイッチやポテトチップスに飛び付き食べ始める。


「うーん、あのアホ共はどこに消えたんですかね?ポリポリ」


「ド、ドライト様、良いのですか!?」


ステラにルチルやドライトにドライトの嫁達がジュースやポテトチップス等のジャンクフードを貪り食べるのを、ハナエルは驚きながら見て質問する、普段は母親のセレナに止められているからだ。


「ん?ああ、これですか?世紀末感出すために物資を略奪したりしても良いことにしてますから、問題ありません!

母様もたまにはジャンクフードとか食べても良いと、認めてくれましたし!ポリポリ」


ドライトはそう言ってポッキーをポリポリと食べている。


「は、はぁ……」


「あの……私達は帰っても良いでしょうか?」


そう言ってドライト達に話しかけたのは賢者の学園の生徒達だった。




「ん?ああ、すいません、先程はご迷惑をかけました、お詫びと言ってはなんですが情報を1つ。

拠点を造って籠るのも良いですが、防衛や物資の準備が不十分なら止めた方が良いですよ?

ドライトゾンビや感染者は多くの人が集まる場所に寄ってくる習性が有るようなので……」


「え!そ、それってどう言うことですか!?」


「そちらの灰谷さん達の学校に妹達がトレインでドライトゾンビを集めましたが、あれは学校に多くの人が居たのも原因のようなのです!」


「ようなのです!ってあんたがそう設定してるんだろ……」


思わず俺がそう突っ込みを入れると、ドライトはパタパタと俺の目の前に飛んできて人差し指を立て左右に振りながら言う。


「気分ですよ、き・ぶ・ん!」


おう!スゲームカつくわ!


「何にしろ私達もまだまだ捜索が済んでないので、これから直ぐに出発しなければなんですよ?」


「探索?」


「いえ星司さん、捜索です!」


俺の問いにドライトがそう答える、すると横で聞いていたハナエルが不思議そうに聞く。


「ドライト様、ここはドライト様が創った疑似空間ですよね?

なのに何か探すのにそんなに時間がかかるのですか?」


そう言えばここはこの駄龍が創ったんだったな?

なら知覚したり感知出来るはずだよな?なんでしないんだ?


そう思って俺達もドライトを見ると、ドライトは顔をしかめて答えてくれる。


「私達が探している物を持ち逃げした人物がそれなりに力が有るのと、現在はドライト・オブ・ザ・デッドを楽しむためにある程度は自分にも制限をかけているので、感知出来ないんですよ……」


「それで、その物って何なんですか?」


朝日がそう聞くと、アンジュラ現れて言う。


「……夫の……家族のデコトラ……必ず、取り返す!」


「デ、デコトラって……学校に乗り込んできた時のあれ!?」


「あれ……あのデコトラって、ユノガンド様が乗り回してませんでした?」


円が驚きながら言い、香織姉が学校から脱出する時の事を思い出しながら言うと、ドライトが怒りながら叫ぶように言う。


「そうなんですよ!あのアホ共は人のトラックを勝手に乗り回しているのです!

そしてそのトラックに奪ったり略奪して集めた物資を積み込んで、逃げ回っているのです!羨ましい!」


おい、本音が漏れてんぞ?


何にしろ、ユノガンド達はドライトのデコトラで物資を盗んだり奪ったりしながら走り回って逃げているそうなのだ、そしてドライトとその妻達と妹達は家族が画かれたデコトラを取り返そうと、ゴーカートであっちこっちを探しているそうだ。




「しかしユノガンド様達はどこに隠れているんですかね?」


「なー、今朝がたチエナルナのやつは見かけたけど、ソッコーで逃げられたからなぁ」


「コソコソしながら、町の情報を集めてるみたいね?」


「シリカ姉様、ならユノガンド様達は物資の収集を止めたのかしら?」


「……なら、物資を……横取りしちゃる!」


ドライト達はどうやってユノガンドを見つけるか話し合いを始めてしまう。


すると盗賊の少女がヒロさんに皆の所に戻らせてくれてと言い始める。


「先生達や皆の所に今の情報も含めて報告に行きます、ヒロ先生それでわ」


「ちょっと待ってくれ、今朝日達と話し合ったんだが、共闘しないか?」


出ていこうとしていた学園の生徒を俺が呼び止めて、一緒に行動しようと提案する。


「……何が目的だ?」


学園の生徒のリーダー格の少年が不信そうに聞いてくる。


「おい、集まれ、ヒロさん達もこっちに、ドライト様達が飲み食いと話し合いに夢中なうちに話したい」


「ん?なんだ?」


「どうしたの?」


朝日達とクミさんも来たところで俺は話始める。


「もう1度言うが、うちの学校、城ノ内高校って言うんだが、そこと賢者の学園で共闘しないか?」


「……なんで急にそんな事を?」


「あそこに居るハナエルさんとハマリエルって女の子が天使族で、フルって言う少女が竜人族なんだよな?」


「ああ、3人共に幹部だ、特にハマリエル様とフル様はあんななりだが、ドライト様に鍛えられているから相当強いぞ?それがどうした?」


学園の生徒に代わってヒロさんが答えてくる。


「ヒロさん達が戦って勝てますか?幹部じゃない天使や竜人達とです」


「……無理だな、1対1じゃ無理だ、クミと2人がかりなら10回やり合って1回勝てれば良い方だな」


「マサミやバイアー達がいれば幹部とやり合ってもそうそう負けないとは思うわ?

あ、負けないだけよ?勝てる気はしないわね。

それがどうかしたの?」


「いや、物資を集める時に……ライバルになる訳ですよね、あの人達に、勝てますか?」


「「「あ……」」」


「それに、多分ですけど学園の人達を参加させたのは、うちと争わせるためじゃないかと思うんですよ」


「「「!!!」」」


「天使や竜人の人達とじゃ相手になりませんし、ドライト様やユノガンド様は俺達には天災にしかならないでしょう……

それでライバルを用意した、それが賢者の学園の皆だと思うんですよ」


俺の話を聞いた皆は声もなく驚いていたが、納得出来たのか頷いている者もいる。




「あり得る話だな、それは分かったがなんで共闘なんだ?」


そう聞いてくるヒロさんに俺はハッキリと答える。


「単純な話なんですが、数は武器になります、それに余計な敵が減るのは大きいです」


「なるほどな……」


「それで、一応全員に声をかけ「「「それは反対!」」」は?」


「そっちもか……問題有る奴が何人かいるだろ?特に1人は頼子の事もあるし絶対に呼びたくない」


「そっちもなの?学園の問題児、じゃなく、人として信用出来ないのが何人かね……?」


朝日と盗賊の少女がそう言って嫌な顔をしている。


「……よし、そいつ等は見捨てよう!

で、共闘するって事で良いのか?」


「一応先生達や他の皆にも聞いてみるが、問題ないと思う」


リーダー格の少年がそう言ってくるので、俺は続ける。


「じゃあまずは、信用出来る先生と生徒だけに声をかけるか」


「それで良いと思うわ」


盗賊の少女がそう言ってきた時だった。


「さて、お腹もふくれましたし、出発しますか!」


「次は港の方を探してみる?」


「そうですね……そうしてみましょう!

あ、皆さん、私達はユノガンド様達の捜索に向かいますので、ここでお別れです」


ドライト達は食事が終わり、出発するようだった。

どこを探すか話ながらこちらに挨拶をしてくる。


「あ、はい……あれ?ハナエルさんは?」


「ハナエルですか?ハナエルならメルクルナさんを裏切れないと言うので……縛ってそこに転がしてあります」


「むーむー!」


おおお!?何時の間にかハナエルが猿ぐつわをされ、グルグル巻きになって転がっている!


「それでは皆さん、さよならですよ!」


「兄様、おやつにこのお菓子持っていって良いですか?」


「こっちのジュースも!」


「はい、私も持っていきますよ!」


そう言うとドライト達は両手にお菓子やジュースを抱えて外に飛び出して行った。

ハマリエルとフルはドライト達についていくようで、一緒に出ていく。




「行ったか……俺達も行くか」


「あ、ちょっと待って下さい」


俺が俺達も行こうと言うと、盗賊少女が止めてくる。


「忘れ物?」


円かがそう聞くと彼女は


「ハナエル様を助けようかと……お世話になったし」


彼女はそう言うと、ナイフを取り出してハナエルの近くに行く、そして猿ぐつわを外すとロープを切る。


「助かったわ……ありがとう」


「い、いえ、じゃあ私達は行きますね?」


「待って、私も着いていくわ、ドライト様とメルクルナ様の争いには参加できないし、他の幹部クラスが相手だと私じゃ当てにならないけど、他の天使族や竜人族の押さえにはなれるはずよ?」


「本当ですか?助かります!」


「助けれられたし、ここで見捨てるのもね……誰か心強い味方が居てくれれば良いのだけれど……」


ハナエルがそう言った瞬間だった、店のバックヤードから声が聞こえたのは!




「なら私が味方してあげるざますよ!」




こうして俺達は謎の淑女を味方につけて、店から出ていくのだった。

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