救援かと思ったら、新たな脅威だったと言う、よくある話。


グラウンドは酷い有り様になっていた、トラックに撥ねられて手足が折れていたりする者、轢かれて潰れている者もいる、しかし死んでいる者は1人としていなかった。


その光景を見て、生徒達と教師の一部はゲーゲーと吐いている。

そしてトラックの運転席から降りてきたユノガンドは、高笑いをしていた!


「フハハハ!見たかドライトよ!

わらわが見事に仕留めたぞ!?」


「こりゃユノガンド様の1人勝ちですかね?」


「フハハハ!星司達を仕留めたからの、わらわが1番の高得点で間違いなかろうて!フハハハ!」


「あれ?でも、星司さん達にしては魂が穢いような?

円さん達に変な事をして……されて穢れましたかね?」


なんて話ながら、轢いてミンチになっている者達のそばまで行くと……


「あれ?こいつ等……邪神じゃないですか!?」


「なんじゃと!?……ほ、本当じゃ!?こいつ等では得点にならんではないか!」


「魂の格が高かったから、間違えちゃったんですね……ユノガンド様、0点です!」


「そ、そんな、なのじゃ!?」


得点とか勝ち負けがどうのこうの言っている2人だったが、俺はそれ以外に聞き逃せない単語があったので、怒りに震えながら2人の元に歩いていく。




「ユノガンド様にドライト様、お久しぶりですね?

それで誰を狙ってたんですか?」


「ん?それは灰谷星司とその一党じゃ!」


「あの人達はチートを授けてあげたと言うのに、なかなかアルレニアに来ないんですよ?

そこて私の造ったこの強制転生マッスィーンで、アルレニアに転生させようとですね……あれ?」


そこまで言って、ドライトはこちらを見て誰と話しているのか気がついたようだ、驚きで目と口を広げてプルプルと震えてこちらを見て


「クチュン!」


くしゃみを我慢してただけかよ!?


……あれ?後ろの荷台の観音扉が少しだけ開いる……なんかコソコソとメルクルナ様とアルレニス様が出てきて、辺りの様子をうかがってるな?


あ、メルクルナ様が走り出した……偽アルレニスの後ろに行って……な、なに!?


「そほぃ!」


[サク!]


「ぐ!?き、貴様はメルクルナ!?」


「うへへへへ!そいそいそい!」


おおお!?メルクルナ様が偽アルレニスにいきなり槍を突き刺したぞ!?

しかも続けて刺している、刺しまくっている!何なんだ一体!?


「メルクルナ様!私の分も残しておいてくださいよ!

この邪神め、人の名前を騙るな!おりゃ!」


続けて走り込んできたアルレニス様が剣で斬りつける、偽アルレニスは今や血みどろになって息も絶え絶えだ。


「うわぁ……あれ上手く急所を避けて攻撃してますよ……」


「ひ、ひでえ……生き地獄だわ、ありゃ……」


自分達の世界から帰還した弘志と百合ちゃんが、そう言って真っ青になっている。


弘志の恋人の百合ちゃんは、弘志が通う古武術道場の娘なので、メルクルナとアルレニスの攻撃がどんだけえげつないか、理解できているのだ。




「っち!」


あ、偽ハザが逃げようとして……おお!?一瞬で現れた黒髪の美丈夫に顔面を掴まれて、捕まった!


必死に逃げようともがいているな、美丈夫……あれドライトのお父さんでディアン様だっけ?

ディアン様の体を殴ったりしてるが、ディアン様は涼しい顔だ……


[パキョ]


「げ!?」


「ヒィ!?」


おおお!?偽ハザの頭から軽い音がしたと思ったら、ビクンと体が跳ねて動かなくなったぞ!?

しかも、なんか見えちゃいけない物が見えてる!


朝日と桐澤さんもドン引きしてるわ……


[ブロロロ~]


ん?……なんか校門からゴーカートが、3台入って来たぞ?

後ろにマイクロバスも着いてきてるな?


あ、マイクロから人化したセレナ様とかハザ様が降りてきた、ゴーカートに乗ってるのはドライトの奥さんのアンジュラ様と、妹のステラ様とルチル様だな……なんでこっちは龍の姿のまんまなんだろ?


「邪神は……残ってないようね?」


「セレナ殿、周りも邪神の気配は無いですな」


「「うっほほ~い!」」


「……これ……なかなか面白い」


セレナ様とハザ様は周囲を警戒して見回している、妹さん達とアンジュラ様はゴーカートでグラウンドを走り回っている。


そしてセレナ様が瀕死の偽ハザと偽アルレニス、いや、邪神達をチラッと見ると手を振る。


それだけで邪神達は塵の様になり、消えていってしまった!


「ほらドライト、皆困っているわよ?」


邪神が消えるのを見届けたセレナは、ドライトを呼んで説明してあげなさいと言う、ドライトは素直に従ってパタパタと飛んで俺達の前までやって来る。




「皆さん初めまして!

私が銀龍ドライトです、星司さん達は半年ぶり位ですね!」


おい、声をかけてくるな、知り合いだってバレるだろうが!


「え……?灰谷君はあいつらを知ってるの?」


「いや、達って言ってたから、朝日君達もあいつ等の事を知ってるんじゃ?」


あ、ダメだ、皆が騒ぎ始めた。


「おい、灰谷に朝日!お前ら、あの邪龍と知り合いなのか!?

まさか俺達が死んだのは、お前等のせいじゃないだろうな!?」


げ!岡田の野郎が更に余計な事を言いやがった!

ドライトの事をハザ様の偽者が、邪龍呼ばわりしてたのがセレナ様達にバレただろうが!


セレナ様やディアン様が凄まじい怒気を発してる、やべ、何人か当てられて倒れてる!


「父様、母様、まあまあ落ち着いて下さい!

愚かなことを言った邪神はもう、滅んでいるんですから!」


「そうね……今さら復活させて罰するのも面倒だし、ドライトがそう言うなら良いのかしらね」


「うむ……だがそこの小僧、我が息子を邪龍などとまた呼べば、死よりも辛い目にあう事になるぞ?

分かっているだろうな!?」


こ、怖えええ!?


何時もセレナ様の影に隠れてて、ディアン様は印象に残ってなかったけど怒ると恐ろしいわ!


ドライトの父親だからただ者じゃないとは思っていたけど、予想以上だわ、こりゃ!


岡田のバカは……おお!?真っ正面からあの怒気を受けて、平気で立って……あ、気絶してるわ、ションベンを漏らして!


ま、まぁ少し離れた所に居た俺も少し漏らしたし、しゃーないか……


あ、ドライトが岡田のそばに行ったな……お、魔法で水球を造り出した、あれで目を覚まさせるのと漏らしたのを誤魔化すつもりか、良いところ有るなアイツも!


[パシャン!]


岡田の上に出来た水球はそのまま自由落下する、そして岡田は頭から水を被るのだった。


良かったな岡田、漏らしたのが周りに……あんまりバレなくって!




「………………すっぺえ!?なんだこれ!ってか痛て!目が痛いぞこれ!?」


頭から水を被った岡田は目が覚めたようだが、同時に酸っぱいだの目が痛いだの言って悶え始める。


するとディアン様が嫌そうな顔をしながら水球を作り出して、岡田にかける。


「酢玉だな、流石に人間用に濃度を落とした物だが……恐ろしく酸っぱいと思うぞ?」


よく見ると、何故かドライトの奥さんの1人のカーネリア様と、ユノガンド様にメルクルナ様も嫌そうな顔をしている。


「何にしろ皆さんも、詳しい話が聞きたいでしょう!

こちらに集まって下さい!」


そう言ってドライトがトラックの近くに皆を招き寄せる。


「それでは……見てください、1番目につく歩道側のボディには、美しく光輝くセレナ母様が画かれています!」


確かにトラックの荷台のボディ、正面から見た右側には美しい白龍が画かれ、近くには[止めてくれるなおっかさん!]っと書かれていた。


「そして逆側には、雄々しく凛々しいディアン父様が!

後ろの観音扉にはステラとルチルが画かれています!」


トラックは無人なのに独りでに動くと、逆側と後ろを俺達に見せる。


ディアンの所には[行ってくるぜお父つぁん!]妹達の所には[トラック魂心に秘めて、今日も東西南北走り抜く!]と書かれていた。


うん……だから?………………こいつまさか、俺達が何か聞きたそうにしてたのは、トラックの事を聞きたいと勘違いしたんじゃないだろうな!?


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


「星司さん、言いたい事は分かってますよ……」


ああ、現状もちゃんと説明してくれるのか……トラックの自慢したいだけじゃなかと、心配したぜ!


「祖父母が画かれてないじゃないかと、言いたいんですよね!」


こいつやっぱ、トラックを自慢したいだけかよ!?


ドライトの言葉に、岡田と何人かの男性教師と生徒が詰め寄ろうとしたが慌てて逃げ戻ってくる。


何故かと言うと、ドライトは10トントラックをヒョイっと、持ち上げたからだ、そしてトラックの天井部分を見せつけてくる。


そこには4体の龍が四方を睨み付けいる絵が、画かれていた。


「見えない所で私達を見守ってくれている祖父母を、イメージしました……クゥー、格好いいですよ!?」


ドライトは嬉しそうに悶えている、周りの皆はトラックを軽々と持ち上げるドライトに文句も言えずに、遠巻きに見守っているだけだった。




「あー、ドライト様、確かに素晴らしいトラックですが、私達が聞きたい事はそういう事じゃないんですよ?」


朝日が意を決して、1歩前に出てそう言うと、シリカ様がドライトに一言言ってくれる。


「ドライト、星司さん達はともかく、他の皆は初めてだから不安なんでしょ?

これからの事を説明してあげなさいな、あと、私達は画かれてないんだけども?」


シリカにそう言われて、ドライトは「ああ……」っと納得するとこれからの事を説明し始める。


「皆さんは蘇生して元の場所に戻すので、ご安心下さい。

あなた方が死んだのは邪神の攻撃ですので、特例として地球の神々にも認めてもらいました!」


ドライトの言葉に周りから歓声が上がる、それをニコニコと見ていたドライトは静かになると続けて言う。


「あと、シリカ達はトラックのキャビンの、寝台部分に画かれていますよ!

……そういえば最近、ネットで安く映画やドラマが観れるんですよね?」


ん?なんだ?急にネットテレビの事を言い出したぞ?


ドライトが突然にネットテレビの話をしたしたので、朝日や円等、俺達は警戒を強める。


そしてドライトは続けて言い放つ―――




「最近、ネットテレビで……バトルロワイヤルを見たんですよ!」




「全員!散開して逃げろ!」


朝日の叫び声と共に、俺達は一斉に駆け出したのだった!

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