3度目の勇者召喚   今度は集団誘拐だ!


異世界での夏休みを終え、円と梨花と香織姉に無理矢理渡された鍵を手に、卒業後にもう一度異世界のアルレニアに行く約束をさせられてから半年が過ぎた。


円達やドライトから何かしらのアクションがあると思って警戒していたが、その後は普通の日々が続いていた……円達3人とデートさせられる以外は!


いや、嬉しいよ?美少女2人に美女1人を俺1人で独占出来るんだからさ?

でも、周りの視線がなぁ……後、どうせなら1人1人とジックリとデートもしてみたい。


何にしろそんな毎日が続き、男の友達や同級生からは「死ね!」「いつか殺す!」「地獄に落ちろ!」等とニコヤカに言われ、女子からは祝福されつつ何かしらの包囲網が完成してるんじゃないかと言う、恐怖感と戦う日々を過ごして明日から春休みという日になっていた。


終業式も終わり、教室で帰り支度をしていると2人の美少女に声をかけられた。




「灰谷殿、婿殿はいらっしゃいませんか?」


「私も弘志君を探しているんだけど……」


「ん?ああ、桐澤さんに百合ちゃん?朝日と弘志に用事?そこらに居なかった?」


この2人は桐澤頼子さんと高城百合ちゃんと言い、桐澤さんは朝日の婚約者で百合ちゃんは弘志の恋人なのだ。


桐澤頼子さんはスラッとした美人で、表情もキリッとした武人みたいな女の子で、対して高城百合ちゃんは身長が150cmのロリっ子なんだ。


何にしろそんな2人が、それぞれのパートナーを探しているようで声をかけてきたのだ。


朝日や円とは同じクラスなのだが、この2人とはクラスが違うので朝日と弘志が居ない時はよく俺が聞かれてた、円と梨花には聞かないので不思議に思い、前に聞いたことがあるのだが帰ってきた答えが―――


「「3バカだからあなたに聞けって言われました」」


っと、言われた。


言ったやつ誰だ!?っと怒って級友を見回すと、円が前に出て。


「私だけど文句有るの?」


と、言われて俺は


「ありません……」


っと答えたのは良い思い出だ。


何にしろそこらに居るだろうと思いそう答えると、2人は「それが見当たらないんですよ」っと答えてくる。


「あれ?おかしいな?

朝日は生徒会はないし、弘志も部活はないって言ってたんだけど、本当に居ない?そこらに転がってないか?」


俺がそう言って自分の机の下を見ると、百合ちゃんが笑いながら言ってくる。


「星司くん、もー下は見たよ!」


もう見てたのかよ!?いや、普通は机の下は探さないだろ!?

百合ちゃんの返事に俺は半ばひきつりながら周りに声をかける。


「おーい!誰か朝日と弘志を見なかったか!?」


「ん?あの2人ならゴミ捨てに行ったぞ?どうかしたのか?

……って、桐澤さんと百合ちゃんか、もうすぐ戻ると思うよ?」


少し離れた所にいた男子生徒が、そう教えてくれる。




「って事らしいから、ちょっと待っててよ?」


「分かりました」


「ん、りょうかーい!」


2人はそう言うと近くの空いてる席に座り世間話を始める、それを横で聞きながら、ふっと思い付いた事があり質問してみる。


「なぁ、今度の春休みは2人も一緒に出かけられるのか?」


この2人、夏休みはどうしても予定が合わずに泣く泣く不参加になっていた、冬休みは正月に2日参りしたのだが、やはり2人とも家の用事で不参加だった。


だからこそ、この春休みは気合いがはいっており、絶対に一緒に行くと息巻いていたのだ。


その事も含めて聞くと、2人は嬉しそうに言ってくる。


「はい、両親の許可がおりたので行かせてもらいます」


「うちも用事が被らないようにしておいたから、大丈夫だよ!」


そう言ってくる2人に俺も嬉しくなり今の所、決まっている行き先を伝える。


「OKー!って事は8人か、今の所考えてる行き先は、梨花の希望で三重の鳥羽水族館と和歌山のアドベンチャーワールドなんだわ。

2人はどっか別に希望有る?」


俺がそう言うと2人は嬉しそうに叫ぶ。


「「トドとサーバルキャットに会える!」」


「ジュゴンとパンダじゃないの!?」


「「……居ましたっけ?」」


などと話し合いながら笑っていると、横から声をかけられる。


「騒がしいと思ったら、桐澤と百合っちか……」


「この3人って珍しいですね?何の話してるんですか?」


やって来たのは円と梨花だった、2人に今の話をすると、笑いながら近くの自分の椅子を持ってきて俺の席に陣取る。


「そっか、2人は今回は行けるのね?

正直、朝日と弘志の面倒をみてもらいたかったよのね?」


「2人も来るなら部屋割りも考えないとですかね?

5人で泊まれる部屋って有りましたっけ?」


そう言ってタブレットを取り出すと、宿泊を考えているホテルのページを開いて、キャキャ言いながら4人で見始める。


それを見ているとその先に、ゴミ箱を持った朝日と弘志が教室に入ってくるのが見えた、その事を桐澤さんと百合ちゃんに伝えると嬉しそうにそちらを見る、そして――


「「………………え!?」」


そこに現れたのは魔方陣だった、朝日と弘志が消えると魔方陣は大きくなり、桐澤さんに百合ちゃんも消え、円と梨花に俺も魔方陣の中で消えるのだった。




「ううう……またかよ!

朝日、弘志は何処だ?円と梨花も居るんだろ!?」


俺はそう言いながら目を開くと、何もない白い部屋の中だった、そして周りを見回して驚愕する。


「頼子!大丈夫か!?」


「百合、俺が居るから心配ないぞ!?」


「星司、こっちよこっち!」


「皆さん落ち着いて!」


「な、なんだよ今の!?」


「ここって何処なの!?」


俺達だけでなく、教室にいたクラスメイトが居たのだ!


俺や朝日に弘志、円と梨花は召喚されるだろうと思っていたし、桐澤さんに百合ちゃんも消えるのを見たので、呼ばれたんだろうなぁ~とは考えていた。


だが俺の周りには他にもクラスメイトが居て、少し離れた所には別のクラスの奴等が居た。

そしてそれだけでもっと離れた所には、下級生も居るようで、「先輩!ここは何処ですか!?」や「弟も居るの?何処!?」等と叫ぶ声が聞こえる。


俺は混乱しながらも円達と合流するために、皆の方に走り寄る。


すると近くから香織姉の声がする。


「皆さん!各クラスで集まって!

先生達も居るから安心して各クラスで集まるのよ!?」


「先生だ!先生達も居るぞ!?」


そちらを見ると先生達も居て、慌てて自分のクラスをまとめに走っている、そしてその先には校長や副校長に各学年主任に事務の人達までいた。


何にしろ俺は近くに居た円の元にたどり着く、ほぼ同時に香織姉もやって来て、クラスの皆に集まる様に言う。


桐澤さんと百合ちゃんはクラスが違うのだが、朝日と弘志から離れる気がないようで、2人とも腕にしがみつき震えて……いないな、腕にしがみつけて嬉しそうにしてるわ。


何にしろ、だいたいクラス毎に集まった瞬間だった、白い壁が光輝く、その余りの眩しさに目をつぶる、そして目を開けるとそこは―――学校のグラウンドだった。




「な、なんだ!?急にグラウンドに出たぞ!?」


「と、とにかく助かったぜ!皆、外に出よう!」


「ちょっと待って!教室に荷物が有るのよ!?」


「全員落ち着け!各クラスでまとまって動くな!」


クラスでまとまって少し落ち着いたのが、急にグラウンドに移動したためにまた騒がしくなる、そんな中で俺は違和感を感じて周りを見渡す。


円と梨花がそんな俺を見て、不思議そうに声をかけてくる。


「星司、どうしたの?」


「星司さん、何かあったんですか?」


俺はそんな2人に「静かに!」っと言って、黙るように言う。

それを見ていた朝日が声を上げる。


「皆!静かに!ちょっとだけで良いから静かにしてくれ!」


朝日の声に反応して全員が押し黙る、そして10秒程経つと弘志が焦れて聞いてくる。


「星司、なんだよ何か分かったのかよ?」


だが俺は返事をせずに、弘志に向かい口元に手を持ってきて、人差し指を立てて、静かにするようにポーズをとる。


そして―――


「……変だぞ静かすぎる、校舎の中に居たのが皆ここに居るとしても、校舎の中が静かすぎる。

それに外も静かすぎるぞ?それに何よりも……風を一切感じない!」


俺の言葉に周りがざわつく、そして校舎に向かおうとしてたのと、校門から外に出ようとしてい生徒達に、教師達が慌ててこちらに戻るように言い、全員がまた集まった時だった!




「全員揃っているようだな!」


「注目!こちらに注目しろ!」


「フフフ……余所見はダメよ?」


十数人の美男美女達が突然、目の前に現れたのだった!

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