キャンプの締めは花火と恋ばな!花火だドカン登場!


俺達は狩りやハイキング等の、キャンプの醍醐味を堪能して一週間が過ぎた。


そして明日には撤収して帰る事になっているのだが、夕飯を食べ終えた俺達の目の前に―――


「こんばんは、花火師の花火だドカンです」


法被を着たドライトが飛んでいた。


「……花火師?それに花火だドカンって名前か?百歩譲って名前だとしても、ドカンっておかしいだろ!?」


「てやんでぃ!若造が生言うなですよ!?

おめえ等は黙って俺っちの、花火師としての腕前を見てれは良いんでぃ!なのです!」


「江戸っ子?に、しては口調が……」


香織姉がそう言うとドライトは困ったように言う。


「職人になりきるには江戸っ子口調が良いんですが、江戸っ子口調で話していると母様が察知して来ちゃうんですよ……なので丁寧な江戸っ子調にしてるんです。

べらんめえですよ!?」


「言いたい事はいっぱい有るけど、丁寧な江戸っ子調って何?」


円がそう言ってドライトをジト目で見るが、ドライトは無視してパタパタと飛んでいて、


「質問は受け付けませんよ!

とにかく私の花火を見やがれ、なのです!」


っと言うと飛んでいってしまった。


「あの駄龍、今度は何しでかす気だ?」


「セレナ様を呼んだ方が良いんじゃない?」


「香織姉さん、連絡してくれませんか?」


「それが……急にネットに繋がらなくなったのよ……」


「あの駄龍、通報させない気だな!」


「花火か、ドライト様の事だから、盛大なんだろうな!」


俺達はヤバイ気配を感じ取り、何とか出来ないか話していた。

だが、弘志だけは呑気に綺麗だろうなっと言っていたが。




「ここが花火会場かの?」


「そうみたいね、ブリュンヒルデ、お酒とおつまみは持ってきた?」


「うん、たっぷりとね!さぁ~飲むわよ~!」


「アタリメある?キンキンに冷えたビールは?久しぶりに私も飲むわよ!」


アマテラス、アテネ、ブリュンヒルデにアルレニスがやって来て、ゴザを引いて酒盛の準備を始めてしまう。

そこにさらにユノガンドを背負ったメルクルナがやって来て言う。


「ユノガンド様、ここからなら眺めが良さそうですよ!」


「おお、おお、楽しみじゃのぅ!

わらわやメルクルナも参加して作った花火じゃ、ドライトの事だから盛大に打ち上げてくれるじゃろう!」


「「「ブフゥーーー!?」」」


ユノガンドの言葉を聞いた女神達が一斉にビールを吹き出した!


そう、女神達は花火の打ち上げも始まっていないのに、すでに飲み始めていたのだ!


何にしろ女神達はユノガンドの言ったヤバイ単語に反応して吹き出した、そしてメルクルナの元に走りよりどう言うことか、説明を求める。


「メ、メルクルナよ!」


「な、何よ?」


「あんたとユノガンド様も、今から打ち上げる花火に関わってるの!?」


「ええ、そうよ?あとはアンジュラさんも開発に関わってるわよ?」


「……オーディン様が呼んでる!

ちょっと行ってくるわ!」


「ブリュンヒルデさん、1人で逃げようとしないで下さいよ!」


ブリュンヒルデが逃げようとしたが、アルレニスに捕まってしまう。


「ちょ!放しなさいよ!」


「アルレニスよ、ブリュンヒルデを押さえておけ。

それで、わらわは母に急用が……」


「私もゼウス様に用があるの忘れてたわ!

それじゃ、さよなら!」


「アマテラス!アテネ!」


「ふ、二人共、自分達だけ逃げようとしないでよ!?」


ブリュンヒルデを生け贄に逃げようとしたアマテラスとアテネだったが……


「「……結界を張られてて逃げられない!?」」


ドライトがすでに結界を張ってたようで、転移で逃げられなかった!




「お、追うのよ!ドライトさんを捕まえて、打ち上げを止めるのよ!」


「それじゃ!皆行くぞ!」


「まだ見ぬエインヘリャル達よ、私に力を!」


「この世界の管理神として、全力を尽くします!」


アテネの言葉に女神達が走り出そうとした瞬間、ユノガンドが叫ぶ!


「これから花火なんじゃから静にせんか!」


今いる中で最高位のユノガンドに言われては、流石のアマテラス達も黙らずにいられなかったが、アルレニスが反論した。


「ユノガンド様!あのドライト様とメルクルナさんにあなた様まで絡んだ花火なんですよ!?

危険が無いわけないじゃないですか!?」


「大丈夫じゃ、セレナが監督してたからのぅ。

安心するが良い!」


「その後からドライトさんとアンジェさんが、改造してましたけどね?」


「総員撤収じゃ!」


メルクルナの言葉を聞いたユノガンドは、素早く判断を下し逃げ出そうとしたが、やっぱり結界に阻まれ逃げられなかった。


「い、いかん!皆急げ、ドライトを止めるのじゃ!」


ユノガンドがそう叫んだ瞬間だった、花火が打ち上げられたのは……




[ヒュウ~……パーン!]




「……普通の花火じゃな」


「……普通の花火ですね」


夜空には美しい花が咲く……普通の花火だったので驚いていたが、全員がその美しさに息を止め見いるのだった……


「綺麗……」


「凄い……」


「これは思い出に残りますね……」


皆で花火を見上げているなか、俺は円に梨花、香織姉を見ていた。


「ああ……綺麗だ……な」


香織姉は昔から綺麗だった、梨花と円は中学3年の頃から女らしくなり、どんどん綺麗になっていく。

特に円は中学の時に俺は本気で惚れていたので、見惚れてしまう……


まぁ、その時にフラれたんで今は良い友達に戻ったんだけどな!

……色々有ったけど今は良い思い出だ。


そんな風に思いながら円達を見ていると、円が気がつきこちらを見てくる。


「なに?私達に見惚れちゃった?」


「ああ……綺麗だ……あ!」


思わず正直に答えるてしまい、気がつくと円は真っ赤になっていた。


「な、なによいきなり!……ありがとう……」


「綺麗だなんて……星司君は正直ですね……」


「凄く嬉しいわ……私に言ってくれたのよね?」


「「……香織姉さんにじゃなくって、私でしょ!!」」


「「「……私によね!?」」」


円と梨花が香織姉に抗議し、次にお互いの言葉に顔を見合わせて言い合い始める。

突然始まった女の戦いに星司は驚き見ていると、あることに気がつく。




「さ、3人とも待て!

おい、お前らもあれを見ろ!」


俺は呆れていた朝日と弘志、ニヤニヤ見ていた女神達にも声をかけて円達の向こうを指差す。


「……山が動いとるの?」


「……なんだあれ?」


「……いやに丸い山ですね?」


「……まるで花火のようだよな!」


ユノガンド、朝日、メルクルナ、弘志が呟き、動く丸い山を呆然と見ている。


「弘志よ、見た目だけで決めつけるのは良くないぞ?」


「アマテラスが今良いこと言った!」


「そうそう、希望は捨てちゃダメなのよ!?」


「……いやいやいや!あれ花火でしょうに!?

皆様止めに行きましょうよ!」


アマテラスとアテネとブリュンヒルデが現実逃避しようとしたが、アルレニスが叫んで現実に引き戻すのだった。


そしてその動く丸い山、否、巨大な花火の元には2人の龍が居た。


「ウヒョヒョヒョ!このアルプス一万尺玉を打ち上げるチャンスが来るとは、僥倖ですよ!」


「……ドッカーン……ドッカーン!」


「アンジェも珍しく興奮してますね?

任せてください、この花火だドカンが……キッチリと打ち上げてみせますよ!」


何時の間に来たのか、アンジュラも来ていてドライトの周りを飛び回っている。


「それでは、アルプス一万尺玉……打ち上げです!

……全てを砕け、ドッカー「お止めなさい!」か、母様!?」


打ち上げ寸前でセレナが現れて、打ち上げを阻止する。


「な、なんで母様が!?何時バレたんですか!?」


ドライトがそう言って驚いていると、ドライトよりも小さな2体の銀色の龍が、ドライトに飛び付いてきた。




「お兄様!私達に黙ってアルプス一万尺玉を打ち上げるなんて酷いです!」


「倉庫から無くなってて、慌ててお母様に告げ口したんですよ!?」


「ス、ステラにルチル!?」


2体の銀色の龍はドライトの妹のステラとルチルだった、2人は自分達に黙ってアルプス一万尺玉を打ち上げようとしたことに不満を持ち、セレナにチクったのだ!


「フゥ……間に合って良かったわ。

ドライトったらこんな物を作って、これが炸裂してたらアルレニアにどんな被害が出ていたことか……

反省なさい!」


「でもでも母様!」


「言い訳は聞きません!

あなたは前回も迷惑を皆にかけたのですよ?反省してしっかりと歓待しているかと思ったら……こんな危険な物を打ち上げようとして!

もう一度言います、これが炸裂してたらどうなってたと思うのですか!?」


「「お兄様!私達に内緒で打ち上げるなんて酷いです!」」


セレナはカンカンになってドライトを叱りつける。

そしてステラとルチルは自分達も見たいと文句を言う。


そんなセレナ達にドライトは言った、


「でも母様、もうすぐ炸裂しますよ?

火が着いてますから……」


っと……


「……え?」


「巨大な花火なので、内部にも複雑な導火線があるのです、それにはもう火が着いてますからもうすぐ炸裂します。

ドッカーン!って」




世界が凍った。




ちょうど様子を見にやって来た、女神達に星司達全員が固まり徐々に真っ青になっていく。


アンジュラとステラにルチルだけが「「「ドッカーン!ドッカーン!」」」っと嬉しそうに言っている、そんな中で真っ先に動いたのはセレナだった。


「ふん![ドカ!]総員、結界を展開!その後は伏せるのです!」


セレナがアルプス一万尺玉を蹴りあげる、そしてセレナの声に反応して女神達が一斉に結界を展開し、被害を減らそうとする。


「ドライト!あなたも結界を……ドライト?」


「……夫、特等席で見るって……花火にしがみついて……一緒に飛んでいった」


「「「はぁ!?」」」


「ド、ドライト~!」


セレナが空を見上げて叫ぶ、だがアルプス一万尺玉はもう見えなくなっていたのだった。




「ウヒョ~!流石は母様の本気の蹴りです!順調にスピードが上がっていますよ!?」


【……第三宇宙速度突破!

このまま行けば、アルプス一万尺玉は外宇宙に飛び出します!】


「ふふ……ここまで来れば全力で炸裂させられます、楽しみですよ!」


【映像及び音声も記録中です、アルプス一万尺玉の改良にも繋がるはずです、楽しみですね!

……そろそろ時間です!】


「ウヒョヒョヒョ!

そーれ、ジークジ◯ン!」


[チュドーン!]


アルレニアの夜空に大輪の花が咲く……


あまりにも大輪過ぎて引くほどの花が……


こうして、花火だドカンは夢の花火を打ち上げたのだった!




その後、花火を見る女神達も心からの声を送るのだった……


「「「……この花火、何時まで続くのよ!?」」」


ちなみにアルプス一万尺玉はその後、内部の子玉がすべて炸裂し終わるまで、3時間かかったそうな。

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