入学と卒業パーティ 新装備

うーん、やっぱセイネは鋭いな!


【そうですね、勘で気づくなんてなかなか出来ませんよ】


だが禿鷹シリーズはまだまだある……

キャロ達よ、この試練を乗り越えるのだ!


【この試練を乗り越えたキャロリン様達はますます成長するで、あれ!?】


ん?どした?


【禿鷹のオリハルコンソードが無くなってます!】


なんだと!ありゃ俺の最高傑作の1つだぞ!?




「ちょっと店主さん」


「ん?チエナルナさんですか?

ちょっと待っててください、今探し物をしてて……」


「何だか知らないけど今すぐこれを売って欲しいのよ」


「あ!こ、これ探してたんですよ!

これを買って何をするつもりですか!?」


「お小遣いを持ち逃げしたユノガンド様を切るの!」


「……銅貨1枚です、ただし結果を教えてください」


「ありがと!結果は楽しみにまっててね!」


そう言ってチエナルナは禿鷹のオリハルコンソードを手に外に飛び出して行ったのだった!


「ド、ドライト様?良いのですか?」


「有意義な実験になりそうですからね、特別価格ですよ!」


「い、いえ、そう言う事を言ってるのではなくてですね?」


キャロリンだけでなく、セイネ達も良いのかな?という感じの視線を向けてきたが、ドライトは気にせずに店内を見て回るように言い、キャロリン達は店内に散っていった。


その後、エルナルナ達が「チエナルナに聞いたんだけど良い武器が有るんだって?」っとやって来て、禿鷹の槍や禿鷹の弓などの禿鷹シリーズを買い取り手に取ってユノガンドの元に向かい、最後にメルクルナが双頭の禿鷹の剣と槍を買って店から出ていった所でキャロリン達も自分達に合った装備を手にドライトの元にやって来たのだった。




「どうですか?良い物を見つけましたか?」


「はい!皆でそれぞれ良い物を選んでまいりました!」


キャロリンは自信たっぷりに言うと皆を見回す、セイネ達も満面の笑みでドライトの方にそれぞれが選んだ物を差し出してきた。


キャロリンは1.5m位の長さのパルチザンと50cm程のラウンドシールドをドライトに見せる、続けてセイネが多数の投げナイフと60cm程のショートソードに同じ位のマチェット、ショートボウをドライトの前に出す、どれも一級品だと見ただけで分かる物だった。

そしてアレナムは殴り合いにも使えるガントレットとメイス、カイトシールドを見せ、次にレイナは刀と脇差をニコニコと差し出してきた、次のリティアは2m位のクォータースタッフを、最後にナタリーがタワーシールドと2m位のハルバートと10個の手斧とクロスボウを持って来た。


それを見たドライトがニコリと微笑み言い放つ。


「流石はキャロ達です、このお店の中から一級品ばかり選びましたね!」


ドライトがそう言うとキャロリン達は嬉しそうに顔をほころばせたが次の言葉で真っ青になってしまった。


「ですがテストの結果としては0点ですよ?」


この言葉に動けなくなってしまったキャロリン達だがアレナムが納得がいかずにドライトに食って掛かる。


「な、何故です!ドライト様も一級品ばかりだと言ったじゃないですか!」


「はぁ……私は言いませんでしたか?お小遣いの範囲で選びなさいと……

金貨10枚でこれらの武器が買えるとでも?

あと、なんで皆が皆で武器ばかり買ってるのですか?防具は盾が3つ有るだけじゃないですか……」


ドライトがそう言うとセイネ以外が「「「あ!」」」っと言い顔をしかめる、だがセイネは不敵に笑いながら反論した。


「ふふふ……私のは金貨1枚で買えるはずですよ!」


「いや、セイネのは金貨100枚以上しますよ?どうすれば金貨1枚で買えるんですか?」


「こうやってです!

アンジェ様、私はこの武器が金貨1枚で欲しいです!なんとかしてください!」


「……よし来た!……まかせんしゃい!」


「それは反則です!」


ドライトはセイネの額に-100点とスタンプを押してアンジュラには座っててください!と言ってキャロリン達に向き直る。


「あなた達も冒険者になっても目立ちたくないでしょう?

お忍びで冒険をして楽しみたいのではないですか?これはその訓練も兼ねているんですよ?」


「「「え?」」」


「……え?」


「「「冒険者なんですから目立ってなんぼじゃないんですか?」」」


「誰ですか!キャロ達に変な事を吹き込んだのわ!」


「「「ユノガンド様とエルナルナ様達がおっしゃってました」」」


「ちょっとあいつらを始末してきます、キャロ達はシリカ姉達と奥の部屋で武器防具を好き放題に選んでてください」


ドライトはそう言うとトンファーを両手に装備して振り回しながら店から出ていったのだった……




ドライトが店から出ていってしまい、どうしようかとキャロリン達は相談していたが今まで黙って座っていたシリカ達が近づいてきた。


「レイナも皆も奥に行きましょう?

ちょっと凄いわよ?」


シリカはそう言うとカウンターの奥にあるドアから中に入っていってしまった。


キャロリン達も何があるのかと嬉しそうに続いて入っていくと……そこには素晴らしい武器と防具の数々が置いてあった。

それらは前の部屋で選んだ物ですら霞んでしまうような物ばかり、いや、ドライトやシリカ達から授かった神器ですらここに置いてある物には及ばないような物ばかりだった!


「す、すご……!」


「な、何これ……」


「は、ははは……」


「シ、シリカ様にいただいた剣ですら霞んじゃう……」


「しょ、正直ここまでの物が置いてあるとは思いませんでしたわ……」


「ね、ねぇ……ドライト様……好きに選んで良いって言ってなかった?」


「「「……!」」」


ナタリーの言葉にキャロリン達は

ハッとすると共にダッシュで散っていく。


そして様々な武器や防具をうっとりと見て回るのだった。




その頃ドライトとはと言うとーー


「あちょー!」


[ブンブンブン!]


「ギャー!あぶねえぇぇ!?」


「おお!ドライトよ、わらわを助けに来たのか!褒めて[ゴン!]あだあぁぁぁ!?」


「全員並びなさい!百叩きで勘弁してあげます!」


[ガンギン!]


「ちょ、なんなのよ!?

私達が何したってのよ!」


油断していたユノガンドはトンファーで頭を殴られて気絶してしまいピクピクしている。

エルナルナ達はなんとか防いで耐えながら、いきなり何するんだと怒るとドライトが叫んだ。


「キャロ達に変なこと吹き込んだ主犯は誰ですか!?

百叩き百回ですよ!」


「「「ユノガンド様です!」」」


エルナルナ達は速攻でユノガンドを売って助かろうとしたが……


「おのれ……あ、あれ?居ませんよ!?逃げられました!

仕方ありません先にエルナルナさん達に罰を受けてもらいますか」


そう言ってエルナルナ達の方を見るとエルナルナ達も煙のように消えていた!


「ぬああぁぁぁ!絶対に許しません!ドライト軍団全軍出撃!

目標はユノガンド様にエルナルナさん達です、生きたまま捕らえるのですよ!」


次々と湧きだすドライト軍団をバックにドライトの叫ぶ声が学園都市に響いたのだった。




そしてキャロリン達はと言うと……




ニマニマと気持ち悪い笑みを浮かべて武器の数々を撫でていた。


「はぁ……この槍の鋭さ……素晴らしいです!」


「このナイフの輝きを見てよ……何時までも見てられるわぁ……」


「このガントレットで殴ったらどれだけダメージをあたえられるか……!」


「皆さん!都市の外の森に狩りに行きましょう!

そしてこの刀の試し切りを……!」


「レイナさん落ち着いて!

学園に学生のためのダンジョンが有ります。

そちらの方が近いですから学園に行きましょう!」


「待ってください、防具も探さないとですよ!

そう、このハルバートに合う防具を!えへへへへ……」


完全に何かやっちゃいけない薬を極めた様な状態のキャロリン達をシリカ達は困ったように見つめながら、セレナとディアンと共にお茶をしていると奥の方から叫び声が響いた。


「とうちゃ!とうちゃ!!」


「かあちゃ!かあちゃ!!」


「「ここきて!はやくきて!!」」


切羽詰まったような叫び声はステラとルチルのものだった、ディアンとセレナは声を聞くと共に凄まじい勢いで声の方に走り去る。

シリカ達とキャロリン達も慌てて後を追い走り出す、実はこの場所はドライトが創った亜空間にある武器防具倉庫で、カウンターのドアが出入り口になっているとの事だった。


なのでセレナも安全だと思いステラとルチルが「「たんけんしてくる!」」と言うので2人だけで見て回るのを了承していたのだ。

だが聞こえて来たステラとルチルの声は完全に動揺し切羽詰まったものだった、シリカ達だけでなくキャロリン達も一体何があったのかと先程まで眺めていた武器を手に全力で走るのだった。




そして駆け付けた先で見たものは!




何かが入ったガラスのケースにへばりつくステラとルチルだった。


「これだすの!」


「あかないの!」


人化したままガラスにへばりつき、ケースをガンガン叩いてるステラとルチルをセレナとディアンは困ったように見つめて言う。


「これはガラスに見えるけど結界ね……ドライトが設置したものね?」


「ああ、しかもかなり強力な結界だぞ?無理に開けるなら中の物も壊れるのではないか?」


「ステラ、ルチル、ドライトが帰って来たら開けてもらいましょう?」


「「やー!いまあけるの!すぐだすの!!」」


ディアンとセレナは今は開けられないと言うのだが、ステラとルチルは今すぐに開けて出したいと言ってきかない、シリカ達とキャロリン達はいったいケースの中に何が入っているのか気になり後ろから覗き込んだ。


そしてケースの中に有る二組の装備を見て全員が息をのむ。


銀色に輝く鎧に籠手や兜には金色と青色で細かく美しい紋様が書かれ何かの魔術陣にもなっているようだ、ディアンと同じ黒色のマントにはセレナと同じ白い色でやはり何かの魔術陣になっている紋様が書かれている、下に着る為のクロースアーマーも素晴らしい物だった。

そしてその前に置かれている剣、ブロードソードも銀色に輝きやはり金色と青色で美しく紋様が書かれていた。


その美しさと装備一式から発せられる気配は、周りにある他の武器防具と明らかに格の違いが判りキャロリン達やシリカ達だけでなくセレナとディアンも魅せられていた。


「これは……凄いな……」


「結界の中にあっても凄まじい力が込められているのが分かるわね……」


「わたちのー!」


「こっちはわたちのだよー!」


ステラとルチルは二組ある装備の片方づつを私の物だと言い、なんとか取り出そうと未だに結界を叩いているが結界はビクともせず傷すらつかないで装備を手に取る事を拒んでいた。


「ステラ、ルチル?良い子だから今は諦めてドライトを待ちましょう?」


「「やだやだやだ!いまだすの、いまつけるの!!」」


「困ったな……この結界は生半可な事では解除できんぞ?」


ステラとルチルはケースにへばりつき、あちこちらに移動し始めて叩いている、それを見ていたセイネが気がついた。


「あれ?ステラ様、ルチル様ここに何か書かれていませんか?」


「「どこどこどこ!?……よめないよー!」」


ステラとルチルは結界を解除する為のヒントかと思いセイネが指差した所を見るがそこに書かれた文字を読めないようだった。


「サルファ様、これは龍の文字ですか?」


「うーん……違いますわね、文字には違いないけど何語なのかサッパリ解りませんわ」


「シリカ様、シリカ様も読めませんか?」


「うん、全然解らないわ」


「ドラ公の奴が創った文字か?セレナ様とディアン様も読めないんですよね?」


「ああ、何処かで見た気もするんだが……」


「あ!あなた、ドライトの秘密の小部屋に有った研究書に書かれていた文字よ!」


「……幾つかの意味のある文字と……1つの意味がある文字の……組み合わせ、だと思う」


「アンジェの言う通りだと思いますけど、解読してみますか?」


「サルファ、これを解読するならドライトを待った方が早いわ」


「「やだやだやだ!いまあけるのー!」」


シリカ達もディアンとセレナも読めず、シリカが再度ドライトを待とうと言うがステラとルチルは諦めきれずに半泣きで結界を叩いている、するとキャロリンがポツリと言った。




「絆の鎧と絆の剣

絆が強ければ強い程に力が増す、この装備を欲するならば汝の力を示せ。

注意!この装備はステラとルチル用なので他の人が力を示しても結界は解除されません、あしからず。

ドライト」


「「「へ?」」」


「開けるにはステラ様とルチル様が力を示さないとダメなようですね」


「キャ、キャロちゃん読めるの!?」


「この文字は日本語と言う異界の文字ですね、ドライト様が以前に教えてくれました。

この世界では使われていないのであんまり読まれたくない物に使うとの事でした」


キャロリンがそう言うと共に凄まじい力が荒れ狂う、ステラとルチルがケースにへばりついたまま人化を解き本気モードを発動したのだ。

その力に反応したのか結界が揺らぎ始めたかと思うとスゥっと消えた、そしてステラとルチルは「「やったー!」」と叫びながら鎧に触れる、すると装備は一気に光り輝き消えてしまった!


「「き、きえちゃった……うわーん!」」


光り輝いた事に驚き両目をつぶってしまったステラとルチルは目を開けたら装備が全て消えてしまっていた事に呆然として泣き出す、セレナが慌てて抱き締めてあやすがワンワン泣いている。


「ドラ公の奴のイタズラか?これはちょっと酷いぞ……」


「ドラちゃん……呼び出し決定……!」


ステラとルチルが苦労して開けたのに消えてしまったのはドライトのイタズラだと思い怒っているとステラが叫んだ。


「よろいでてこーい!びえーん!」


「あ、あら?ステラ、鎧が出て来たわ!」


ステラを抱いていたセレナは違和感に気がつきステラを見ると何時の間にか装備一式を身に着けていた、それを見たルチルも叫ぶ。


「わたちのよろいもでてこーい!……でたぁ!」


なんとルチルも一瞬で鎧に包まれた!


「これは……亜空間に仕舞われているのだな、たぶん声に出さずとも考えただけで出したり仕舞ったり出来るはずだぞ?」


ディアンにそう言われてステラとルチルは試すと、装備は一瞬で消えて次の瞬間にはまた身に着けていた。


「すごーい!」


「おもしろーい!」


ステラとルチルは大喜びで装備を出したり消したりしている、それをシリカ達も凄い凄いと言いながら見ているのを不思議そうにアレナムが聞いてきた。


「リア様、メルクルナ様が以前に装備を一瞬で出して身に着けていましたが、それとは何か違うのですか?」


「ん?ああ、そっかアレナム達には違いが分からないのか……えっとな?なんて言えば良いのかなぁ……」


「……リア姉……実際にやって見せた方が……良い」


「それもそうだな、んじゃアンジェが敵役してくれ、右手上げたら攻撃態勢って事で頼むわ」


そう言ってカーネリアはアンジュラから少し離れると、アンジュラが右手を上げる、するとカーネリアは一瞬で装備を身に着ける。

それを何度か繰り返してキャロリン達に見せるがキャロリン達は意味が分からず困惑する、それに気がついたシリカが割って入った。


「バカねリア、それじゃあ判らないでしょうに、サルファあなたがメルクルナさん役して、私が私達龍の役をするから」


そう言うと、シリカとサルファがカーネリアの隣に立ちアンジュラに合図する様に言う。


アンジュラが合図をすると真っ先にカーネリアが装備に包まれる、ワンテンポ置いてサルファが右手を上げると同時に装備を着けて最後にシリカが「いでよ!」っと小さく言うと共に装備が出て来た。


「解った?リアはステラちゃんとルチルちゃんね、サルファのメルクルナさんは解らない様に無詠唱と小さな動きで装備を取り出してるの、それを解りやすくしたのよ。

そして私達龍は装備なんか本来は要らないから、こういう事は練習してないし苦手なのよ……」


「えっと……つまりステラ様とルチル様はご自分の力ではなく装備の機能で出し入れをしている、しかも神々よりも早くと言う事ですか?」


「それって、とんでもない事なのではないのですか?」


レイナの言った事をリティアが驚きながら言う。


「そうだな、装備を出すのに詠唱もしてない、動きや合図もしてない、つまり敵に気取られないって事なんだよ」


「……敵にしてみれば……凄い厄介」


アンジュラの言葉に、未だに出し入れを楽しんでいるステラとルチルをキャロリン達は驚きの目で見つめるのだった。




ステラとルチルが他に何か面白い事ができないかと装備を身に着けたまま色々試していると、突然轟音が鳴り響く!


[ドガアァァァァァン!]


「ただいまですよ!」


ドライトが天井を突き破ってやって来たのだ!


そして辺りを見回してステラとルチルを見つけると妹達に突進して抱き付く!


「ステラ!ルチル!目出度いです、目出度いですよ!

その装備を身に着けていると言う事は子龍になったのですね!子龍並みの力に反応して結界は解除される様にして有ったのです、こんなに早く子龍になれるなんて本当に目出度い……あれ?朝と大して変わってませんよ?子龍並みじゃないです」


ドライトはステラとルチルを抱き締めて撫でまわしていたが、大して力が増してないのに装備を身に着けているので不思議そうに見直している。


「ドライト、ステラちゃんとルチルちゃんが本気モードを発動したら結界が解除されたわよ?」


シリカにそう言われてドライトはアングリと口と目を見開いて呆然としながら言った。


「……本気モードの事を計算に入れ忘れてました!

この装備はステラとルチルが子龍になったお祝い用だったのに……なんて事ですかー!」


ドライトはガックリとしているがステラとルチルは「「ありがとー!」」と言って大喜びだ。


「それよりドライト、ユノガンド様達はどうしたのよ?

追いかけていたんでしょ?」


シリカがそう聞くと、少し離れた所からユノガンドの声がした。


「わらわ達ならここじゃ……」


皆が声がした方を見ると……ボコボコにされたユノガンド達が居た。


「ドライト軍団に散々追いかけられて……」


「皆で協力して逃げる事にしたんだけど……」


「ドライト軍団の数が多すぎて……」


「結局捕まってさぁ……」


「ボコボコされました!禿げろ!」


セレナが呆れて言う。


「エルナルナさん達はともかく、ユノガンド様も居たのに負けたのですか?」


「セレナよ……ドライト本体だけだったら何とかなりそうだったんじゃがの……分身体に指揮個体も動員されてお手上げじゃったわ!」


そう言って無い胸をそらして踏ん反り返るユノガンドにさらに呆れてシリカが言う。


「分身体って、せいぜい1万位でしょ?それに負けたの?」


「……よ」


「ん?メルクルナさんなんですか?聞こえませんわ?」


「1千万体居たのよ!亜空間に引きずり込まれて戦ってたら1千万体のドライトさんに囲まれてたのよ!」


メルクルナの叫び声に全員が唖然としているなかで、ドライトはステラとルチルを抱き直して、


「よく考えたら本気モード使って開けるだなんて頭が良いですし、力のコントロールが上手になった証拠です!

やっぱり目出度いですよ!」


っとステラとルチルを撫でまわしていたのだった。




「ところでドライト、この装備良いわね!」


「そうでしょう、そうでしょう!私の自信作ですよ!

龍の姿でも人化しても、装備が自動的に最適化してくれますし色々な機能が付いているのですよ!」


「うん、私達も気に入ったわ!私達の分もよろしくね!」


「いやぁ~気に入ってくれて……はい?」


「日本語だっけ?異界の知識にアクセスして調べたんだけど、この装備の正式な名前は家族の絆シリーズって言うんでしょ?

じゃあ、妻の私達に無いのはダメよね!」


シリカがそう言うとズィっと前に出る、ドライトはそれに合わせて後ろに下がろうとしたが……何時の間にか背後に立っていたサルファにぶつかってしまう。

ハッとしたドライトが辺りを見回すとカーネリアとアンジュラが左右に居た、囲まれて逃げられないドライトにセレナとユノガンドも言う。


「家族と言うなら私やディアンにお父様方の分も必要よね?」


「確かに良い装備じゃのぅ?ドライトよ、遠慮はいらんぞ!神々はわらわ達の分だけでいいからの?」


「そうなるとここに居るのにもらえないキャロちゃん達が可哀想ね?

キャロちゃん達の分も作っておあげなさいな」


「うむうむ、流石はセレナじゃ!良い事を言うのう!」


「……ああ!あんな所にヤンバルクイナが!?」


[ガシ!]


「ドライト、何処に行くの?」


何故か本当にいるヤンバルクイナを追って飛び立とうとしたドライトだったが、あっさりとセレナに捕まった。


「早く皆の分を作らなきゃダメじゃないの」


「い、嫌ですよ!作るの大変なんですよ?

家族やキャロ達の分は分かりますがなんでロリババァ達の分まで作らないとなんですか!?」


そう言ってジタバタ暴れるが……


「ドライト、あなたはまた勝手に分身体を増やしたでしょ?

それにユノガンド様の事をババァと呼ぶなんて何事ですか!」


「そうじゃそうじゃ!……ん?ロリの部分は怒らんのか?

セレナ?セレナ!?」


「さぁ、母が手伝ってあげます。

行きましょうね?」


「と、父様!助けてください!」


「……父も手伝おう。

ついでに希望も言うがな!」


ユノガンドはロリについても怒れとセレナに言うが、セレナはそれを無視してドライトを連れていく、ドライトはディアンに助けを求めたが無駄だった。


こうしてドライトは連行され、家族やキャロリン達にユノガンド達の分まで装備を作らされることになったのだった!




[カーン!カーン!カーン!]


「働きたくないでござる……働きたくないでござるよ!」


「ケッケッケッ!クケ!クケ!」


その日は夜遅くまでドライトさんの秘密の小部屋から作業する音とドライトの愚痴、そしてヤンバルクイナの鳴き声が木霊したのだった。

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