転生龍の諸国漫遊記!

バリ君

卵編

卵編 プロローグ

白い、、、


ここはどこだ?


うっすらと光り輝く白い世界で目を覚ました俺は、少しづつ意識が覚醒していく、、、


覚醒していく意識と共に混乱も大きくなってくる、、、体が動かない、、、声が出ない、、、

一体何が!?っと混乱しながら徐々に記憶がよみがえってきた。


俺の名前は 星山 龍太 

仕事はタクシーの運転手をしている。

色々な仕事をしてきたが飽きっぽい性格と忍耐力の無さ、そしてどうでも良いや!っとすぐに諦めてしまう為に体力のいる製造業やトーク力の要る営業や販売系などの仕事は半年も持たなかった。

タクシー運転手はお客を乗せた時の挨拶と降りる時のお礼だけ言えば良かったので、そこそこ長く続いていた。

歳は今年で40歳になり妖精の仲間になった男だ。


そんなダメ人間としてすごしていたある日の夕方に客を降ろし帰りの山道を走る途中、下り坂のカーブを抜けた所で目の前に子供が立っていた。

俺は慌ててハンドルを切ると、次の瞬間にはガードレールが迫っていて、そして来る衝撃と何かが壊れる音、一瞬気を失ったのか目の前が真っ暗になる。

恐る恐る目を開けるとエアバッグや荒れた車内が見えた、自分はたいした怪我をしていない事に気がつき安堵するが同時に会社に怒られるのかと憂鬱になった。

バックミラーには母親だろうか?女性に抱えられている子供の姿が、子供は無事だったか、、、

そう安堵していると次の瞬間、グラリっと揺れると車は俺を乗せたまま崖下へと落ちていったのだった、、、


事故の事を思い出した俺はここは病院なのか?っと思いつつ体が動かない事に愕然としていた、 麻痺 そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

そして声が出ない事で全身が麻痺しているのでは?と、絶望してしまう。

ああ、、、両親や兄妹達にまた迷惑をかけてしまったのか、、、と考えていると姿が見えないが男性と女性の声が聞こえてきた。


「今の時期に新婚旅行なんて、本当に大丈夫かしら?」


「君と俺とで多重結界をかけたんだ、アレも有るんだし魔人クラスが来ても壊されやしないよ、

まして龍族の産卵地だぞ?

悪意ある者でここまで来れる者が居るとしたら亜神クラスでもないと無理だろう?」


「それもそうね、、、上の子が孵るまでまだ一年はかかるでしょうし、、、」


「それに!」


「? それになんですか?ディアン」


「俺はセレナともっとイチャイチャしたいんだ!」


「、、、はぁ?」


「セレナに一目惚れして、求婚してからクソジジイに許可貰うまで300年、、、

やっとイチャイチャできるかと思ったら、すぐに子供が、、、

いや嬉 しいよ?嬉しいんだけどイチャイチャもしたいんだよ!」


「は、はぁ、、、」


「卵が生れてやっともっとイチャイチャできると思ったらすぐに第二子が、、、

しかも双子でクソジジイに『サルか!貴様は!』っとボコボコにされた怪我もやっと治ったんだ!

新婚旅行に行ってイチャイチャしたいんだよ!」


「、、、(旅行に行くのを承認したのは、はやまったかしら?)

ま、まぁ少しは二人でゆっくりすごすのも良いかもしれませんね、家族もすぐに増えるのですし、、、」


「ああ、旅行先は人族の観光地で中々の所らしい、緑龍族の長も家族を連れて楽しんで来たそうだ、子供達が皆無事に孵ったら中々イチャイチャできないだろうし、ゆっくりしような!」


「はい、、、」


最初医者と看護婦が来たのか!っと今の状況が分かると少し落ち着いたが会話の内容を聞いて、

???っと訳が分からなくなった。

会話の内容から若い男女で新婚らしい、とは分かったのだが300年待ったとか、卵が孵るとか魔人や龍だの亜神だの変な言葉が混じった事で、はぁ?何言ってるんだこいつら!っと訳が分からなくなってしまったのだ、、、


「さぁ、出発するか!」


ちょっと待った!訳が分からなくても、今の状況が分かるかもしれない!

呼び止めようとして声が出ない事を思い出した、、、

とにかく待ってもらいたく、まともそうな女性に『待ってくれ!』と声は出ないので強く念じたのだった。


「あら?誰か呼んだような、、、?」


おお!気がついてくれたのか!?

声からして美しく優しい女神の様な女性にちがいない!

気がついてくれてありがとう!


「気のせいだろう?早く行こう!」


おい待て!声からしてブサメンのクズだな!お前1人で新婚旅行に行け!


「、、、」


「どうしましたか?ディアン」


「いや、なんか急にこの卵かち割りたくなったわ!」


「あらあら、ディアンたら、、、頭をかち割られたいのね?うふふ、、、」


「い、いや、急にイラっとしてですね!いやその、ご、ごめんなさい!」


ゴス!っという鈍い音と共に誰かの怒る声と脅える声が聞こえるが、今は気付いてもらうのが先決だ!

もっと呼び掛けねば!

っと大声で呼びかけるかの様に強く念じようとすると、突然もの凄い睡魔が襲ってきた。

な、なんで急に眠気が、、、ううう、寝たら2人は新婚旅行に行ってしまう!


「ところでディアン、龍珠はどうしたの?」


「あ、はい!ちゃんと持ってきてます!」


「それじゃあ、卵の横に置いてっと、、、これでガードもしてくれるし、問題なしね!」


「俺達2人にジジイ共とバア様達が力を分け与えた龍珠だからな、、、

かなりの力が有るから上位竜位なら返り討ちにするな、、、しかも三つも有るから万全だな!」


「そうね、、、龍珠よ子供達を守ってあげてね?私の可愛い子供達、すぐに帰りますからね?」


「じゃあ、出発するか!なるべく長くイチャイチャしような!」


睡魔と戦っているとすぐそばに何かが置かれるような気配を感じ、そばにいる女性からは、自分の事を慈しんでくれているのを感じる、、、

そして側に感じていた男女の気配が遠ざかるのを感じると、思わず『行かないで!母様!』っと叫ぼうとしたが、もちろん声は出ない、声で別人だと判るのに何故遠ざかる女性を自分の母だと感じたのか不審に思いながら意識を手放したのだった、、、

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