under all circumstances

オノマトペとぺ

第1話

 誰にも時間の流れに逆らうことや、まして追い越すことなどできない。

 それは至極当然の話しであり、誰も異論なんてきっと唱えはしない。


 僕は割と常識的かつ合理的な人間だ。

 無駄だとわかっていてそれでも何かに立ち向えるほど熱い人間ではない。


 それでもなぜなのか、僕はイラついている。

 変えようのない時間の流れになぜか不満をおぼえている。


 時間というものが誰しもに平等に流れているとわかっているのに、

 やつが僕に嫌がらせをしていると時々感じる。

 そんなことある訳ないと、わかっていても思ってしまう。


 それは確か彼女の最後を見れなかったときに。

 そしてはたまたあのいちご大福が買えなかったときに。

 かすかに時間の悪意を感じる。


 あのときあれほど速く時間が進まなければ。

 僕は彼女の最後の一息を見届けられたのに。

 あのときもっと速く時間が進んでいたのなら。

 あの日彼女が食べたがったあのいちご大福が買えたのに。


 こんなのはただのわがままだ。

 あのときも、このときも、彼にも彼女にも、君にも僕にも、

 同じ速度の時間が与えられている。


 わかっている、沁みるほど

 納得できない、滲むほど


 僕はイラついている。そして僕は知っている。

 ずっとずっとわかっていた。

 僕は逆らえない時間の流れに、

 追い越せない時間の流れに、

 八つ当たりしている、逃げている。

 平等な何かに因縁をつけている。


 そうして僕は本当の不満に気づいている自分自身から

 気づいていることを隠している。


 僕が本当に不満に思っているのは、

 いつも遅すぎて、速すぎる、

 君のために何もできなかった僕自身だ。

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