誰か、助けて……
幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕
小さなSOS
怖かった。ずっとずっと恐怖で埋め尽くされてきた。だから、救いの手も信じられずに振り払ってしまった。僕の周りに居る、全ての人が、僕に暴力を振るうんじゃないか。そういう脅迫概念が僕の中に渦巻いて、そうさせたのだ。そんな事、あるハズ無いのに……。
チュンチュンピチチッ
眩しい朝日が注ぎ込み、緩やかな眠りを拭い去る。小鳥の鳴き声が寝ていた少年の眠りを、つついて覚ます。
「……ン、ぅ…………あぁもう朝か……」
僕はゆっくり身体を起こして呟いた。今日から以前の学校とは別の学校に通う事になっている。
転校は昔から、慣れ親しんだモノだった。父の職業が転勤の多い職種だったからだろう。
今日からまた演じなければならない。平凡で社交的な仮面を被って、元の醜い僕を隠す為に……。
身支度を整えて、一階のリビングに下りて、先に来ていた父と母に挨拶する。そして、
本当は食欲なんて無い。けれど残せば、酷い事をされるのは解っていた。このにこやかな笑顔のままで、口に出すのも悍ましい程の行為をするのだから……。
「…………ご馳走様でした」
「はい、お粗末様でした。学校行ってらっしゃい」
「くれぐれも
「…………はい、解りました。では、行ってきます……」
そう言って僕は新たな学校に向かった。
「おはよ〜
「おッはよぉ〜✨ え、そうなの? どんな子なのかなぁ〜楽しみ〜♪」
「だよね〜✨楽しみだよホントに!」
「ねー♪ 男の子かなぁ女の子かなぁどっちだろ〜✨」
「ア、それについては情報が入ってる✨男の子だって〜しかもすっごいイケメン!」
「マジ!? うわぁ余計に楽しみだよ〜✨」
キャイキャイと話していると始業のベルが鳴り響く。
キーンコーンカーンコーン
ガラッ
「オラ早よ席に付け、転校生が居てんねんで?(笑)」
先生がそう言いながら教室に入ってきた。
「うぉわマジかよせんせェ?」
「転校生!? うっわ嬉しい✨」
「よォし皆席に付いたな〜? 転校生を紹介するぞ〜✨入ってきてくれ〜」
「………………ニコッ」
先生が声を掛けると、扉が開いて金茶の長髪をした美少女が入ってきて、ニコッと微笑んだ。
「はーい別嬪さんに惚れるなよ〜? 特に男子! 言っとくが男だからな〜?(笑) ンじゃ自己紹介宜しく✨」
「え、男!?」
「女かと思った!!」
「はい、男です。紛らわしくてすいません。紹介に預かりました、
そう言って彼、紗々梛蒼瑕君は微笑んだ。その笑顔は何処か自嘲気味な笑顔で。
私、
(蒼瑕君は、何か人に言えない秘密でもあるのだろうか?)
誰にでも言えない秘密はあると思う。だけど、蒼瑕君の
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