第16話「春」

長い眠りから めざめた大地に


青き空より 


柔らかな 瑠璃色の光りは降りそそぎ


乾いた土は 黒きマントを脱ぎ捨てた


農夫は 明るき土を耕して 


土塊を 瑠璃色の日射しに晒していた


白く小さな花が 


霜降るごとく 咲き誇り


雑草は 枯れ草を押しのけ 


至る所に顔を出す


枯れ木は芽吹き


群れをなして


雑草を拒むため 日射しを遮る


冬枯れの樹には 


太き蔦が巻き付き


蜘蛛が 昆虫を取り込むように 


包み込んでいた


その すべてを見ていた大カラスは


春の夕映えに 嘴をきらめかすと


群青色に染まりだした空を滑り 


鋭く鳴いた


これから 成長と生存の


生きんがための 闘争の舞台が始まるのだと


けたたましく 口上を述べる


おお 


生存競争の幕は上がったのだ

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