幸せの赤い鳥

@1008

第0話 あらすじ


勇太は小学5年生のサッカー少年で、体力には人一倍自信が有ったが、試合でヒーロになった翌日に急性腎臓病(きゅうせいじんぞうびょう)になった。失意の勇太は入院中に鳩の本と出逢い、鳩が未知の土地から帰ってくる特性に興味を持つとともに本を読む楽しさを知った。また長期入院している美夏と知り合い励まされ、病気に負けずに頑張ることを誓った

退院後、赤い羽根色の傷ついたレース鳩(レッドアロー)がベランダに迷い込んで優しく世話したことによって、レッドアローを飼育していた徳島の愛鳩家(あいきゅうか)との交際が始まった。

大阪から奄美(鹿児島の南の島)への引っ越しや鳩との心の交流といさかい、委託鳩舎(いたくきゅうしゃ:鳩を飼育してくれる場所)での鳩レース(鳩を鳩舎から離れた場所から放し帰る時間を争う)も経験し、委託したレッドアローの子供の鳩が猛禽(もうきん:鷹(タカ)等)に襲われ帰ってこない涙の日々も過ごし心が鍛えられた。


 さらに、勇太と喧嘩(けんか)したレッドアローが奄美~徳島(800㌔)の海上を嵐やタカと戦い一羽で往復する奇跡の帰還も経験して努力と優しさ、気持ちの大切さを知った。傷ついたレッドアローの手当てを、それまで疎遠だったオバアに頼んだことによって心も通い合った。

 小学校卒業式の後、鳩舎に行って鳩を飛ばそうとした時、一羽の鳩が動かなかった。赤い鳩なので嫌な予感がした。心臓の鼓動を抑えるように近くに寄って取り上げた。更に動悸が大きくなり、勇太の目から涙が一筋零れ(こぼれ)落ちた。

「アローが死んだ。俺のアローが・・・・」

叫びながら涙が溢れてきて、もう止めることが出来なかった。

そして勇太は、獣医になろうと思うようになった。


その思いを祝福するかのように、勇太が入院した時に優しくしてくれた美夏が、小児喘息(ぜんそく)を克服し退院したので、奄美に旅行に来たいと言ってきた。美夏との再会に心が弾んだ。

奄美の青い海と空と優しい太陽は、いつものようにそこに有った。    

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