第53話 愚か者めが!

 何の事か、わからなかった。

前を歩いていた方は、大会の会長、その土地の

剣道連盟の代表理事であった。


誤解されている、判定に対して抗議に来たと

間違われている。 何と言うことだ・・・。


言葉に窮している広志を睨み透かして

車に乗り込む会長・・。


 しまったあ!車は此処でなかった。

向こうの端に停めたんやった・・・。

災いが災いを引き連れて、団体でやって来ている・・・。

まだ終わっていない、呪いは続いている・・・。


 とぼとぼ歩いた。

竹刀も防具も心も、何もかもがずっしりと重い・・。

やっとの思いで車に乗る。


正面の出入り口は、出て行く車で、ごった返している。

その車列に加わる気にはなれない。

かと言って、このまま車に居るのも何か惨めだ。


 遠く南の方角に、朝走って来た県道を走る車が見える。

広志は、その方角に行くことにした。

両側が水路で辺り一面が見渡すかぎりの田んぼである。


どんどんと走っていくと、行き止まりであった。


行き止まりに見えたものは、お墓であった。

それもひとつだけ・・・。

かなり古いお墓である・・・。

車を廻す所は見当たらなかった・・・。

そのまま来た道をバックするしかない。


・・・「愚か者めが!」

お墓がそう言っているようで

背中がスーーッと寒くなった・・・。

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