第29話  「怪我、せんようにな」

  石坂先生が、呑み足りないということで

4人部屋を脱出。

ホテルの居酒屋で2人、焼酎のいも湯割りを飲む。

カパチョ、カパチョ飲む。


「益田さん こないだは、えらいめに、おうたなあ」

「はあ?」

「横山に、しばかれたやろ」

「えーっ、ご存知だったんですかあ・・・」

「あいつはなあ、たちわるいんよ。

 こないだも、わしに突いてきてなあ」

「はあ・・・」

「むかついたんで、思い切り、突き返したった」

「一応、うちの道場は、原則、突きはなるべく、せんようにしとるんやけどなあ」

「あいつは、防具の隙を突いてきよる。気つけないかん」

「あんまり気にせんと、又、稽古出て来まい」

「ありがとうございます」

「ほんでもな、うちはまだ変なのが少ないで。

 よそは、いろいろ難しいのがおるけんな」

「はい」

「まあ、お互い若うないで、ケガせんようにしょうな」

「しんどい時はな、参りましたちゅうて、礼をして

 さがるとか、上手にやりよ」

「はい、ありがとうございます。

 また、来週くらいから稽古に出ます」

「そうしいや」 静かで楽しい酒が続く。

えい夜やなあ(嬉)


 剣道は、縦列に、二人一組で稽古をするが

石坂先生は、横にも目がついているんじゃないかと

広志は思った。

同時に、自分を心配してくれる人が居てくれて

ほんまに、自分はしあわせもんや、九州に来て良かったと

心の底から思った。

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