第10話 動き始めた日
タクシーで家に着くと23時を過ぎていた
何だかクタクタでシャワーも浴びずにベットに倒れ込む
携帯を見るが
やはり栞からの連絡は無い
”もう終わったかな・・・・・・”
そう思うと胸がズキリと痛んで涙が一粒こぼれた
栞との関係が深くなったのは2年ほど前
一人暮らしをしてからはけっこう忙しくて
せっかく素敵な部屋なのにシャワーして寝て着替えをするだけだった
栞からもらったメモはお財布の中に入れたまま
そんなことがあったのも忘れてしまっていた
そんなある日
いつもの様に21時過ぎに部屋に帰ると1階ロビーに栞が立っていた
「栞ちゃん?」麻耶子
麻耶子がそう呼びかけると
栞は袋を開き中身を見せて
「ケンタッキー買って来た一緒に食べようかと思って・・・・・・
だけどカチカチに冷えちゃった」栞
麻耶子は栞の手をさわる
氷のように冷たい
「栞ちゃんいつからここに居たの?」麻耶子
栞は時計を見て
「4時間くらい前・・・から」栞
麻耶子は栞の手を引いて急いで部屋に連れて行った
部屋に入るとヒーターを付け栞をその近くに座らせた
「温かい紅茶入れるね」麻耶子
栞はかじかむ手をヒーターに近付けた
しばらくすると部屋は暖かくなり
栞の手も指先まで温まった
「今日は寒いね」
「最近は忙しい?」
「久しぶりに会ったね」
二人はケンタッキ-を食べながら
何となく不自然さを感じながらも平然とした会話をした
会話が一通り出し切って途切れてしまったとき
妙な沈黙があり
麻耶子は席を立ちキッチンへ
すると栞が食べ終わった紙ごみなどを持って付いてきた
「麻耶ちゃん これどこに捨てたらいい?」栞
「そこに置いておいて 後で片すから
向こう(リビング)でゆっくりしてて」麻耶子
栞の方は向かずに
麻耶子はそう言って洗い物を続けた
しかし
栞は麻耶子の後ろにまだ立っている
麻耶子は少し視界に入るくらい栞のほうを見る
ちょっと目が合った時
栞が麻耶子を包み込むように背中から抱きついてきた
麻耶子は持っていたスポンジを落とす
どうしていいかわからない
固まってしまう麻耶子
しばらくして栞がそのままの格好で話し始めた
「麻耶ちゃん 俺 麻耶ちゃんのこと好きなんだよ
知ってた?」栞
「・・・・・・栞ちゃん・・・・・・そうね
私も栞ちゃんのこと大好きよ
悠介と同じ
本当の弟みたいに思ってるよ」麻耶子
栞は力強く麻耶子を振り向かせて見つめる
栞の真っ直ぐな視線に
麻耶子は”ドキッ”として目をそらす
「俺 悠介と同じじゃ嫌だ!
弟じゃ嫌だ!!」栞
そう言うとゆっくり近づいて
唇が触れようとした時
麻耶子は身をすくめ避ける
栞は少し拗ねた顔で
「嫌?」栞
麻耶子は栞のほうを見て
「嫌じゃないけど」麻耶子
そう言い終ると同時に
栞は強引に麻耶子の唇を奪った
少し長めに触れた唇が一度離れると
驚いた表情の麻耶子に栞は少し微笑みかけて
またキス キス キス
次第にそれは濃厚になっていって
気が付くと麻耶子の手は栞の背中に・・・・・・
抱きつくように・・・・・・
なぞるように・・・・・・
栞も夢中にキスをしながら麻耶子の髪を撫でる
たまに目が合って
はにかんで
覚えたての子供の様に
キスを繰り返した
しばらくして
栞は麻耶子をギュッと抱きしめた
鼓動が聞こえてしまうんじゃないかと思うほどドキドキと高鳴る
栞は呼吸を整えて少し離れる
麻耶子をしっかり見つめるとニッコリ笑って
「好きだよ」栞
麻耶子はコクリと頷く
「やっと告白できた」栞
そう言って何事も無かった様に栞はリビングへ
麻耶子も洗い物を終わらせると栞のほうへ
白いソファ-を背もたれにして座る栞の横に並ぶように麻耶子も座る
目が合うのはさすがにまだ恥ずかしいから
二人でテレビを見ながら
たまにお互いのほうをチラチラ見ながら
ハニカミながら
さっきまでの不自然な会話よりは自然な会話をした
栞は終電に間に合うように帰って行った
もちろん
帰り際にまたキスをして・・・・・・
それから栞は麻耶子の部屋に来るようになった
麻耶子も栞が来る日には
仕事を早く終わらせて部屋に帰るようになった
二人の時間を過ごせるように
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