シュガーフラワー・セピア

まぐろどん

微睡む

目をあけているからといって、かならずしも、起きているとは限らない。

「・・・・・・」

ゆめを、見ていた。ぼんやりと、わかる。

なんだかとても幸せなながいながいゆめを、見ていた。

ついさっきまでそれを私は現実と一寸も疑わなかった。そのゆめの下には何ヵ月もの何年もの日々があることも実感していた。そのゆめには確実に明日が来ることも予感すらしていた。

でも、全部全部全部全て、ゆめだった。

たった今、目が覚めた覚めてしまった現在からは、

郊外の築7年鉄筋家賃63000円の6畳間1Kに暮らす、毎日毎朝片道1時間弱かけて電車に詰め込まれて24歳OL佐藤はなの、またアラタナアラタナ新しい!素晴らしい!今日が始まるのだ。

さぁ、だから起きて、はな。

確かにいつまもより少し早いけど、今起きればコーヒーも飲めるわよ、はな。

トイレ行く余裕もあるわ、はな。

朝弱いのはわかるけど・・・はな、起きてはな。

必死に呼び掛ける。

でも。

でもさぁ。

今、夢の方が確実に幸せだったんだ。とても幸せだったんだ。それだけは言えるんだ。

だから続きを、その続きを見させてほしい。

ほら、お腹もいたいし寝てた方が絶対いいよ、私。

だから、だからあと少し。10分。おやすみなさい。

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