my fair lady ② 【スピンオフ】


 長月は缶ビールを持ってきてルカと乾杯し、少し考えながらルカに聞いた。


「金に目が眩むのはしょうがないとして、真実を求めすぎてんじゃないの?」


「嫁、金に目眩まない。通帳渡しちゃってるから収支、全然分かんないけど、大きいお金が必要になる時は早めに言えって言われただけで、使い方に関して言われたこと1度もない。そういう事じゃないと思う。」


「子供可愛いじゃん。何歳?」


「今年3歳。」


「ん?……嫁さん、18で産んだの?」


「そう。」


 嘉月が年齢に反応した。


「女子高生に手だしたの!?」


「違う!社会人!嫁さん、そん時にはもう働いてたの!」


 長月が尋ねる。


「元々モデルさん?」


「違う。」


「何やってた人?」


「IT関係。」


「今は家に居るの?」


「……大学生。」


「女子大生!?」


「やめろ、やめろ、相当へこんでるから…。」


 テンションの高い嘉月を女郎花が抑えた。長月が質問を続ける。


「何でモデルなんか始めたの?」


「……体使って仕事してみたらって言っちゃったの。」


「お前が悪いんじゃん。」


 嘉月の言葉にぐうの音も出ないルカがグラスを空けると、間髪入れずに神無月所長が注ぎ足し始めた。


「あー、もー!全部俺が悪いんだろ!?いいよ!全っ部、飲み込んでやる!」




 花咲が尋ねた。


「お嫁さん、どんな人なんですか?」


「見たきゃ見ろ。」


 ルカが回覧の茶封筒を指ではじいた。花咲が中身をチラ見して、出して良いものか迷っていると、神無月所長がサッと取り出して花咲に手渡した。


「うわぁー……。」


「うわぁって何だ、うわぁって。」


「一目惚れですか?」


「二目惚れ。」


「二目惚れって何だ。」


 嘉月が突っ込んだ。


「最初はそうは思わなかった。そんな雰囲気でも無かったし。二度目はメチャクチャ可愛かった。正気じゃない人間は目ぇ見りゃ分かる。どうなってもいいと思った。」


「綺麗な方ですもんね。」


「違う。お前も分かってない。元が綺麗かどうかとあんまり関係ない。花咲、好きになる人、自分で選べると思ってるだろ?選べねぇよ?選べるのはそのまま好きでいるかどうかだけだ。


条件で選ぶのは結局、諭吉と同じなんだよ。菓子についてくる要らないオマケ位にしか思われてない。もっとマシなオマケがないかすぐ目移りして、見合わなくなったら捨てられる。


みんなそれぞれ違うけど、諭吉に勝てる奴は世界に一人、居るか居ないか。一生に一度会えるか会えないか。それが、嫁だ。」


「……結局、お嫁さん大好きなんでしょ?」


 嘉月の言葉に少し考えたが、足を組み直し大きくため息をつきながらグラスを取って、ルカが答えた。


「どうだっていいよ。子供に比べたら、嫁の事なんかはるかにどうだっていい。」


 空いたグラスにリキュールを作ると、丁度、ボトルが空になった。


「ボトル空いたぞ、ババァ!早くグラス空けろ!」


 ルカはダレかかっている神無月所長の足をテーブルの下から蹴っ飛ばした。




「どうでも良くなかったから、そんなに荒れてるんでしょ?」



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