彼女彼氏の事情

高橋聡一郎

第1話

日本の誰かがふと思った。


このまま少子化が続いたら日本の未来はどうなるのだろうか?


日本人の数が半分になったら私の年金はどうなるのだろうか・・・・?


日本中の会社員たちがふと思った。


子供の数が100倍になれば

うちの商品も100倍売れるだろうか?


誰かがふと思った。

「私たちの生活を老後の生活を守らねば・・・・・」



それは、その夜一斉に空から降ってきた。目では見えないような小さな小さな生物。

それは、日本中の隅々まで降り積もり、知らない間に人々の口や鼻から体内へと侵入していった。


その日、俺が学校に行くと教室の様子がおかしかった。

何がって具体的によくわからないが、教室の隅々までその空気感がおかしかった。


「よ、おはよ」

俺は篠田治に声をかける、こいつはちょっと不良を気取ってるが、俺とは仲がいい。

だが、篠田は何時もと服装が違っていた。

篠田は普段から、学ランの前を開け、シャツの裾を出しているのだが、今日はピッチリと学ランの前を締めまるで優等生の良い子ちゃんのような着こなしをしていたのだ。

「お、おはよぅ」


「は?どうしたのお前?」


「ちょ、ちょっと、声大きい、恥ずかしいから」


おいおいちょっと待てよ、篠田の奴、突然オカマになったのかよ・・・。


「おい、ふざけるなよ篠田、面白くねーぞ」


「いや、鴨志田君、僕はふざけてる・・・・・つもりはないんだけどな・・女子も見てるし、もう少し小さな声でお願い」


俺は周りを見渡した。女子たちの視線が俺たちに集中していた、しかも、篠田に、普段姦しい女子たちがなぜか今日は寡黙で殺気だっているような気がする。

俺は、委員長の野上ほのかを見た、ちょっと俺が気になっている女子だ。

そして、驚愕した、野上の奴篠田をニヤニヤ嫌らしい目で見ていたのだ、まるで女子高生を見るオヤジのように。

野上は絶対あんな顔はしない。断言する。


「委員長、どうしたんだよ、目つきがおかしいぜ」


野上は俺を見ると全身を嘗め回すように見ると俺の下腹部に目をやった。


「鴨志田君、別にどうもしないわよ。それよりちょっと話さない?人のいないところで」

「え、い、いや別にいいけどさ」


「それじゃ、行きましょ」


野上は俺を先導して歩き始める、屋上へ続く階段の踊り場。


俺は初めて壁ドンなるものを経験した。


やったのは野上だ。野上の長い黒髪の包まれた整った顔が眼前にあり、俺はパニックになりそうだった。だが、これはまだ序の口だった。


野上の左手が俺の股間に添えられて撫でて来たのだ。野上が顔を赤くして鼻息を荒くしていた。酷く現実味がない。


「ほら、ここが気持ちいいんでしょ。素直になりなさいよ、私の事あなたが見てたの知ってるのよ」


「ちょっと、待って、止めてっ」


俺は完全にパニックになった。なんなんだこれは。


「鴨志田君、ほら、私の胸触ってもいいのよ」


「ちょっと、野上さん、落ち着こう、ね、ね」


「何よ、私の事好きなんでしょ?」


野上はそういうとズボンのチャックを下ろそうとしてきた。


俺のものは縮みあがり、全く反応していない。


これは恐怖だ。


わけが分からない、なんなんだこれは。


俺は野上の手を逃れるように壁ドンから逃れて教室へと走った。


教室に入ろうとすると全ての女子が俺を狙っているように見てきた。


チラチラ伺うならいい方だ、優等生だった確か三田はニヤニヤした顔で俺の股間のあたりを凝視している。


俺はトイレに逃げた。


「こら、もう授業よ、待ちなさい」


男子トイレに入る寸前に担任の女教師、下田美佐子に声をかけられる。


「あ、先生、なんか女子がおかしいです。の、野上なんて・・・」


「ふーーん、で、何かされたの?」


「い、いや、別に・・・」


「ちょっと来なさい、進路指導室まで」


「別にそれほどの問題じゃないですよ、先生」


「いいから、いいから」


俺は下田先生に手を引っ張られて進路指導室へ向かうことになった。なぜか、先生に捕まれた手が酷く強くて怖い気がした。


先生に開放されたのは一時限目が終わったころだった。


・・・・・・・


俺はレイプされた。女教師に・・・・


確かに下田先生は美人だし文句はないよ。


でもさ、ケツの穴に手を突っ込まれて刺激されて強制的に勃起させられて奪われるなんて、俺の望んでた童貞喪失とは全然違う。


いや、気持ちはよかったけど・・・・ぽっ。


その後、俺は学校を逃げ出した。


なぜって、怖かったからだよ。何がって女が。


うちに帰るまでも年寄から子供まで女達に舐めるような目で見られた。


早く家に帰って部屋に籠りたいと思ったが、家に居るかも知れない母と姉が正直怖かった。

お父さん、早く帰ってきて。

俺は何時もなら絶対思わないことを祈った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る