音に切り取られたその世界を

木会

世界を切り取る音

 ファインダーを覗くと、そこには世界がある。


 まるで、顕微鏡を覗くような。

 もしくは、望遠鏡を覗くような。


 縮小されたマクロな世界。

 拡大されたミクロの世界。


 視界を切り取った、停止した時間。


 目には見えない、二次元平面的な存在。


 握ると指の届くところにたくさんあるボタンを押すと、ひとつだけある画面から、よくわからない表示がでたり。

 回してみると、暗くなったり、明るくなったり。


 暗いところでもはっきりと存在を主張してくる、確かな重量を持ったそれは、この世界を切り取る機械。


 この機械がなにをしようとしているのか、なにをさせてくれるのか。

 まだ、よくは知らない。


 でも、触ってもいいと、触ってほしいと言っているような気がして、僕は手を伸ばす。


 視界の先にレンズを向けて、ファインダーを覗く。


 たくさんのボタンを操作して、最後に右手の人差し指の先にある、他とは違う抵抗を示すボタンを押し込む。


 デジタルな、アナログな、機械音がして。


 何かが擦れて動くような、鋭い振動が伝わってくる。



 それは、世界を切り取るためのもの。


 ちゃんと、この視界の中に存在していたものらの時間を止めたという証。




 音と振動に切り取られたその世界を、僕は写真と呼ぶんだ。

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