11:最終話です!
駅前の人通りの多い場所で抱き合っていれば、周りの人にジロジロ見られるのは当たり前で、2人の世界から一気にリアルに戻された私達はその場から逃げるように車に乗り、家に戻った。
佐和田くんの顔は、嬉ーちゃんが殴ったのだと。
昨日、忘れていた紙袋を拾った佐和田くんは、私の事が心配で嬉ーちゃんに様子を見に行って欲しい、と電話をかけ頼んだのだが泣かせた理由を馬鹿正直に話した為、激怒した嬉ーちゃんに(会社に乗り込まれて)殴られたらしい。
驚きを隠せない私とは反対に、佐和田くんは何故かスッキリとした顔だった。
そして家に戻ると、リビングまで引っ張って行かれ目の前で離婚届を破られた。
「莫迦野郎。どこいくつもりだったんだ」
「…実家に心配かけたくないから独りで生きていくつもりで、その…」
「手紙に“実家に”って書いてるけど、実家に荷物送ったらお前が家出したって両親にばれるだろうが!」
「え?あ、そうだね!実家に送っちゃダメじゃん!私!」
「ったく、…ヌケ作が…」
そう言って佐和田くんは私を抱きしめて、キスをした。
何時もは唇を軽く合わせる程度なのに、今日はディープなキスをしてくる。
「さ、佐和田くん!駄目だよ!今日はイベントの日じゃないよ!」
「は?」
「え、え、え、っちは、イベントの日しかしちゃダメなんだよー」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!??だから、イベントしか俺のベットに来なかったのか?」
「ふえぇ?違うの?だってね、小さい時にTVでベッドシーンを一緒に見てしまった時にお父さんとお母さんが、『イベントの時しかしちゃダメなのよ』って言ってたんだもん!」
「そ、そんな出鱈目、この年まで真に受けるとかっ、くくくっ!ははは!」
「え!?だって別々に寝てたよ!?お母さん結婚するまで私と一緒の部屋で寝てたし!」
「は、はらいてーーーっ!あははははは!」
「ええー!?あれって嘘なの!?やだぁ!もう!そんなに笑わないでよ!」
滅茶苦茶怒っているのに、何故か、可愛い、と抱き上げてキスをして
「そんな野乃華が可愛いって思う」
そのままベッドへ運ばれてしまった。
『ね、本当にイベントの日以外にHしてもいいの?』
『あたりめーじゃん』
『あ、あ、その前に!何で昨日、帰って来なかったの?3月でサヨナラって何?私の事、しつこいとか思ってるんでしょ?』
『はー?何でお前の事、しつこいとか思わないといけねーんだよ。しつけーのは会社の上司だよ。お前に言って無かった…っけか?結婚する少し前にコンビニの新商品を開発する部に移動になったんだよ。お前のお蔭で舌が肥えて、抜擢されてさ。だけど忙しくって帰りは遅くなるし、新商品の試食したらお前の飯は食えねーし。それが嫌で違う部署に移動願い出したらやっと受理されて、今年度の3月イッパイでサヨナラできるようになったんだよ。昨日、帰らなかったのは、その、顔合わせ辛かったからで、』
『じゃあ、じゃあ、あの女の人は?』
『あの女の人?』
『昨日会った人。元カノなんでしょ?佐和田くんってご飯も作るの上手なの?』
『え゛え゛!?何でそんな事知ってんだよ!アイツ喋ったのか!?』
『違うけど…(ご飯の事は元カノからだけど)』
『野乃華!何か勘違いしてるぞ!確かに付き合ってた!それは言い訳できない事実だけどな、アイツも結婚するんだよ!そんでもって今年度いっぱいで退職する!飯は、その、作るの好きなんだよ』
『…………………』
『嘘じゃねーからな!飯だったら週末は作ってやる!いくらでも作ってやるから!』
『…佐和田くんってベッドの中では激しかったんだって?』
『ちょ!おま!』
『私、佐和田くんが初めての人だから分かんないけど、そんなに激しくないと思ったんだよねー』
『そ、そりゃあ…。がっついて野乃華に嫌われたくないから…』
『私はどんな事されたって、キライになんてならないのに』
『…なら、もっと野乃華を欲しがっていいんだな』
細められた瞳は欲情した色。
初めて見る男の瞳に私は思わず息を飲む。
その後は攻められるだけ攻められ、今迄に味わった事のないSEXに泣きじゃくった。
結婚3年目。
私を見ていたあの目は決して迷惑とかなんかじゃなくって、想いを寄せてくれているモノだったと知る。
そんな事でも嬉しくて、更に佐和田くんの事が好きになってしまった。
雨降って地固まる事件のお陰で、佐和田くんは色々と話を、思っている事を話してくれた。
SEX中にだけどね。
でも、今までにない会話が嬉しくて、更に彼の事が好きになってしまった。
結婚3年目。
あぁ、佐和田くんを好きになって良かった。
ーーー次の日。
佐和田くんを殴り『野乃華を探して来い』と佐和田くんのお尻を蹴り飛ばした拍子に赤ちゃんが一気に下がり、なかなか来なかった陣痛が来たらしく
『君たちのお蔭で予定日過ぎても出て来なかった息子がやっと出て来てくれたよー!サンキューね!』
と書かれたメールに笑っちゃいけないけど、笑ってしまう。
まあ、佐和田くんの変わり果てた顔を見れば、嬉ーちゃんが物凄い勢いで殴ったんだろうなって事が想像できてしまって。
「あはははっ!いたたたた~~~(涙)」
しかし、私は笑うだけでも一苦労。
もう、全身筋肉痛で佐和田くんのベッドでゴロゴロするしかない。
「SEXって本当に運動だったんだ」
嬉-ちゃんからのメールの文面を見ながら昔、友達が言っていた事を思い出して呟く。
家の事は全て佐和田くんがしてくれてるし、甲斐甲斐しくもご飯を作ってくれて私のニヤニヤは止まんないけど。
「毎日、日曜日だったらいいのに!にゃん!ニヤニヤ止まんなよ!って、いたたぁ(涙)はぁ、嬉-ちゃんに返信しなきゃ…」
迷惑をかけた嬉ーちゃんのメールに『お詫びと出産おめでとう』返信を作成する。
そして。
佐和田くんがどれだけ私の事を愛してくれてるかを聞いて欲しくって。
「えーっと、件名は…」
『件名:夫に愛されてると分かりまして』
【終】
※ここ迄、お付き合いくださりありがとうございました。
もう1話、おまけの番外編を更新します。
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