第10話「やきいも」

やきいも





の季節ですね。




食べ物と記憶って密接に結びつきやすい。



私はこの季節になると、


母に買って貰った、ある「石焼きいも」の記憶がよみがえります。




皆さん、今井丸井って知ってるますか?



北海道で展開する、老舗のデパートなんですよ。



驚いたんだけど、こっちにも「マルイ OIOI」ってあるらしいです。



来たばっかの頃なんて、


「待ち合わせはマルイの前にしよう」


って言われて、テンションあがりましたよ!





私>


「丸井って、今井丸井の丸井?」



友人>


「はあ?」



みたいな(笑)




ややこしい事この上ない。



北海道出身の上京組は、絶対このトラップに引っかかってるはずです。






うちの地元なんかでは、


敬意をはらって「丸井さん」って呼ぶ人が多かったな(笑)




今日は「丸井さんにいくよ」なんて言われた日にゃあ、


子供ながらドキドキしたもんです。




よそいきの格好させられて(笑)





丸井さんには、サンリオストアがあるんですよ。


新しい、モコモコのシールを買ってもらえるチャンスなんです!


丸井さんは、そんな特別なデパートです。




丸井につくと、いつもデパートの裏側に隣接された駐車場に車を止めていました。



入口まで車体が入ると、小さな小屋から、ほっぺたが赤くそまった、気の良さそうなおじさんが出てきて、運転を交代してくれるんです。


空いているスペースに止めて、鍵を外し、おじさんは駐車場の切符をアカ切れした指に挟み、母に手渡す。



その後、母と手をつないで丸井の入口まで歩くのだが、その途中に「石焼きいも」を販売するお店がありまし。



お店が近付くと、いつも美味しそうな焼き芋の匂いが周囲に満ちて、秋という季節を存分に演出してくれるのです。



その前を歩くと、私は決まって



「焼き芋たべたい!」



とおねだりしました。





「お買い物が終わってからね」



といわれると、



買い物よりも、帰り道が楽しみで仕方がありませんでした。





母は丸井さんに入ると、まずは決まって1階の靴売り場に立ち寄ります。



おなじような靴を丹念に履いては脱ぎ、


「ママの靴、どう思う?」


とショッピングを存分に楽しんでいました(笑)




当時は子供ながら、


似たような靴、たくさん持ってるじゃん!


とか


買いもしないのによく飽きずに見てられるな


とか思っていました、







いやいや。


今でも思っています(笑)




長い時間の買い物は苦手!w






その後、バッグ売り場、ストール売り場などを経て、



時間に余裕がある時は、そのまま婦人服売り場に連行されるんです。



ここでも、あーでもない、こーでもないを繰り広げ、店員にまんまと買わされることも度々ありました(笑)




たっぷり1時間洋服を堪能した後、


紳士服売り場の前を通った際には、




耳元でコソコソっと


「お父さんもこうゆう服着ればいっしょやねぇ。いっつもいっつもポロシャツしか着ないんだから、ユニクロでじゅーぶんっ!」


と、両手いっぱいに購入した自分の洋服を持ちながら、鼻歌まじりでエスカレーターに乗りこむのです(笑)



散々母のマダムライフに付き合わされた頃には、ヘトヘトです。




それでも、


前述したサンリオストアと、デパートの食堂で食べる「シーフードドリア」、帰りに立ち寄る「石焼きイモ」がたまらなく好きで、


私はこのめんどくさい母とのショッピングに必ず同行していました。





さー。


ご飯も食べたし、ショッピングも佳境。



そろそろ帰ろうか


という言葉が出ると、私のテンションは急上昇




ですが、


出口までの通路には、最初に見た靴売り場やバック売り場があるんですよ。





なんどもなんども、


ちょっと待って


と言い出す母に、



「ねーまだぁ~?」


とウンザリしていると、




「あんたうるさいから、先に出口にいってなさい!!」



と、まるで野良犬を追い払うように、



シッシッとされたものです(笑)





私は、まるで忠犬ハチ公のように、



寒空の中、母が買い物に飽きてでてくるのをじっと待っていましたww





ようやく母と合流すると、



いよいよ楽しいイベント。




焼き芋屋さんの前まで、母の手をひっぱり、


茶色い紙袋いっぱいに焼き芋を買ってもらうのです。






その時の、焼き芋の香ばしい甘いかおりと、


アツアツの小石の中から出現する大小のおイモ、


それをバランスよく紙袋に入れてくれるおじさんの


ススけた手が忘れられない。




「お兄ちゃんとお姉ちゃんの分もね」


と優しく言う母の顔も忘れられない。




車に乗り込むと、ヤキイモを持つのが私の役目です。





大事そうに紙袋をひざの上に乗せて、


たまーに、気になっては、


紙袋を少し開けて、焼き芋の匂いをクンクン嗅いでは、


胸をときめかせたものです。





今考えると、



母のショッピングにも付き添わず、


焼き芋を簡単にGETしていた兄弟たちが一番利口であったことは明白です(笑)





当時の甘い匂いと共に、大切に覚えておきたい、我が家の秋の恒例行事です。


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