天死

うすたく

不治の病

 ある少年の住む村で、とある病気が流行った。その病気は恐ろしいもので、発症者は1週間以内に亡くなるそうだ。

「父ちゃん・・・。父ちゃん!」

 父親は5日前にその病気にかかり、今は布団に寝込んでいる。こんな形で別れるのも辛かった。医師は何人も呼んだが、未知のウイルスが原因だそうで、未だに治療法は解明されておらず、不治の病と言われている。

「クラル、いつかお前も医師になって、この病から村を救ってくれ・・・。」

 父親が少年に残したセリフだった。

「うん、絶対にこの病気を無くしてみせる・・・。」

 この病気は伝染病だそうで、父親の発症から3日後に、少年も病気にかかっていた。でも、自分に出来ることはないかと思うと、そんな苦しみなど感じず、親の看病に励んだ。


 ある日の事だった。村を歩いていると、老人2人が話していた。

「ワシたちの村で流行っておる伝染病、なんとかして治せんかのぉ。ワシもあと2日ない命じゃ・・・。」

 気付けば村人は皆、この病気にかかっていたらしい。

「隣町に願いを叶えてくれる天使がおったような・・・。天使に頼めば治るかもしれんな・・・。」

 そんな非現実的な事をだが、小耳に挟んだこの情報は僅かながらの望みになった。疑心暗鬼になりながらも少年は隣町に行くことにした。


 隣町に着く。自分の住んでいる村よりも賑わっているのがわかる。少年はその街の住人に話をかけた。

「ここに、願いを叶えてくれる天使がいると聞いたのですが・・・。」

「あぁ、確かにおるよ。あそこの館の中じゃ。ただし、何か手土産を持って行かなければ話すら聞いてくれん。でも、その力は本物じゃ。この街は何度となくその力に助けられた・・・。」

 どうやら本当らしい。少年は村から饅頭を持って来て、すぐさま館に向かう。

「すいません。」

「ん?どうしました?」

 天使の名に似合わない紫色に身を包む性別不明の者が返事をする。

「私の願いを叶えてくれませんか?」

「手土産は持って来たのか?」

 少年は饅頭を天使に差し出す。

「よかろう、話すが良い。」

「私の村で流行っている伝染病を治して欲しいのです!」

 少年は天使にそう言うと、天使は笑顔でこう返した。

「容易い。もう治したぞ。とっとと帰るがよい。」

「あっ、ありがとうございます!」

 目から鱗が零れそうになるが、必死にそれを堪えて走って村へ帰って行く。


 5日後、少年を除く村人は全員亡くなった。


「お前は酷いやつだな。あんなになるなら⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎治さない方が平和だったんじゃないのか?」

 老人が天使にそう言うと、

「何を言う。私は確かに⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎を叶えてやったぞ。」

 と、不適に笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天死 うすたく @usutaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ