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ひら

第一章

プロローグ

 2045年。医療分野においてグリアパルスと呼ばれる技術が開発された。信号を直接脳へと送る技術がその後、視覚や聴覚に障害を持つ人達の感覚器官を代用する技術として実用化を迎えた。技術の増々の進歩と共に一般的に購入出来る値段でハードも流通するようになった事によって、その技術はゲーム業界へと転用される事となる。バーチャルリアリティがより現実感を持った物として制作され、様々なハードとソフトが入り乱れる時代がやって来た。

 2061年には全ての感覚を直接脳へと送る事が可能に、そして脳からの出力をハードに送る技術も実用化を迎える頃に更にゲーム開発を後押しするハードが開発される。


光学式情報処理・記録装置-Optical Information Processing and Record Apparatus-


 クリスタルユニットとも呼ばれるCPUとHDDを兼ね備えた情報処理・記憶装置の開発。

 結晶化の方向を分子レベルで組む事を可能とした技術によって、光を動力源として情報の処理と記憶の両方の機能を備える事が出来る透明な結晶コンピューターの開発に成功した。1㎜四方ほどの大きさがあれば、それまでの電子部品を使ったパソコンの処理能力・記憶容量の300倍にも達する能力を持ち、小さなライトを動力として可動するため、ほとんど発熱しないそれはあらゆる分野で従来の電子機器と入れ替わった。


 そしてゲーム業界のオンライン分野では新たな概念とシステムが実装される。ソフトボールほどの大きさのクリスタルユニットの中に一つの惑星を作り出し、全ての感覚を完全にクリスタルユニット内に投入し、その星に降り立って遊ぶ。

 様々な惑星が作り出され、それぞれの星同士が行き来可能なオンライン世界。あまりの人気の為、他のゲーム会社も惑星制作にこぞって参加。まさに星の数ほどの惑星が生み出された。


 それぞれの分野でハード・ソフト共に開発が行き詰るほどに開発されつくした2084年。人気が無くなり回線を切断され放置される様々な星々が出る時代に、一人の男が売りに出された星の一つを買った。


 (まぁ…そこまで高く無かったし…。)


 たいした興味も無いままに気まぐれで買ったクリスタルユニット。

 サラリーマンの初任給の1/20ほどの値段で売りに出されたそれにさしたる期待もせずに買ってはみたものの、家に持って帰ったクリスタルユニットはインテリアとして飾られた。

 可動するクリスタルユニットはその大きさと処理の膨大さによって細やかな微光が大量に蠢く美しいオブジェとなった。


 そして半年ほども放置される事になる。

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