第2話

TV局が主催するお台場のイベント会場は、夏休みということもあり、どこも長蛇の列で一杯だった。


今日の野外ライブでは、みきりんが所属するアイドルグループが出演する。もちろん、みきりんも出演予定になっている。しかし、きりんは会場にいない。幽霊のきりんは日頃はこきもりんストラップに入っていて、じょんれのんが持ち歩いている。つまり、じょんれのんが会場に行けば問題ないのだが、みきりんが歌いだすときりんが興奮してストラップから出て来てしまうのである。そうするとコンサートどころの騒ぎではなくなるので自粛したのである。きりんは相当抵抗したものの、じょんれのんがストレートな決め手を一発。


「お前それでみきりんの歌が台無しになってもいいのか?」


歌こそみきりんの真骨頂というきりんにとって、その歌が自分のせいで台無しになると言われては我慢するしかない。これでじょんれのんの家でお留守番となった。


じょんれのんはカップ麺のフタを開けて湯を注いだ。


「待ってる間に一曲行くか。」


じょんれのんがギターを弾きながら歌いだした。


「I see tree of green〜」


「イイねー」


「red roses too〜 」


「フーーーッ」


「おいっ。何で相づち入れるんだよ。静かに聞けよ。」


「えー、なんであかんの?コールやん。ノリやん!」


じょんれのんはこきもりんストラップをつまんで、カップ麺に入れてフタをした。


その頃、お台場の野外ステージでは大量のムクドリが観客席上空一杯を埋めつくしていた。

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