セタンタの呪われた槍

あるみな

第一章

一太刀 《限定販売》


 一


「はぁ......はぁ......」



 昨日十八の誕生日を迎えたばかりの少年、依田神衣いだかむいは、とある裏通りを走っていた。


 裏通りにある一軒の小さな店には沢山の武器が展示されているが、そこを素通りして奥のレジに向かう。


 レジの隣には一年に一度、一日だけ特別な武器のモデルが一点のみ売られる。神衣は、それが目的だった。



「よし...間に合った...!」



 今年の販売品は『魔槍ゲイ・ボルグ』。

 聖剣、魔剣オタクの神衣にとっては垂涎の品物である。値段は張るが、この為にバイト代を貯めて来た。

 神衣はレジの店員に高らかに宣言した。



「これ...っ、ゲイ・ボルグ下さい!」




 ※※※※※※




「良かった良かった...。」


 店の中でゲイ・ボルグを撫でる神衣。


 竿は上半分が銀、下が黒に塗られ、口金くちがねから穂にかけてが金色に輝く槍。穂は鎌槍の中心部だけが残ったように細く、槍と言うよりは、もりのそれに近い形状をしている。本物なら人など軽く貫けそうだ。


 勿論これはモデルなので実際に貫くには相当以上の力がいるし、その気もない。


 銅金どうがねの間を片手で持ち、穂先を正面に向けて構えてみた。モデルとは言えそれなりの重量はある。

 神衣はレジのありがとうございました、という挨拶を背後に聞きながら、店を出た。



 店の扉を開くと神衣は、目の前に起こっている光景に目を見開いて驚いた。



「......は?」



 視界に映るのは薄暗い裏通りではなく、青空の広がる広々とした高原だった...




 ......................................................

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