からすと子ども
S.y
第1話 からすの好奇心
雲一つ無く、青色が澄み渡る空を電線の上で眺めている一羽のカラスがいた。そのカラスは遠くを見つめながらどこか悲しげな面持ちであった。
「どうして、父ちゃんと母ちゃんはわかってくれないんだろう…。」
先程、このカラスは両親の前で途方もない発言をしながらも真剣に訴えていた。
「僕はね、いつも見ていたんだ!あの場所で人間の世界を見ていたんだ!だからね、僕もあの世界…」
カラスが言い終わる前に父親カラスが心のこもった言葉を切れ味のいい刃物であるかの如く切り捨てた。
「お前はカラスだ。人間どもは私達の姿を見るだけで迫害し、駆除しようとする。まぁ、お前にも分かるように言えば私たちは人間の敵なんだ。」
その言葉に続くように母親カラスが呟く。
「それよりも、あの森の赤い木の実を取ってきて頂戴な。」
その言葉を聞き、カラスは浮かない顔をしながらも翼を広げて青空を仰ぎ巣から飛び立った。
しばらくの間、空を飛び回り木の実がある森のすぐ手前まで来ていた。
「はぁ…。父ちゃんも母ちゃんも子どもだからって言って僕になんにもさせてくれない。」
カラスが不満を呟きながら進んで行くと、遠くの方から鋭く渇いた鳴き声が空に響き渡る。その、鳴き声が聞こえた瞬間にカラスの背筋が凍りついた。
「あいつがこっちに来る。どうしよう、どうしよう!」
カラスはその鳴き声を聞き、飛行が乱れるほどの身震いをしてしまい、自分に迫ってくる枯れ果てた木にぶつかってしまった。
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