地下からの問ひかけ
柊 撫子
はじめ
町外れのとある山奥。
暗い山々にそびえる樹林を掻き分けるように大きな屋敷はある。
眩い太陽に照らされても、鋭い刃のような雨に打たれても、全てが静かに凍てつく時でさえもこの屋敷は変わることがない。不自然なほどに。
まるでこの屋敷だけ時が止まっているかのように、何もかもが変わることがないのだ。
この屋敷ではもう一つ絶対に変わらないことがある。
それは、いつからか屋敷の地下から聞こえてくる声だ。
その声は人のような、人ではない生き物のような、もしかすると生き物ではないような音。
けれどもその音は言葉を紡ぎ、屋敷に訪れる人の脳裏に焼き付けるのだった。
「アランを知っているか?アランは知っているのか?」
悲しむような、怒るような、
寂しいような、嬉しいような、
そんな抑揚で問ひかけてくる声。
勿論、その声を聞いた人間は今まで数え切れないほどいるが、その声に返事をした者は誰一人としていない。
それでも変わらず問ひかける。
変わらない声で、同じ方向から、見知らぬ誰かへと……
誰かが返事をしてくれるまで……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます