零\ベース ー世界を変える黒の逆襲ー

@Kain_syosetsu

プロローグ

魔法は便利なものだ。 

時には人の生活を、時には人の命を、足となり手となり、助けてくれる。

 

火魔法を使えば肉が焼ける。

水魔法を使えば水が飲める。

土魔法を使えば便利に畑が耕せる。

 

当時、魔法を使うことが一般的でなかった時代、魔結石が主流で使われ、魔法と言うものは現在とは違う形で人々の生活に浸透していた。

 

魔結石とは、魔法の使い方が難しかったために、とある天才魔術師によって作られたもので、消耗品ではあったが、魔法適性を持っていない人にでも使えるという非常に便利な代物だった。

そのために人々の生活に深く浸透し、やがて魔結石が主流となり、魔法というものはすっかり衰退してしまっていた。

 

そして、そう、それは実に千年前。天界、魔界そして人間界は、互いに助け合い共存していた。その時代は皆が笑顔で幸福で、平和そのものであった。

しかし、そんな平和も束の間、天界の王の死をきっかけに、世界の均衡が崩れ始め、いつしか天界と魔界の間には大きな亀裂が入ってしまった。当初、各世界の支配者達はなんとか戦争には発展させるまいとしていたのだが、勢力を抑えることが出来ず、魔界と天界は人間界を戦場に戦争を始めた。そして、戦争に巻き込まれた人間界もいつしか、天界側と魔界側で二極化を起こし、いがみあいを始めた。それはそれは、凄惨なものであった。

膨れ上がった戦争はもう誰にも止めることが出来きず、殺し合い、助け合い、嬲り合い、傷つけ合いの繰り返し。

止まることのない神々と魔族の戦争は永遠に続くかと思われた。

人間界は戦争によりボロボロになった。土地が荒廃し、治安が悪化し、人同士でも血みどろの争いを繰り広げた。それはまさに地獄絵図だった。 

戦争は人々をどんどんと絶望の底へと落としていった。

 

そして、それが二百年続いた頃。

突如、人間界で眠りについていた獣が立ち上がった。狼のフェンリル、龍のヘルヘイム、蛇のヨルムンガンド。その三匹の出現で、戦争は一年も経たずに幕を閉じた。恐ろしいまでの力で暴れ周り、全ての世界を無力化していったのだ。

だが、その三匹も戦争の幕を下ろし、息絶えてしまったのか、ぱったりと姿を見せなくなってしまった。

天界、魔界、人間界はそれぞれ総力戦だったために、一時的に戦力を失い鎮静化した。

そして、なんとか戦争が起きぬように互いに牽制し合い、実に八百年。ついた亀裂は修復することなく、冷戦が続いた。

 

そして、現代。

 

戦争厄として残った魔物を討伐しながら、生活していた。

そして、魔界が密かに戦争準備を始めているとの噂を嗅ぎつけた人間界では、魔法を扱える人材の育成のため、各所に魔法学校を作った。作られた魔法学校の各所で天界や魔界の技術も取り入れ、ものの五十年ほどで多くの逸材を作り上げ、やがて魔法学校は半軍事施設として、役割を発揮し出した。

 

ーーーそして、未だに冷戦の続く今日。


以前よりは平和な世の中で、また一人、スペシャルな人材が誕生しようとしていた。

 

グレゴリウス魔法学園。

ラーク王国に位置するその学園でその人材は誕生した。

 

「ぜ、ゼロです。」 

  

「…え、はい?」

 

「か、加護、適正は共にゼロです。」

 

それは、世界を変えるかもしれない人材が誕生した瞬間だった。

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