第18話 三年間
ハルの話はまだまだ続きます。
ミッションも実は最後に、餞別代りに私に貴族としてあるべき姿と、魔法の応用を教えてそれで何とか、私からもう十分と言わせるつもりだったそうです。
その際、私がいろいろな人に話を聞くのは想定済だったといいます。
確かに精霊の加護と聞いても、普通はそんなに悪いイメージは持っていないので、両親に話されてもそれほど困ったことにはならないだろうと思っていたそうです。
逆に「良かったね。」位で、終わると思っていたのが、お父様がガッティーニのことを知っていたが故におかしなことになってしまったというわけでした。
そこで、仕方なく半分くらい本当のことを言って、脅かして私から精霊の加護はいらないと言わせるつもりだったのに、それでもいらないと言いません。
仕方なく本当のことを話すことにしたそうです。
どうして最初から、正直に言ってくれなかったかと思いましたが、確かにほかの精霊の目があるとなれば、精励の加護の真実を話すことはできません。
それに間違いなく、加護のことを先にお願いしたのは私なのですから・・・。
そして、ハルはすごく大事なことを話してくれました。
これからハルが故郷に帰らなくてはならない様に、ほかの精霊たちも皆故郷に帰るそうです。
したがって、この近くは少なくとも3年間は精霊がいないことになります。
そして、私のライバルになるであろうメアリー嬢には精霊はついていない。
なおかつ、私はすでに現時点で彼女と対立することまで知っているが、彼女はそれを知っていない。
確かに、ルクセンブルグ公爵家は国で1,2を争う名門で、まともにやりあったのでは我がグーテンベルグ伯爵家に勝ち目はないでしょう。
しかし、3年間という猶予があるのです。
この3年間の間に私が彼女に対抗できるだけの力を身に着ければ何とかなるのはないかと思いました。ただ、逆に言えば、身につけなければ破滅しかないということになるのですが・・・。
そして、ハルは「本当に餞別だよ。」と言って、いろいろなことを教えてくれました。これは、もはや、隠し事をする必要がなくなったということを意味するのでしょう。
なんといっても最初は、やはり魔法の練習。
つまり、あの単純極まりない、マナ吸収の練習は毎日したほうが良い(しなくてはならない)という話です。
理由は、慣れれば慣れる程マナ吸収は早くなるので、早く魔法が使えると教えてくれました。
そして、マナは蓄えておけることも教えてくれました。
大きい魔法を使うためには、当然それだけ大量のマナが必要になるわけですが、そのためには、普段から体の中に蓄えておくしかないというわけです。
そして、2つめは何をするにも体力も必要なので、運動をしておくこと。
今でこそ、まだまだ体はぽっちゃりですが、これからマナを使う練習をすれば、絶対体重は落ちるというので、毎日走るようにと言われてしまいました。
魔法を使うにしても、学園でやりあうにしても体力は大事という話です。
3つめが、味方をたくさんつくること。
ルクセンブルグ公爵家に一人で立ち向かうのは自殺行為にしかならないので、できるだけ私に同調してくれる貴族を見つけること。
できれば王族とも関係を持てれば最高と言われてしまいましたがハードルあげすぎです。
そして、貴族だけでなく、私の手足として動いてくれるものを見つけるようにとも言われました。
確かに魔法学園には身の回りの世話をする者を数名連れていくことができます。
どうやら、その時に使える者を今のうちから見つけておけということのようでした。
4つめがしっかり学ぶこと。
やはり、来たかという感じですが、仕方がありません。学園では試験もあります。
そこで悪い点をとるようでは、他人に付け込まれる隙をあたえることになります。
それに教養は必要です。他国の情報、花の名前、相手が変われば話題も変わります。うまく対応できなければ、私に関心を持ってくれません。当然先の味方を見つけることなどできるはずもありません。
そして、5つめ貴族の矜持を大事にすること。
もし私が冒険者にでもなるのなら、そんなものは必要ないでしょうが、私がすべきは、学園で正々堂々(と言ってよいのかわかりませんが)、メアリー嬢とやりあうこと。
その際、魔法で暗殺などという方法を使ってしまえば、一番楽なのかもしれませんが、それではあんまりにもメアリー嬢が可哀そうです。
別にハル達のゲームに本気で付き合ってやる気はありませんが、貴族としてしてやってはいけないことがあるというのは間違いないかと思います。
それに、万が一誰かに見られてしまえば、それだけで終わりです。
また、ただ勝てばよいものではないというのも確かです。
長い人生の中でメアリー嬢だけが相手ではなく、学園を卒業した後も、貴族として生きていくのであれば、やはりこれからのことを考えて貴族らしい勝ち方をしなくてはならないのは確かでしょう。
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