第10話 認識
昼食の支度ができたとメイドが呼びに来たので、とりあえずマナの循環はそこで中断します。
体調もだいぶ戻りましたし、お父様やお母様にご心配をおかけしたくなかったので、久しぶりに食堂で食事をとることにします。
これ以上スープだけという生活にはかなり飽き飽きしていたということは内緒です。
食事のあとは本来家庭教師に勉強を見てみてもらうことになっていたがのですが、さすがに今は遠慮してもらっています。
そのため、食事のあとは自室に下がることになります。
部屋に戻ると午前中の続きです。
マナを目に集中して、空気中にあるマナを集めて身体の中を循環させます。
しばらくすると、いきなりハルが「何色のマナが見えるか言ってごらん。」と言ってきました。
「赤、青、緑、茶色、あと黄色もあるかしら?」
するとハルは、興味深そうに私の顔を見て、「すごいじゃないか。」と言ってきます。
ハルに褒められたのは初めてのような気がします。
「魔法は基本、火、水、風、土の4つに分類される。さっき、『気が付かないということは、存在しないと同じことだよ。』と言ったのを覚えているかい?」
「見えないということは、認識できないということだ。例えば赤いマナは存在しているが、見えない人にとっては、赤いマナを吸収できないから、使えない。存在しないと同じことだという意味だよ。」
やっと、さっきハルが言った意味が理解できました。
「で、すごいと言ったことだが、本当に黄色が見えるのかい?」と聞いてきます。
目をこらして、よく見ると黄色というより白かもしれません。そこで「ごめんなさい。白だったかもしれない。」と答えると、ハルは「間違いない光だ。」とつぶやきます。
ハルの説明によると、火、水、風、土はそれぞれ、赤、青、緑、茶色のマナが相当します。この4つが基本ですが、それ以外に光と闇、黄(白)と黒があるそうです。
どのマナを扱えるかは先天的なもので、努力してもどうにもならず、場合によっては1種類しか使えないことも結構あるといいます(それ以前に0が圧倒的に多いのですが)。
4つ使えるだけでも貴重なうえ、光となると更に本当に珍しいから、ハルも思わず、さっきは褒めてしまったということらしいのです。
「黒は見えないのかい?」
そうハルに言われて、よく見てみると、下のほうに何がうごめくものが見えます。
あれが「黒」、本能的にものすごい嫌悪感に襲われ、私は顔を背けてしまいました。
「どうやら見えるようだね。」
口調はいつも通りですが、ハルの様子はどうも違います。
何と言うか、今までは私にやる気がなければ、いつでも見捨てるという感じがどこかにあったのですが、今はそれがなくなっている感じです。
それどころか、私にかなりの興味というか、関心を持っているのがわかります。
なぜ、それがわかるかというと、うまく言えませんが、ハルの様子は、新しい人形を買ってもらった時の自分にそっくりだったからです。
やはり精霊は長生きしているだけあって、知識量も違えば、価値観も違います。
そして、ものすごい力を持っているということは、今回のマナのことで、嫌というほど実感できます。
正直、すごすぎて不気味な感じがするのは否めませんが、その時の私は、これで見捨てられないで済むという安堵感のほうが大きかったようです。
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