第174話 戦車

京都府 舞鶴市 海上自衛隊航空基地 通信司令室



通信兵「オスプレイ、ナイトホークWP着陸、これにて即応救出隊1から8、BP8到着…」



通信兵3「第5、第8、第11も現場到着、部隊散開開始」



通信兵4「全ガンシップ及び全航空ユニット 目標バトルポイント到着…シャイアン1、コブラ3、アパッチ1、ブラックホーク3機にて現在 周囲の掃討作戦実行中、他の航空部隊は只今上空待機中です」



通信兵2「救出班9から16、こちらもBP8着点完了、生存回収班を含む全タクティカルユニット、BP8に集結しました」



モニター画面に映る京都市のマップ



部隊を表す赤い点が目標地点に集中していた。



通信兵の背後では、腕を組み見守るもがみ一佐と椅子に腰掛け、おかわりでエスプレッソコーヒーをすする小西陸将の姿



通信兵「座間の生存班も無事です これで全ての班 救出及び合流完了致しました」



宮本「よし 殲滅戦の続きを開始、このまま一気に奴等を駆逐しろ」



通信兵「了解です… 全部隊へ 全部隊へ 殲滅戦続行開始 京都市全域の殲滅作戦を再開させろ」



起死回生した京都殲滅作戦



それを指揮する宮本が安心した表情で志水の肩を叩き、一息入れる為、もがみ、小西へと近寄った時だ



2名の通信兵が慌てて席を外し、宮本の元に駆け寄って来た。



「司令官 大変です」



青ざめる通信兵



宮本「どうした?」



「と…東名…関越共に…だ…第1防衛ライン…奴等に突破されました…」



宮本「なに?」



もがみ「何だと?」



血相を変えた宮本、もがみ、小西



3人は急いで2つの高速道を映し出すモニター画面へと駆け寄った。



ヘリから映し出された映像に唖然とする宮本、もがみ、小西



小西「なんだこれは… 何て事だ…」



バリケードが破られ、雪崩れ込むゾンビの軍勢が映像で流れていた。



瞬く間に前線の歩兵隊が襲われて行くノンフィクションな真実の映像。



宮本「何してる… 全員の退避は」



通信兵「駄目です… 退避間に合いません…」



上空から映し出された映像には、2つの高速道が同時に…そしてあっという間に戦車が奴等に取り囲まれ、奴等から逃げ惑う隊員達が鮮明に映し出されていた。



宮本「何とかしろ」



通信兵「東名、関越各第1線コマンドポストへ 早急に全員撤退させるんだ」



「ザザァ こちら東名…第1防衛ラインコマンドポスト…すいません…電波障害でよく聞こえませんでした…もう一度し…がぁぁあああ…クソ…パァン パンパン 松平ぁ 後ろにいるぞ…タタタタタ…パンパァン…わぁああああああ…ザザァァァァァァア…」



通信兵「コマンドポスト コマンドポスト応答しろ… コマンドポストどうした?応答しろ」



生唾を飲み込み、コーヒーカップを持つ手が震える小西陸将



犠牲になる隊員達をただ眺める事しか出来ない宮本が勢い良く両拳を打ちつけ、うなだれた。



通信兵「見て下さい…ヒトマル5輌が退避してます…」



モニター画面を指差す通信兵



ヒトマル戦車5輌がバック走行で前線から離脱する映像を捉えた。



かろうじて退却した戦車を目で追う宮本



だが…残りの逃げ遅れた隊員達は…



地獄絵図と化す2つの高速道に…



仲間が…奴等に生きたまま食される光景が映し出されている。



悲鳴が聞こえてきそうな程の惨状がノーカットで流されていた。



頭部にかじりついたまま首をもぎ取られる隊員の姿にもがみは目を瞑らせる。



通信兵「関越のコマンドポストも音信不通…地上班との連絡取れません」



そして、宮本、もがみ、小西の目に更に目を疑う光景が飛び込んできた。



ブシュュュュュ



煙尾を描き放たれた誘導弾



突如地上からいくつもの誘導弾が空へと飛び立つ映像だ。



空中を旋回する一機のシーホークが間一髪誘導弾を避け、掠めて行くのだが…



連続して放たれた誘導弾が飛んで来て



避け切れない機体に誘導弾が直撃した。



空中で爆発を起こした機体。



宮本「誰だ…誰が撃ってるんだ?」



「ザァァ こちらSH0041、対空砲の襲撃により機体へ被弾、エンジン故障、ブレードの回転数減少、サイクリック、CP共に操作不能…ザザァァァァァァア」



通信兵「分かりません…関越でも同様に対空弾の襲撃を受けています」



次々に放たれる誘導弾。



飛翔する大量のミサイルが乱れ撃ちされている。



そして次々に的にされたシーホークが撃ち落とされて行った。



見る見る撃墜された機体の残骸が地に降り注ぎ



その後、続々といくつものモニター画面が砂嵐へと変わっていった。



小西「信じられん…誰の仕業なんだ?」



この場の誰しもが混乱した



一体…誰が…撃ってるというんだ…?



砲撃を必死に回避する哨戒ヘリ



回避運動するヘリをただ見てる事しか出来ない宮本は握り拳の力を強めた。



受け入れがたい光景に奥歯を噛み締めた時



これらの犯人がすぐに明らかにされた。



「ザザ こちらSHマルハチ…奴等です…砲撃してるのは奴等です…ザザ」



奴等…?



「ザザァァ こちら東本部 シーホーク08 奴等とは?ザザ」



「ザァ ランナーです 感染者ですよ 自衛官のランナーが…わぁぁぁ」



「ザザ シーホーク08 シーホーク08

ザザァァァァ…しろ」



「ザザァ…駄目だぁ~回避しきれない…ザァァァ」



小西「ランナーが…?あの単細胞共が撃ってるというのか?」



もがみ「本当に?まさか…あの感染者が弾を込めて、狙いを定めて…発射してると言うのか…?」



信じられない事態に戸惑う一同



そして追い打ちをかける光景が一同の目に映り込んで来た。



通信兵「これを見て下さい」



シーホークのカメラから映された映像に…ロケット砲を抱える感染者達の姿が映っている。



RPG スティンガー 01誘導弾と様々なロケット砲を手にする奴等の姿



そいつらが戦車のハッチを開き、中へと乗り込む



また数体のアーマードジャケットを着用した感染者が機体に上がった。



キャタピラーが動き、10式戦車が動き始める。



いくら自衛官の感染者とは言え、奴等が戦車を動かした事にもがみ、小西は茫然とした。



「ザザ ま…まずいです戦車が第2防衛ラインに向かって前進しました…クソ…やばぁミサ…わああ…ザザァァァァァァ」



東名自動車を映す全ての映像が砂嵐へと変わってしまった。



「ザザァ 戦車がぁ 変異体が戦車を動か…ザザザァザザァァァァァァア」



関越自動車の最後の映像もここで途絶えた。



リンクする様に2つの自動車道で同時進行する惨劇



通信、映像が全て途絶えた第1防衛線



奴等が操縦する10式戦車が第2防衛線へ侵攻を始めたメッセージのみを残し



全滅した。



小西「宮本…状況が不明になった…今分かるのは両道共に戦車が第2防衛線へと向かった事だけだ…どうするんだ?何としても到達を阻止しないといかんぞ」



宮本「志水 米軍の飛行隊はどうなってる?」



志水「はっ 東名にスペクターとハーキュリーズ 関越に4機のホーネットが向かっております」



宮本「到着時間は?」



志水「ホーネットは5分後に第2防衛線に到着 ガンシップ2機はおよそ20分後に到着予定です」



宮本「よし すぐに米軍の攻撃機に直接回線を繋げて指示を送れ ホーネットとガンシップで敵の戦車を撃破させるんだ」



志水「はっ 直ちに」



宮本「東名で5輌のヒトマルが離脱に成功したんだな?」



通信兵「はい 現在バック走行により、第1防衛線から2.6キロの位置を走行中です」



宮本「追っ手はただの戦車じゃない…大量のロケット砲を所持し、知恵を身につけた奴等の乗る…悪魔の戦車だ…」



宮本はもがみ、小西、志水を見渡した。



宮本「5輌のヒトマル隊にも連絡を入れろ 追っ手の戦車を米軍の攻撃機と共に迎え撃てと」



通信兵「分かりました 直ちに」



宮本「すぐに取りかかれ」



関越自動車道で4機のホーネット



東名自動車道でスペクター、ハーキュリーズによるガンシップ



また5輌の10式戦車を加え



これより両道で追って来る戦車を迎え撃つ

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