第127話 凌乱 

1階 音楽室前廊下



音楽室の防音効果でかなり少音されていた音



由美、結香が廊下へ飛び出した 出端に



「ぎぁぁあああああ」「きゃあ」



長い廊下を左右に行き交う生徒達の姿



「2号棟の視聴覚室にあいつらいるぞ」



「林先生 岩田くんが…」



「おい そっち行くな あいつら外にめっさいて玄関から入って来てる…戻れ 外はもうやばいぞ」



また階段から慌てて駆け降り、玄関へと向かう生徒達を目にした。



「キャアアア」



「上で変な一年が暴れてるぞぉ」



「あぁああああ」



騒然とする校内



「武ちゃん そっち駄目 そっちには行っちゃ駄目だってばぁ」



逃げ惑う生徒達はひしめき、廊下で衝突する者、転げる者、泣く者



「職員室もやばい、図書室も体育館もやばいらしい」



「ならどこが安全なんだよ」



「そうだよ何処に逃げればいいんだよ?」



「知らねぇーよそんなん俺に聞くな」



「おい なんか屋上が安全らしいぞ」



そして、廊下へ倒れて絶命する者まで2人は目にした。



「みんな屋上に逃げてるらしい 俺等も行くぞ」



「鎌っちは何処行った?」



「分からん… はぐれた もう探すのは無理だろ」



「ざけんなよ てめぇー ここ開けろぉぉ」



「誰かぁぁ 春ちゃんを助けてぇぇぇ」



算を乱した生徒達の怒号や疾呼が校内、所狭しと叫ばれ



校内は完全に混乱状態へと陥っていた。



左右振り返る2人が玄関へと逃げる生徒達を目にした時だ



出会い頭に続々と奴等が現れ、襲われ、捕まり、押し倒されていった。



「わぁあああああ」「きぁぁあああああああああああああああ」



踵を返し、慌てて引き返す生徒達を追いかけ、次々と奴等が校舎内へと侵入して来た。



長い廊下の先から血に染まる奴等が無数の集団となって走ってやって来る。



そして、逃げる生徒達を背後からしがみつき、獲物を捕獲するやそのまま押し倒し、一斉に群れで襲いかかる奴等の姿



由美「あっちは駄目だ こっちから行こー」



行き交う生徒達に混ざり更衣室を目指す2人



更衣室は1号棟校舎4階の一番右端に位置する。



また校舎内には左右に1つ、中央に1つと計3箇所の階段があり、現在由美達は右階段と中央階段の丁度真ん中辺りに位置していた。



右の階段は正面玄関から侵入した多数の奴等によって近づけ無い…



由美と結香は中央階段から上を目指す。



入り乱れる廊下



テンパる生徒達



慌てふためく表情は誰しも恐怖で強張り



更に騒擾(そうじょう)していった。



2人が中央階段前に着くと、上り下りする生徒達でごったがえし行き詰まっているのを確認。



「早く上がれよ」



「何やってんだよ早く上がれよ」



「つっかえてるんで早く下りてください」



「キャャャー 来たぁー早く下りてぇぇぇ」



2階から喚声があがり



渋滞する階段を見た由美、結香はこのルートを即時に諦めた。



由美「左の階段を使おう」



廊下を直進して別の階段へ進む2人に美術室の開かれた扉から中が見えた。



チラッと結香が視線を向けるや



そこには仰向けで横たわる男子生徒の遺体



頬がかじり取られ、頬骨と一部の歯茎が剥き出しになるその遺体に結香は目を背け、その場を通過した。



後方では次々と奴等の餌食になっていく生徒達



噛まれたであろう負傷する腕を抑えながら2人とすれ違う男子生徒



頭から血を流す女子生徒が2人を追い越し先の階段を上がって行く



そして、2人が左階段へ辿り着く直前に



何人かの生徒が階段を下って、飛び出してくるや、廊下で2人とすれ違い通り過ぎて行った。



そっちは行っちゃ駄目…



そのまま逃げて行く生徒の背後へ目を向けた由美



このまま進めばあの数人の生徒達は…



向かって来る奴等と接触してしまう…



もう無事では済まないだろう…



中央階段と違ってやけに空いてる階段



由美は歯を食いしばり、目を瞑りながら階段を上がって行った。



一段抜かしで階段を駆け上がる2人。



2階も騒然とし、あちこちから男女のいろんな種類の声が飛び交っている。



ガシャャャーン



「ぁぁぁあー」



教室のガラスが破れ、落下する生徒を決定的瞬間で目撃した由美はまた目を瞑り、上へと駆け上がった。



3階も同様に凌乱している。



教室に急いで机や椅子でバリケードを作る生徒達を目にした。



2人は更に階段を駆け上がり4階へと到着



辺りに脇目も振らず直進する2人



全てが散乱する教室を通り過ぎ、中央階段を通り過ぎる途中に



2人は階段の踊場で死した女子生徒に群がる4体の感染者を目にした。



腹から掻き出され内臓を貪るその光景に



吐き気を覚えた由美は口を手で覆った。



そして、女子更衣室へ辿り着いた2人は飛びつく様にドアノブを掴み回した。



だが 中から鍵が掛けられている…



中に入れ無い…



由美「うそでしょ…」



結香「開けてぇー」



ドンドンと扉を叩きながら、中央階段へ視線を向けた結香。



由美はドアノブをガチャガチャ捻りながは結香と共に叫んだ



由美「開けてぇー 中に入れてぇー」



中から返答は無い…



ドンドン



結香「早く開けてよー」



結香の向ける視線の先に…



中央階段から感染者が1体姿を現した。



踊場で肉を貪ってた奴だ



結香「きぁぁー 来たぁー 開けて開けてー」



由美も感染者を確認するやバンバン扉を叩きつけた



由美「お願いします!中にいるんでしょ?誰か開けて下さい」



声に反応し2人の存在に気づいた感染者は結香と目を合わせた。



結香「ひぃぃぃー 嫌だぁー」



必死に扉を叩く2人に感染者が首をひしゃげた後



走りだした



その時だ



更衣室の鍵が開き、扉が開かれた。



「早く入って」



1人の女子生徒が姿を現し



由美と結香は飛び込む様に更衣室へと入っていった。

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