第119話 警笛

翌朝 7時00分



ピーピー ピーピー ピーピー ピーピー



携帯のアラームが鳴り響き、由美が目を覚ました。



ん… ねむい…



ピーピー ピーピー



手探りで鳴り響く携帯を掴み、由美は寝ぼけまなこでアラームを止めた。



ベッドから上半身をムクッと起き上がらせ、あくびをしながら両腕を広げ、筋を伸ばすと差し込む朝日の光に目を細めた。



すると



「由美~ 起きなさい~」



階段下から聞こえてくる母親の声



由美「はぁーい もう起きてるー」



由美は目を擦りながら起き上がり、学校へ行く支度を始めた。



あれからママのお店は、あれよあれよと、続々に客が来店、静かだった店が一転、急激に慌ただしく



忙しくなったスタイリッシュに…



由美は邪魔にならぬ様、すぐに店をおいとました。



由美は制服に着替えながらスタイルへlineを入れる。



姉さん昨日は久しぶりに会えて嬉しかった OJご馳走様ね またすぐに家族みんなで遊びに行くね



それからパパンと弟にもちゃんと伝えておきまーす



じゃあ私はこれから学校へレッツラ ゴーゴゴー 



素早く文を入力、送信ボタンを押し、急いで支度に取り掛かった。



そして、制服へ着替え下へ降りた由美は朝食を取る為席に着いた。



「おはよう由美 パンは何枚?ジャムにする?ピーナッツ?」



由美「おはよー 2枚共ジャム」



由美の母親が軽く頷くとトースターで焼けた食パンにマーガリンを塗り、ジャムを塗る



由美の正面には既に父親が座っていた。ワイシャツにネクタイを締め、新聞を広げながらサラダを食べる父親の姿



由美「おはよー」



「おはよう」



由美「ねぇ 今度出張は?」



「いや無いよ もう1カ月先までは無いなぁ」



新聞紙をめくりながらコーヒーを飲む父親



由美「そう 私、昨日姉さんの所へ行ってきたの」



父親は新聞を読むのを中断し、新聞紙から顔を覗かせた。



「ほぉ~そうかぁー そう言えばここの所忙しくて、久しくあの店行ってないなぁー」



母が由美の前に出来あがった食パンを置いた。



「何飲む?」



由美「牛乳」



冷蔵庫を開き頷く母親



由美「姉さんから伝言頼まれて、たまには店に顔出せだってさぁ」



何度も軽く頷く父親が新聞紙を閉じると



「そうだなぁー 最近行ってないし 行かないとなぁ なぁ母さん 近い内あのお店行くかぁ?」



「あら いいわねぇー ママ元気にしてた?」



母親が牛乳を由美に手渡した。



由美「うん 元気元気 あれ たーは?」



「たー ならとっくに学校行ったわよ あんたも早く食べて行きなさい」



由美「うん」



そして、ジャムのついた食パンへかじりつき、そそくさと朝食をとる由美…



そして…ものの数分で食事を終え、準備を終えた由美



由美「いってきまぁーす」



「はい 気をつけて 行ってらっしゃい」



玄関を開けた途端



遠方で3つも4つものサイレン音が聞こえてきた。



由美は特に気に留める事無く扉を閉め、学校へと徒歩で向かった。



由美の通う公立の学校は家から歩いて15分の所



自転車を使えば楽なのだが、由美は敢えて徒歩で通学していた。



携帯のアプリを開き、ゲームをしながら早歩きで学校に向かった。



ウィィィィィィン



少し離れた大通りからまたもパトカーのサイレンが鳴り響く



緊急なのだろうか?拡声器で何やら言ってるのだが内容までは聞き取れ無い



意識などしてない由美はアプリをいじりながらひたすら足早に学校を目指している。



すると



ウィィィィィィ ピーポー ピーポー



先程の大通りにまたもパトカーのサイレン音、遠くから救急車のサイレン音が聞こえてきた。



遠のいて行くサイレン音…すると今度は…



あらゆる方向からサイレン音が聞こえてきた。



これには流石の由美も反応を示し、顔を上げ、耳を澄ました。



6つ?



なんか… 今日はやけにうるさいなぁ…



だが、再び携帯画面へ目を戻した由美はゲームへと夢中になる。



早朝から鳴り響くサイレン音が次第に数を増し始めた…



ひたすら前進する由美が



丁度半分辺りまで来た時だ



突如 クラクションの音が鳴り響き、由美がその音に振り向くと、十字路の右方2~300メートル先で、男が一通の道のド真ん中で空を見上げてぼぉーと突っ立っていた。



クラクションの長押しで鳴らされても、退くこと無くただ茫然と空を見上げている変な男



由美はそのまま直進、通り過ぎ、ゲームを再開しながらひたすら学校を目指した。



画面を見ながら小声で「あっちゃーしくったぁ ムズいなぁ」



ふと携帯の時計を見ると



ヤバい このままじゃ遅刻しちゃう…



由美はアプリゲームを中断、携帯を仕舞った時だ



「おはよー 由美ー」



後ろを振り返ると自転車に乗る久恵が現れた。



由美「あ 久恵 おはよ」



久恵「ねぇ なんか向こうで変な奴いたよ なんか独り言言いながらシャッターに頭ガンガンぶつけてんの… すげぇキモかった」



由美「へぇー そうなんだ ヤバ」



久恵「それより由美、今日暇?結香は今日バイトらしいんだけど…あんたは?」



由美「うん 私は大丈夫だけど なんで?」



久恵「ちょっと新宿に買い物行きたいのぉー 付き合って欲しくってー」



由美はオッケーサインを出しながら



由美「オッケェー いいよぉ」



久恵「サンキュウ」



するとまた



近くからサイレン音が響き渡ってきた。



2人はその音に反応し、音のする方向へ振り向くと、前方の道を1台の救急車がハイスピードで横切って行った。



久恵「ねぇ… なんか… 今日 やけにパトカーとか救急車多くねぇ?」



由美「うん… どっかで大きな事故でもあったのかな?」



首をかしげる2人



久恵「あ ヤバ 後10分で遅刻だぁ 由美 走れ」



2人は急いで学校へと向かった。



学校へ近づくに連れ、同じ制服を着た走る生徒達の姿がチラホラ



皆、同様に急いでいる。



由美は走り久恵は自転車で校門を通って学校へと到着した。



由美は玄関前で駐輪場に自転車を置く久恵を待ち、他の急ぐ生徒に混じりながら下駄箱にて上履きに履き替え、階段をダッシュした。



2年A組の教室は、校舎3階、廊下の一番奥



由美も久恵も階段を一段抜かしで駆け上がり



走っちゃ駄目の廊下をBダッシュで走り抜け、何とか遅刻は免れ、到着



由美「ふ~ セーフ セーフ おはよー」



「おはよ~」



同級生等に挨拶しながら自分の席へと向かう由美



由美の席は1番窓際の前から2番目の席



由美が席へ着くと既に斜め後ろの席へ着席する結香が



結香「あぶねぇーなぁー 2人して おはよ」



由美は2人とは少し離れた席へつく久恵を目にした後 結香へ



由美「おはよ結香 ふぅー 冷や汗もんだったよ」



その数秒後に担任の教師が教室へとやってきた。



教師が教壇に立つと同時に



号令がかかった「起立」



教室にいる全生徒がその号令で立ち上がり



「礼 おはようございまぁす」



その後、生徒一同が唱和した。



「着席」



教師は頷くや「おはよう でわホームルームを始める… その前に…おまえ等もみんな知ってると思うが最近不審者による通り魔事件が続発している… 他校だが 下校中に被害にあう生徒が頻繁している くれぐれも下校の際は… なるべく複数で帰るように 特に人気の少ない夜道は避け、十分気をつけるように おし じゃあ出席とるぞ 相沢」



「はい」



「石川」 



「はい」



「飯田」



「はい…」



「上野…」



1日の始まり…



だが…今日からは違う…



今日…この日から…



新しい地獄の様な日々が始まる…



1年D組の教室に…手に噛み跡がくっきり残る1人の男子生徒の姿…



また…3年A組のクラスにもうなじに噛まれた形跡のある女子生徒…



遅刻し校庭を走る男子生徒の制服のズボンは破け、太股から噛まれたらしき形跡、血が出ている…



数時間後に…



感染者が学校を襲う…



由美へこれより恐怖が襲いかかる

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