第82話 昏睡

3階 建設業オフィス



噛まれた江藤…



運ぶ最中も全く反応を示さない昏睡状態な江藤を目にしながらハサウェイは脳内を巡らした。



こいつの体内に感染したのは 卵なのか…?幼虫なのか…?



今頃… 蝕まれてるだろう江藤の体内…



まだはっきりと断定されてない何者かがこの身を支配する為、江藤の体内を…血管を小旅行しているのだろう…



発症は早くても1~2時間



いや 時間なんて正直あてにはならない…



もう既に目的地に到達し、支配されてしまったかもしれない…



江藤は目を覚ました途端感染者に変身する恐れがある。



未だ気を失う江藤がハサウェイ、エレナ、純やの3人によってオフィスへと運ばれた。



ハサウェイ「そこに置こう ソッと寝かして」



3人は柱の前に江藤をゆっくりと下ろした。



由美「倉庫にありました このロープで大丈夫ですかね?」



由美が手にするのはトラロープ



ハサウェイ「あぁ これなら頑丈そうだ すぐにこいつを縛ろう 手首、足首、口を念入りに縛って、この柱にくくるよ」



ハサウェイの掛け声で4人は一斉に江藤の緊縛に取り掛かった。



純やが手首を、ハサウェイが足首を縛り始め



エレナと由美は同タイプのロープを使用して江藤の口を猿ぐつわで縛り、塞いだ?



まだ何も知らぬスタイル、中村、山本が部屋に駆け付けると仲間を縛りあげる4人に…その光景に驚いた



スタイル「え? ちょっとどうしたの?あんた達何やってんの?」



純や「怪力でロープを引きちぎられないですかね?」



ハサウェイ「それは大丈夫だろ」



スタイル「ちょっと 何で江藤さんを縛ってるの?」



由美「姉さんはちょっと黙ってて」



スタイル「はぁ?」



エレナ「これで大丈夫 これなら絶対解けないし、誰も噛みつけない」



純やが江藤の胴体へロープを回し、柱にくくりつけ、きつく縛りあげた。



純や「よし 捕縛完了 目を覚ましてもこれなら大丈夫だね」



4人が江藤を目にしていると背後からスタイルが迫った。



スタイル「ちょっと ちゃんと説明しなさいよ」



中村「えぇ どうゆう事ですか? 何故仲間を…?」



ハサウェイ等が3人へと振り返り、今までの事柄を説明した。



渋谷組の警備室襲撃から始まり、羽月の死、葛籐の死、羽月のゾンビ化、そして…ゾンビ化した羽月に江藤が噛まれた事など



全てが伝えられた。



それを聞きショックを受ける山本



山本「死んだんですか… 羽月さんが殺された…」



目を閉じる中村「…」



スタイルもショックで顔色が一変する。



スタイル「嘘でしょ… あの葛籐さんが死んだの…」



ハサウェイから告げられた話しにショックを隠しきれない3人



エレナ「江藤さんは脱出の際に連れて帰ります。それまで大人しくして貰う為に縛ったの」



動揺するスタイル「うん… 分かったわ それより何で江藤さんの意識は無いの?」



純や「交戦中に奴等の不意打ちを受けて…スタンガンを食らったんだ…それで気絶した」



その時 ハサウェイにふとある疑問が生じた。



ハサウェイ「なぁ 純や!スタンガンを受けてから…こいつどのくらい気を失ってるんだ?」



純や「う~ん 失ってからかれこれ30分は経過してると思うんですが…なんでです?」



ハサウェイ「なぁ こいつ…本当にただの気絶なのか…?俺にはどうみても昏睡状態に陥ってる様に見えるんだが」



エレナ「え?」



確かに… そう言われてみれば… 運んでる際も…死人の様に全く反応が無い



エレナも江藤を見詰めながら何かおかしいと感じ始めた。



そして、エレナの脳裏に…



純やが江藤に近づき胸に耳を当てた



純や「心臓の鼓動はあります 脈もあるし死んではないのは確か… 息もしてるし ただ普通に気絶してるだけだと思いますけどね」



ハサウェイ「そうか… そうならいいんだが…」



その時



エレナがハサウェイの腕を掴むや連れ出した「ちょっと来て」



そして廊下へと連れ出し



ハサウェイ「どうした?」



エレナ「ねぇ 確かに私も江藤さんの様子はおかしいと思うの 私もスタンガンを受けて気を失ったじゃない だから分かるの ホントならもうとっくに目を覚ましててもイイ頃 なのにまだ目を覚まさないなんて あれは絶対に昏睡状態だよ」



ハサウェイ「あぁ 感染が原因で昏睡状態に陥ったのかもしれない… でもよく考えたらこのまま寝てくれてた方が俺等とっては好都合だろ」



エレナ「うん… まぁ そうなんだけど なんか嫌な感じ」



浮かない顔のエレナ



ハサウェイ「どうした?」



エレナ「うん… なんだかとっても嫌な予感がするの」



ハサウェイ「そうか… でも心配するな とりあえずあいつが感染者になろうと縛ったんだから大丈夫だよ…」



エレナ「うん… そうね…」



それでも浮かないエレナ



ハサウェイ「なんだよ?わざわざ廊下に連れ出すくらいだ どうした?何かあるんだろ…言ってみなよ」



エレナ「うん…あのね…私…3つのある事をずっと考えてたの 1つ目はさっき話した奴等の正体は何なのかって事、2つ目は奴等の目的は何なのかって事、そして3つ目は特異感染者になる要因は何なのか?って事なの」



ハサウェイ「…」



エレナ「この3つ目の事で なんだか急に嫌な予感がしてきて…」



ハサウェイ「まさか…つまり昏睡から覚めて江藤が特異感染者になるって言いたいのか?」



エレナ「何とも言えないんだけど…前に感染者に変貌する様を見たことあるでしょ あれをみる限りでは変身経過では活発化してたと思うの 昏睡に陥るなんて… 普段と違うと言うか… なんか変だよ」



ハサウェイ「それは起きてた状態だったからなんじゃないか 意識の有無と特異感染者は関係ない」



エレナ「確かにそうなんだけど…私が気になるのは昏睡状態になってるって所…分からないけど…でも…縛ってる時に急に胸騒ぎがしてきたの…」



微かに震える身体をさするエレナに



ハサウェイがエレナの手を握ろうとした時だ



ドカッ ボン ドン



突如、奥の非常扉から打撃音が聞こえてきた。



エレナ「え?なに?」



2人は物音へ向かう。



それはハンマーでおもいっきり打ちつけてるかの様な強烈な打撃音



それが廊下へと響いた。



そして2人は奥にある非常扉を見るや、扉に無数のボコみが生じていた。



バコン



再び外から何者かが扉を殴りつけた。



その度、扉にパンチの跡が生じる。



エレナが素早く拳銃を取り出した。



エレナ「一体何なの?」



ハサウェイもアーチェリー弓を広げ矢を取り出すやセットアップした。



ハサウェイ「分からない… だが人間以外の何かは100パーだろ」



バコン



大きな打撃音を響かせ、ケタ違いなそのパワーによってとうとうちょうつがいがぶっ壊れ、扉が外れてしまった。



そしてドアが外れた先から人外なる者が姿を現す。



「グルゥゥゥゥ」



2人の目に飛び込む、異様な者の姿



ハサウェイ「なんだあいつ…?」



エレナは言葉を失った。



四足歩行する感染者



その感染者の顔中に異常なまでの血管が浮かびあがり



そして…背中から異様な3本の物体を伸ばしていた…



ユラユラさせるそれを見たハサウェイが口にする



ハサウェイ「触手…?」



「グルゥゥゥ」



獣地味た声を震わせ、感染者がエレナ等を視覚で捉えるや



「オんな… み…つけぇ…た」

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