第63話 逆転

今… 扉を隔てたその先で戦闘が行われている…



扉に耳を付けたスタイル



「芹沢…」



芹沢…??



私がいない間に… 何がどうなってるの?由美は…?純やは? 江藤、葛藤は…?



発砲音を聞きつけ、中村と山本もやってきた。



中村「今の音は?」



中村が扉を開けようとするや



スタイル「開けちゃ駄目 外でハサウェイとエレナちゃんが戦ってるわ 私達みんなを守る為に…」



3階廊下



ハサウェイ、エレナvs特異感染者vs芹沢



奇麗な断面の右腕が床に転がった。



まばたき一つしない無情調かつ無表情な特異者が芹沢を振り返り、目にする



さっきまで皆が隠れていた部屋を覗き込む芹沢



いないか… フン まぁいい…



そしてハサウェイ、エレナに視線を向け…



特異者に目を向けた。



特異者は盾にする死体をいきなり投げ捨て、落ちた己の右腕を拾い上げた。



エレナ「…」



背を向ける特異者



死体の盾が無くなり、弱点の頭部がさらけだされた。



チャンス!



エレナはすかさず特異感染者の後頭部に照準を合わせ



発砲しようとした石火の間に



ハサウェイ「待て エレナ」



ハサウェイがエレナの眼前を手で遮り、制止させた。



ハサウェイ「撃つのを待て」



エレナ「なんで? 今チャンスよ…」



ハサウェイは小声で



ハサウェイ「いいから」



なんでよ…? 今が絶好チャンスなのに…



エレナはしぶしぶ拳銃を下ろし、ハサウェイの指示に従った。



ハサウェイは代わりに弓を取り、先程の矢をセットアップするや特異者、芹沢に向け構えた。



特異者は切断された右腕をくっつけようとしていた。



だが当然のごとく右腕は床に落ち



再び拾い上げてはくっつけようとする行為…



その行動を3回繰り返すと、それを見ていた芹沢が吹き出した。



芹沢「ぷぅ… ハハハハハ マジ馬鹿だぁ くっつく訳ねぇじゃん… ハハハハハ… ボンドでも探してきてやろうかぁ~ ハハハハハ」



嘲た芹沢…



自分の腕を切り落とした相手を認識したのか?



特異者が不快に大笑いする芹沢を目にし急激に目つきを変えた。



不自然な眼球運動が止まった。



そして突如



特異感染者の標的がエレナ、ハサウェイからいきなり芹沢へと転換



「おレ… の… ゥデ…う… を… おでの…」



ハサウェイ「よし やっぱり思った通り ターゲットがあいつに向いた… エレナ!奴がまた例の武器を使うぞ しっかり観察するんだ」



特異者が右腕のくっつけを諦めたのか? それを投げ捨て、盾に使用していた死体を掴み上げ、芹沢に向かって行った。



芹沢は左手で顔を覆い、大笑いしながら右手を感染者に向けた。



芹沢「…っとに笑える… 馬鹿で低脳なおまえら見てて愉快だわ じゃあこれならどうよ…」



芹沢が不可思議に手首を動かし、スナップを加えるや球体から糸が直線的に飛び出した。



そして糸が特異者の左腕へと巻き付いた。



ハサウェイはそれを目にし驚きの表情を浮かべる。



あの糸… なんだあれは…?



すると



芹沢「せぃ」



芹沢が掛け声と共に球体を揺さぶり、また糸を引き寄せ、引っ張った。



次の瞬間



特異者の左腕がスパッと輪切られ、切り落とされた。



なんて切れ味か…



死体の足首を掴む左腕が床に落ちた。



芹沢は引き寄せた糸をそのままアンダースローでリリース



特異者の足目掛け投糸した。



半月を描いた糸はまるでレーザーのように



特異者の両脚を…



膝下からぶった斬った。



ハサウェイ、エレナはその光景に目を見開かせる



ありえないキレ味



触れただけで簡単に脚が切られたのだから…



四肢全てを切断された特異者の胴体が前方に倒れ



ハサウェイ、エレナは芹沢の異様な武器に絶句した。



なんだあの糸は…??



真剣の日本刀、青竜刀、西洋の大剣じゃあるまいし…



骨まで簡単に切断する糸…



手足の防御は不能な糸…



拳銃より厄介な武器だ…



芹沢は笑いながら



芹沢「ハッハハハハ さぁどうする?死に損ない イモ虫の様に這ってみなよ ハッハハハハハハハハ」



「ォれの… お… ぁれの…あれの…」



特異者が顔を上げ芹沢を見上げた。



すると その顔面を踏みつけた芹沢がエレナ、ハサウェイへ向け言葉を発した。



悪童の不適な笑み、背徳心の塊の様な挙動、屠ふる強い念を発する目つきが2人に向けられる。



芹沢「さぁ 次はおまえ達 それより俺等が行く事によく気づいたね… 教えなよ そこの奴等を何処に隠したの?」



ハサウェイ「誰が教えるか」



エレナ「それを聞いてどうするの?」



すると ノーモーションから糸が噴射された。



ハサウェイの左手首に鋼糸が巻き付かれる



くっ… しまった… 早過ぎる…



エレナは咄嗟に拳銃を芹沢に向けた。



ハサウェイは手首に巻きつく糸を目にした。



まだ切り落とされてない…



ただ巻き付けられただけの糸



どうゆう仕掛けだ…?



巻き付いただけならただの糸なのか…?



あの球体に何か仕掛けが…



あいつをどうにかすると切れるのか…?



ハサウェイは思考を張り巡らせ、もう1動作加える事であのキレ味を生み出す事を知り得た。



芹沢はそっと球体に手を添え



芹沢「質問してんのはこっちだから 人の話しはちゃんと聞かないと…オ○ニー出来なくなるよ っでそこにいた獲物達を何処に隠したわけ?」



エレナ「だからそれを聞いてどうするの? それよりその人の手首を切り落としてみなさい… ここにある全ての弾をあんたの額に撃ち込んでやるから」



芹沢「大人男子のオモチャのクセして威勢がいいね なら質問を変えよう 龍谷を殺したのはおまえなのか?」



エレナは鋭い目つきで「えぇ… そうよ 当たり前じゃない… あんなゲスオ窓から突き落としてやったわよ」



芹沢「ふ… はは… 中々面白いジョークだ 嘘がヘタだね んな訳ないだろ あいつが女なんかに殺される訳ない… おまえなんだろ?」



芹沢がハサウェイに視線を向けた。



ハサウェイ「だとしたら?」



芹沢は悪魔の様な狂気漲る目つきにかわり



芹沢「今ここで… 女の目の前で見分けがつかないくらいにバラバラにバラしてやる」



エレナ「芹沢 いい事 私達 もうその武器の事はリサーチ済みよ 無理なんだから止めときなさい この人をバラバラにする前に私が蜂の巣にしてやるんだから」



芹沢「蜂の巣か ほ~言うねー キラー君からの命令でこのビルにいるやつは皆殺し おまえとJKだけは生かしておくよう言われてるんだ…」



エレナ「…」



芹沢「ここのアホみたいに手足切り落として、舌も抜き取れってさ… その後どうなるかおまえに分かる?想像して見ろよ… 犯されまくる地獄の日々を… 性処理道具があまり粋がんなよ どうせそんな拳銃なんてろくに扱えないクセに おまえはこれから死ぬより辛い地獄を見…」



パァン



芹沢の耳を…わずか2センチ横を掠め、銃弾が通り過ぎた。



芹沢の耳にそよぐ風圧



エレナ「あんたこそ… 私を舐めて貰っちゃ困りますね 私の身体をバラバラにする前にあんたは蜂の巣だって言った筈よ ちなみに今のは後ろのシミを撃ったんだから…」



芹沢が振り返り扉を目にすると



確かに扉の黒いシミに銃痕が見えた。



まじか…?



芹沢が2人に視線を戻す寸前に…



薬室に入る1発の弾丸の無煙火薬に… 雷管に激針が突かれ着火



発生する強力なガス圧力により薬莢から弾丸が高速で発射



乾いた風切り音と共に



球体から伸びる糸が撃ち抜かれた。



しまった…



芹沢は素早く1歩後退



ハサウェイは糸が巻き付いた腕で洋弓を素早く身構えた。



ハサウェイ「流石やるな 助かった」



エレナ「さぁ 芹沢さん 観念なさい」



ハサウェイ「芹沢 鍵はどこだ? よこせ」



エレナ「もうあんたの負けよ 素直に渡しなさい」



芹沢は目を瞑り、首を動かしながら笑い始めた。



芹沢「ふ…ふふ…」



形勢逆転した今…



追い込まれた芹沢が不適な笑みを浮かべている。


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