第42話 戴天

10時40分 会員制美容エステ



窓から吹き込む風に髪が揺らぎ、エレナが目を覚ました。



ぼんやりした瞳に映る天井…



遮光カーテンがそよぐ度、入り込む陽光がエレナの顔を照らした。



ここは…



すると



途端に爆音に近いボリュームが上げられ洋楽のラップがエレナの耳に流れ込んできた。



え…?



エレナが顔を上げ辺りを見渡すとアジアンテイストな見知らぬ部屋にいる事に気づいた。



何処…?



身体中少し痺れる…



遮光カーテンにより、部屋は薄暗いが入り込む日の光で十分に視界が確保される中



ここは何処…? それに五月蝿い…



なに…



そういえば… あの時急に身体中に電気が流れて…



それから意識を無くした…



その瞬間



ガシャ!



両腕の自由が奪われていた…



え? なに…?



エレナが視線を向けると、両腕共に手錠が嵌められベッドに固定されていた。



それともう一つ



気づけば全ての着衣が脱がされ、全裸な姿でベッドに寝かされている事に気が付いた。



裸…??



ベッドの横に視線を向けるや小さな丸テーブルの上には脱がされた衣服と拳銃が置かれている。



エレナはベッドの上でもがくが手錠で拘束され身動きが取れない…



それから、ふと窓際を見た時だ



エレナの視線の先に、あの男の後ろ姿が目に入った。



窓際に置かれたテーブルに両手を付け、外を眺める素っ裸な男



背中、腕にはビッシリと刺青が入れられ



爆音の中、ボリュームを少し絞ると暴れる気配や手錠の擦れる音に気づき、こっちへ振り向いた男



スキンヘッドに顎髭をたくわえ、細身ながら鍛え抜かれかた胸筋、腹筋!胸部にも梵字のタトゥーが施されている。



エレナはそいつの顔を目にし、一瞬にして表情を引きつらせた…



大っ嫌いな男、憎々しいこの顔、殺してやりたい相手



エレナの前にあの龍谷が立っていたのだ



龍谷の目は少々血走り、尋常で無い様子が一目で伺えた。



けだものの目だ



龍谷は再びボリュームを上げるや舐め回す様にエレナの裸を見下ろした。



エレナはキリッと目つきを変え口にする。



エレナ「何よこれ なんで私裸なの この手錠を外しなさいよ」



すると 龍谷が短兵急にエレナに跨がり、四つん這いで迫りながら顔を近づけてきた。



龍谷「目覚めたか」



耳に吐息がかかり悪寒が走るエレナ



またエレナの胸を弄りながら、頬をまるでアイスクリームでも舐めるように、嫌らしい舌使いでひと舐めしてきた。



エレナはパーソナルエリアに侵入され、嫌悪感と悪寒で全身鳥肌が立つと共に怒りが込みあげてきた。



エレナ「何、勝手に触ってんだよ」



そして四つん這いな龍谷のぶら下がるいちもつに強烈な膝をヒットさせた。



どんな屈強な男でも一瞬にして悶絶、行動不能にする急所



だが 龍谷は顔色一つ変えず…



むしろ勃起し硬くなっていった。



嘘でしょ…? 



クリーンヒットさせた筈なのに…



龍谷は再度エレナの耳元で囁きかける様に口にした。



龍谷「効かねぇーなぁ~ そんなの… 大概女はみんなおんなじ事するんだよなぁ」



エレナの顔が一瞬にして青ざめた



龍谷は更にエレナの耳元で「俺は、今まで500以上の女を拉致ってはあいつらとマワしてきた。 こっちは鍛え抜かれてんだよ」



自らのいちもつを握り締め、自慢気に揺らす龍谷



龍谷「なぁ こうゆう時 女は2種類に別れんだよ おまえみたいに勝ち気で暴れる女か怯えて泣きながら観念する女…」



エレナ「…」



龍谷はイカれた目つきで笑いながら「おまえはどっちだ?」



エレナの乳首をつまみながら顔を近づけてきた龍谷にエレナは顔をそむけた。



龍谷「ちなみに俺は前者の女じゃねえとなかなかイカね~から 激しく抵抗してくれな」



エレナは生唾を飲んだ。



腕は手錠で繋がれ逃げるのは不可能…



こいつには金的も効かない…



絶対絶命なピンチにエレナの脳裏を掠めたもの…



こんな奴に身体を許すぐらいなら舌噛んで死んだ方がまし…



自決の文字だ



だが… それと同時にふと浮かび上がったもの…



もし漫画やアニメのようにこの世にヒーローがいたとしたら



こんなピンチの時に… 颯爽と現れ助けてくれるもの



ヒーローなら叫べばきっと助けに来てくれる



私が… 今叫んだら来てくれるかな?



心の中で叫んだら誰が助けに来てくれるのかな?



もし助けに来てくれるとしたら…



もう あの人の顔しか思い浮かばない…



優しくて、格好良くて、強い人… 



私にとってのヒーローはあの人しか浮かばないよ…



そう ハサウェイしか…



ハサウェイ…



助けて…



エレナは頭の中で強くハサウェイを思い… そして願った。



だが 突如



パチン



エレナの頬がいきなりひっぱたかれた。



強烈な平手打ちがなされたのだ



僅かなエレナの思いや願いを消し飛ばす邪気の籠もった一発



エレナは龍谷を睨み付けた。



エレナ「女を力づくで物にしようなんてモテない男の証拠ね い~い 私はあんたに何されたって絶対に正気だけは失わないんだから… あんた達になんか絶対に負けないんだから」



龍谷が馬乗りになり見下ろしていると両手をつき顔を近づけた



龍谷「よしよし いい顔だ じゃあそんな気丈で今後ずっと頼むぜ 何日も…何ヶ月先までそんな感じで頼むからな… あぁ~ 考えたら興奮してきた おかげでカチコチのビンビンになってきたぜ  あ!そうだ!一ついいこと教えといてやる 俺の長年の経験から犯され続けると最終的に女はみんな、瞳孔開いたまま精神が先にぶっ壊れちまうんだわ まぁ そんでもって2週間以上もった女は今まで見たことなかった テメェーがその記録を更新してくれや 楽しみにしてるぜ」



鬼畜… 



こんな心から許せない人間…



こいつは心底悪に染まる悪人だ…



こんな悪い奴がなんでのさばっているのか…



この世に悪者が野放しになっている…



眼を瞑り、顔をそむけるエレナの太ももが突然強引にこじ開けられようとした。



エレナ「嫌ぁ~~~ やめろ変態」



物凄い叫び声をあげ必死に抵抗するも龍谷の腕力の前にエレナの太ももは開かれ陰部がさらけ出された。



龍谷は嫌がり、必死に抵抗するさまを見て更に興奮を高めている



嫌……



こんな奴に犯(やら)れるくらいなら…



いっそ舌噛んで死んだ方がまし…



龍谷が自分のいちもつを握り、エレナの陰部に挿入しようとしていた。



龍谷「あがけ 暴れろ ハハハハ」



エレナが死の覚悟を決めた



その時だ



エレナがふと目にした先に…



薄暗い部屋の中、揺れるカーテンの前に男が立っているのを…



目にした。



揺らいだ隙間から日の光に照らされた1人の男の姿



腰にロープが巻かれそのロープは窓に通じ上へとのびていた



その腰に巻かれたロープを静かに外し



光に照らされたハサウェイが立っていた。



一瞬錯覚かと思われたが間違いない



ハサウェイだ



嘘… 本当に…



エレナは見た途端目に涙が溢れてきた。



ハサウェイは静かに歩み、コンポから流れる音量をMAXまであげた。



急に大音量に変わり、流れるラップに龍谷が振り返った瞬間



バコン



龍谷の鼻筋に渾身の右回し蹴りが炸裂された。



またがる龍谷は吹き飛ばされ、オリエンタルな家具や雑貨が並ぶ木製の棚に激突、棚が倒れ、たちまち下敷きにされた。



エレナ「ハ……ハサウェイ」



全裸でベッドにくくりつけられたエレナを見下ろすハサウェイが口を開いた



ハサウェイ「何かされたか?」



エレナ「ううん ギリギリセーフ」



私の願いが通じた…



涙目なエレナがハサウェイを見上げ、微笑みを浮かべた。



ハサウェイは無言で剥ぎ取られ、横に置かれたエレナの衣服を手に取るやエレナの裸にそっとそれを被せる。



そしてホッと胸を撫で下ろしエレナへ



ハサウェイ「間に合って良かった  一安心だな」



エレナ「うんうん そうだね」



漫画やアニメに勝る絶妙なタイミングで助けに来てくれた…



もしかしたらこの人本物のヒーロー?



ハサウェイは急激に鋭い目つきへと変わり、その視線を龍谷へ向けた。



ハサウェイ「エレナ 許してくれ 俺はこれから殺人を犯してしまうと思う 軽蔑するかもしれない あまりエレナには見て欲しくないんだ 出来れば終わるまで目を瞑っててくれないか」



エレナ「うん 分かった…」



ハサウェイ「悪い」



ううん… 



そこにいるのは真の悪者だよ…



やっつけて… ハサウェイ…



これより龍谷とのタイマンバトルがはじまる



ハサウェイの怒りが爆発する…

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