第27話 宣戦

目的ポイントであるエレベーター前で円の形で待機する潜入班一同、その中心に位置するハサウェイがトランシーバーを手に取り口にした。



ハサウェイ「こちら地下潜入班 潜入成功 潜入成功 待機します」



トランシーバーを一旦下ろし返信を待つのだが一向に返ってこない…



トランシーバーを再度口へ置き 



ハサウェイ「こちら地下潜入班 成功しました そっちはどうですか?」



ハサウェイは前方に位置するエレナと葛藤に眼を合わせながら待つのだが全く応答が来ない



江藤「おかしいね 壊れましたか?」



ハサウェイ「いや」



純や「地下だから電波が届きにくいとか」



ハサウェイ「…」



3度目のトライでトランシーバーを手に取ったハサウェイ



ハサウェイ「聞こえますか?応答して下さい 目的ポイントへ到着成功!そちらの状況を…」



故障か…? 音信不通に戸惑いを見せる一同



それから10秒程間が空いた後トランシーバーに返信が届いてきた。



「ガーーー 残念だけど 指揮官はもう死んじゃったよ!どうぞ!ザッ」



だが…



聞き覚えの無い男の声が届き、それはその場にいる全員の耳に届いてきた。



純や「故障じゃなか…」



よしたか「誰?」



ハサウェイ「あなたは誰です?おおますさんは?」



「ジッ あぁ 俺?俺は芹沢って言います。おおますさんて方は既に亡くなりましたよ ガガッ」



何の冗談だ…?



一同まだのみこめないでいた。



純や「え?何?おおますさんが亡くなったってどうゆう事?」



突然トランシーバー越からおおますの訃報が告げられ



何を言ってる…?



聞き違えたのか…



あまりに唐突でやはり呑み込めていなかった。



そしてハサウェイがゆっくりした口調で問うた。



ハサウェイ「死んだってどうゆう事だ? どうして?何があった? まさか感染者に…?」



芹沢は回転式チェアーを半回転、2つの横たわる死体を見下ろし、悪童の様な無邪気な笑みを浮かべながら喋り出した。



芹沢「ん~~ ハハ いやいや感染者の餌食になった訳じゃないよ 目的地にはちゃんと到着したよ」



ハサウェイ「…」



眼鏡の奥に潜む目つきが悪魔のごとく鋭さに変わると



芹沢「じゃあ教えてあげようか… なんか邪魔臭いし、おおますと前田とか言うおっさん達には消えてもらったよ 2人諸共俺等がぶっ殺しちゃったんよ」



トランシーバー越しから口調の変化した芹沢の言葉が発声され、一同に衝撃が走った…



葛籐「はっ?」



皆みるみる青ざめていく



ハサウェイ「なんだと? おまえらがおおますさんと前田さんを殺したのか?」



芹沢「ザザッ あぁそうだよ 2人とも床に血をぶちまけて無惨な姿でくたばってるよ 今、目の前に2つの死体が転がってるから ザザ」



エレナは両手で口を覆い、目を大きく開くと拳銃を地面に落とした。



江藤は放心状態に陥る



また純やは急速に顔が真っ青になっていった。



また よしたかは前田のおっさんが死んだと聞かされ、両膝を落とし、目からは涙が…



葛藤は目を瞑り、怒りで肩が震えているが何とか堪えようと必死だった。



ハサウェイは突然の悲しみに堕ちて行く仲間を見渡し、絶望感に包まれる中、何とか踏ん張り、堪え、平気を保ち、口を開いた。



ハサウェイ「どうして? なんで殺した?最上階の生存者を共に助け出そうと…危険を承知で… 手を取り…使命の下に集まった同志の筈だろ なのになんで殺す必要がある?」



芹沢「ザザ フッ 理由が知りたいの? なら次いでに教えてあげるよ… 殺しって意外に病み付きになるの知ってるかい? 今のこの世の中…警察もいなければ…法に裁かれ、狭い檻に入れられる心配も無い それが今の無法な世界 罪の概念が消失した今は何をやってもいいんだよね 何やっても許されるこんな素晴らしい世の中になってさぁ~ そんな中今一番快感を得られるのが人を殺す事だよ じつに快感だ 凄い光悦感、充実感なんだぜ ちなみに別に俺達上の生存者を助けようなんて気サラサラ無いから 上の奴とかどうだっていいし はなから救出なんか眼中ないんだわ…」



ハサウェイ「…」



芹沢「…俺達は殺人とレイプが目的でこの遊び場にやって来たんだからさ ハハハ それだけ そこでまずは手始めに指揮官たるこの2人を始末しただけだよ 鬱陶しいから早い所退場して貰いたくてね…」



ハサウェイ「…」



芹沢は笑いながら口にした。



芹沢「…ハハハハハハ 絶望したか?そう言えばそっちに女が2人いたでしょ… 性処理肉便器の道具として使ってあげるから差し出せばおまえの命だけは助けてあげてもいいよ ザザァ」



鬼畜



その二文字しかハサウェイには浮かばなかった…



おおます、前田を殺し、エレナや由美を性処理の道具と吐き捨てた。



この場にいる者皆を嘲り、凌辱感に陥(おとしい)れた



ハサウェイ「俺を含めこの場にいる男達がそれを許すと思ってんのか? はい どうぞと簡単に2人を手渡すと思うか?」



芹沢「ザァ そうこなくっちゃ 簡単に手に入っても面白味に欠けると思ってたよ じゃあゲームをしよう じつに単純なルールでさ ザザ」



ハサウェイ「言ってみろ」



芹沢「ザァ 殺し合うんだよ そっちの野郎が全滅すれば自動的に女の子には地獄しかないね 死ぬまでハメハメ地獄が待ってる訳だ ちなみに俺達が勝てば上の生存者だって皆殺しにしちゃうからね 上の者を助けるにも、そこにいるメスを守るにも、ここを出るのにも とりあえず俺達に勝利出来なきゃって感じ どう?じつに分かり易いルールだろ ザザ」



純や「なんて奴等だ…」



芹沢はモニター画面を見ながら「ザザ そうだなぁ~ 感染者やZくん達がぎょうさんウヨウヨしてる中 俺達からも守らないといけないのはおまえ等に不利になり過ぎるから 1つだけ情報と時間をあげるよ う~ん 32と…20あたりかな! 32階と20階が手薄だよ それと今から1時間くらい時間の猶予をあげるからせいぜい最良な作戦でも立てなよ 俺からは以上だけど何か質問とかあるかな? ザァ」



ハサウェイは静かなる怒りを一言に込めた。



ハサウェイ「あぁ 聞いときたい事がある… おまえ どう死にたい?」



芹沢は下品な笑いで答えた



芹沢「ザザ ヒャハハハハハハ どう死にたいって?無理無理 死なないからその質問には答えられないな ザザァ」



トランシーバーを介し下品な芹沢の嘲笑が響くと



葛藤がハサウェイからトランシーバーを奪い取った。



葛籐「なぁ なら1つ教えてくれよ…前田のおっさんってどうやって殺されたんだ?」



芹沢「ザザザ ウヒャハハハハハ 後頭部からの華麗な銃殺だね 頭も身体もふっ跳んで眉間から血の噴出が凄かったよ まるで噴水だったね ウケたわ ザァ」



芹沢の高笑いが続く



葛藤「なるほど っで その殺した奴の名前は?」



芹沢「ザザ あ~笑い過ぎて腹が痛ぇ~~あぁ 名前? キラー君だよ ザァ」



葛藤「そうか…キラーね しっかり覚えとく」



葛籐が拳を強く握りしめた。



芹沢「ザザ 他にはある? ザザ」



エレナは怒りに変わりそれを必死に押し殺すハサウェイと葛藤の姿を目にする。



この世の中に真の悪人なんて存在しないと思っていた。



中世の魔女狩りや戦国時代の非情で野蛮だった頃に比べ、人間は学習し、時が経つにつれ未熟だった心も成長していっのだと思っている



現代に真の悪、心から許せない相手などいないんだとばかり思い込んでいた。



良心の呵責や些細な優しさぐらい…



そうそう心から腐った悪党なんて…



だけど 間違ってた…



いた…



この声の主は心など持たない悪人だ…



エレナはそう直感した。



私をエッチの玩具にするですって…?



今度はエレナが葛藤からトランシーバーを奪い取った。



エレナ「私からも1ついいですか?」



芹沢「ザァ お! ニャンニャンの声が 何? 犯される時の体位でも聞きたいの? ザァー」



エレナ「いいえ あなたのそのアソコに! 鉛弾何発喰らいたいですか?私を玩具にするですって やれるもんならやってみろ! バァーカ」



エレナはトランシーバーをハサウェイに投げ渡した。



芹沢は更に大笑いしながら



芹沢「ザザザ シャーハハハハハ 随分気の強いメス猫だね ザァ」



ハサウェイが少し間を空けたのち



ハサウェイ「違うなメス猫じゃない!メスのドーベルマンだよ」



芹沢「ザザ …で 他には? ザァーーー」



ハサウェイ「そうだな… 皆特には無いようだ じゃあ最後に俺から言わせて貰おう… おまえら…」 

                     


「相手になってやる」



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