第18話 覚醒

ハサウェイとエレナがEVへ乗り込み、扉を閉めた。



ハサウェイはトランシーバーを使用、無線のチェックを始める



ハサウェイ「2人共聞こえるか?」



江藤「ザァー 聞こえます 正常っす ザァ」



純や「ガァ こっちもOKです ガッ」



江藤は階段付近で待機、純やが留置場の鍵を鍵穴へと差し込み、準備した。



純や「ガガッ 鍵穴に差し込んだ 今から10秒後に開けます カウントダウンいきまっせ みんな!幸運を ガァ」



ハサウェイ「了解 2人共 気をつけてくれよ 頼む」



ハサウェイ、エレナはEV内部から聞き耳をたて、外の物音に神経を尖らせた。



すると純やからカウントする大きな声が聞こえてきた。



「8 7 6 5 …」



エレナ「緊張します」



ハサウェイ「リラックス リラックス」



「…4 3 2~」



そして1の掛け声と同時に鍵が回され、留置部屋の扉が開けられた。



同時に純やがスタートダッシュで駆け出した。



その2~3秒後に湧いて出てきた感染者が通路へ解き放たれ、純やの後を追いかけて来た。



純やが江藤と合流



2人はそのまま猛ダッシュで階段を駆け上がって行った。



ハサウェイ、エレナが外に聞き耳を立てていると感染者の幾体もの足音がEVを通過、階段を駆け上がっていく



ハサウェイはその間 目を瞑り 頭の中で足音の数を数えた。



純や、江藤は階段口から1階のエントランスを全力疾走



2人してチラッと後ろを振り返った。



すると 数秒後に続々現す感染者達の姿



パッと見 既にエントランスまで駆け上がってきた5~6体の姿が捉えられた。



猛スピードで迫って来る



その後も続々と奴等は追いかけてきた…



2人は正面玄関に差し掛かりガラスの扉を開くや外へと飛び出し



その閉まったドアに体をぶつけ先頭の感染者が倒れた、次に来た感染者も接触、ガラスに頭をぶつけヒビ割れる



次いで来た感染者も接触しつつドアへ体当たりし、ぶつけながら扉は開かれ、続々と感染者達も外に飛び出て来た。



ブゥゥゥウ~ン



そのかん江藤が運転席、純やが助手席へと素早く乗り込むやエンジン始動、車は急発進された。



江藤がバックミラーで、純やが後ろを振り返ると感染者達は計画通りに追いかけて来る



ハサウェイ、エレナが静まり返るEV内で身を潜めていると…



江藤「ザァァ 上手くいきました…奴等着いてきてます」



江藤からの連絡が入った。



2人から連絡が入り計画が成功した事に、2人が無事な事にエレナはホッとした。



ハサウェイ「了解 入手次第こちらから連絡する そのままどっかに待機しててくれ」



江藤「ガガッ 了解 気をつけて下さいね ガッ」



ハサウェイはエレナへ



ハサウェイ「足音は全部で18だった エレナさん行くよ 俺から離れないように」



エレナ「はい」



EVの扉が開かれ2人は奥へと進んだ。



左右の7室に閉じ込められたゾンビ共は相変わらず不気味なうめき声を発し続けている。



恐る恐るその開かれた扉に近寄り中を見ると



3体の感染者が死んだ署長の人肉を貪り食していた。



手足に食らいつき根刮ぎ引きちぎるように噛みちぎっている…



おぞまし過ぎる光景…



感染者達は食事に夢中で2人の存在にまだ気付いていない…



いつまで経っても慣れない光景



エレナは思わず目を覆い視線を背けた。



そしてハサウェイは素早く弓を構え、順々に奴等の後頭部を射抜いていった…



3体を速攻で始末し、ハサウェイが署長の体から飛び散った鮮血に染まる鍵束を拾いあげた。



ハサウェイは無線を手に取り



ハサウェイ「鍵束を取った これから保管庫へ向かう」



江藤「ザァ 了解 良かったぁ 順調に行きそうですね こっちも無事引き離しました ザザ」



ハサウェイ「あぁ また連絡する」



そして鍵を入手した2人はその場から速やかに立ち去り、地下2階保管庫を目指した。



鍵をジャラジャラ鳴らし20種類以上の鍵の中から鉄砲弾薬保管室と記すシールの貼られた鍵を4つ見つけた。



ハサウェイ「この4つだね」



2人は階段を下り、B2への下り途中、前方の射撃訓練場と書かれたプレート板を目にした。



分厚そうな扉



おそらく防音対策なのだろう… いかにも頑丈そうな扉だ



2人がその扉の前に差し掛かった時だ



ガタッ



2人から右側の奥に位置する男子トイレから突然機動隊姿の感染者が現れ、襲いかかってきた。



ハサウェイ「なっ」



不意を突かれたハサウェイ…



飛びかかってきた感染者と転倒し、床を転げた。



機動隊感染者はフルフェイスタイプのヘルメットを着用しており、噛みつこうにも噛みつけ無い



だがハサウェイは不意を突かれた為 転倒時に後頭部を強く打ちつけ、また顔面に強烈なヘッドバッドを喰らってしまった。



鼻から流血し、数回もの顎へチョーパンを受けた



床に倒れたハサウェイに馬乗りで襲いかかる機動隊感染者が何度もヘッドバットをかましてきた。



バコ  バコ



機動隊ゾンビはヘルメット内から雄叫びをあげ、大声を張り上げ、凄い力でハサウェイの首を絞めはじめる



ハサウェイ「うぐっ」



バコッ



また噛みつこうとする度、フルフェイスに阻まれはするものの強烈な頭突きの連打がハサウェイを襲い、それをモロに受け続けた。



バコ  バコン



ハサウェイ「ぶは」



度重なる顔面へのヘッドバッドで意識が朦朧となるハサウェイ



ハサウェイはどうやら脳震盪を起こしてしまったようだ



更に機動隊ゾンビが食らいつこうとした瞬間



グサッ



背後からゾンビの脊髄付近に鉈が深く食い込んだ。



それから続け様に3回鉈が振り下ろされ



ザクッ グサッ グジュ



生首入りのフルフェイスが床を転げた…



ハサウェイの意識が朦朧とする中  ゾンビが自分へ覆い被さり、倒れると共に



ぼんやりした視界に鉈を手に立ち尽くすエレナの姿を目にした。



飛び血がエレナの頬を赤く染めていた。



エレナはすぐにハサウェイを抱え上げ



エレナ「ハサウェイさん 大丈夫ですか?」



ハサウェイ「あ…ああ…ちと油断し……」



しばし呂律の回らぬハサウェイの右目は青あざで腫れ上がり、鼻は強打で折れているかもしれない…



意識もなんだかはっきりしていない…



ハサウェイ「助か…っよ…レ…ナさん」



その時だ 感染者の無数のうめき声が聞こえてきた。



さっきの機動隊ゾンビの雄叫びに呼応したのか ?



そのうめき声がこっちに近づいて来る



来る…



エレナは意識が混濁するハサウェイを抱き上げ、肩を貸し、射撃訓練場の中へと進んで行く



広々とした射撃訓練場



6箇所のレーンがあり奧には的表が釣り下げられていた。



エレナはハサウェイを引きずりながら運び、武器、弾薬保管庫を探した。



更衣室、リラックス室、喫煙所、シュミレーション室などが完備され



その並んだ部屋を横目に2人は奧へと進んで行った。



ゾンビが間近まで迫って来ている…



どうしよう…?



ハサウェイさんは…今負傷して動けない…



ハサウェイさんに頼る事は出来ない…



このままじゃ2人共襲われて死んでしまう…



私しか…いない…



やるしかない…



この人は絶対死なせたくない…



勿論私だって…



エレナはパニック状態の中、華奢な体で大の男を運びながら必死に武器保管庫を目指した。



そして 奧に保管庫らしき部屋を発見



ハサウェイを抱えたままその扉の前に立った。



ここね…



そっと扉の横にハサウェイを寝かせ、エレナは 4重にもなる鍵を次々解錠、中に入った。



庫内には拳銃ニューナンブが規則正しく番号順に並べられ下には所持者なる名札が貼られていた。


 

その真向かいには20発入り1ダースの箱がこちらも整理され大量に置かれていた。



弾は100ダース以上はある



エレナは武器庫に置かれたある黒のバッグに目を止め、全ての弾薬をそのバッグへと詰め込んで行った



外では意識の朦朧とするハサウェイがぼぉーと周りを見渡した。



ここは何処だ…? 



何が起きたんだ…?



所々意識が飛び… 一体ここが何処なのか…?



把握仕切れていない様子だ



すると 遥か先から感染者のうめき声が聞こえ、開かれたままの扉から…



感染者達が中に入ってきた。



ハサウェイは大量の感染者達をぼやけた視界に映すも…



体は動かない…



意識が微かに回復したものの…



感染者の存在を捉えるも…



ただ座って眺める事しか出来なかった。



流石にこれはアウトか…



不意にハサウェイの懐から無線トランシーバーが落ちた。



血に飢えた獰猛な感染者がハサウェイを見つけるや全速力でこっちへ向かって来る。



ハサウェイは終わりだと思った…



何とか手を伸ばし無線トランシーバーへ触れようとした



その時



突如 保管室の扉が開かれ



ハサウェイが見上げるとそこにはエレナが立っていた。



耳にはヘッドホンが装着され



エレナは重たく黒いバッグをハサウェイの隣りへと置いた。



エレナ「耳塞げますか?」



そしてそうハサウェイに告げた。



エレナは目を瞑り



深呼吸



そして目が大きく見開らかれた。



エレナの目つきが戦闘モードへと変わる。

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