第15話 奴等

新宿区 歌舞伎町警察署



ハサウェイが小型のトランシーバーを手に取った。



ハサウェイ「只今警察署に無事到着しました これから突入開始します」



おおます「‥…ザァーガッ 了解!例の大作戦が控えてるんだからな あまり無茶はするなよ、命が最優先だ いいな? ザザッ!」



ハサウェイ「了解 勿論分かってます」



作戦内容…最上階にある署長室から銃保管室用の鍵を入手、入手後地下へ向かい拳銃ニューナンブと全ての弾薬を奪取



もし鍵が無い場合破壊して奪取に挑むがゾンビの数が不明な為あくまでも命が最優先 



ハサウェイは折りたたみ式の競技用洋弓を広げ手にした。



江藤はサバイバルナイフと大きな中華包丁を手にした。



純やは金属バットを手にした。



エレナは鉈を手渡され手にした。



そして4人は武器を手に車から降りた。



エレナ「緊張します…」 



純や「正直俺も…」



正面玄関前に警視庁のマスコットピーポーくんの描かれた看板が無残に倒れ大量の血痕が付着している…



ガラス張りのドアから中を覗き込む4人



エントランスの電気は消えているが受付や経理課の電気は点けっぱなし



かれこれ数ヶ月経つというのに今だ電気が点いてるとは随分と長持ちな電球だ…



その灯りによって中の様子が見渡せた。



そして4人は受付の奥でユラユラと体を揺らし、ぼぉーと立ち尽くすおばさんらしき婦人警官のゾンビを発見した。



ハサウェイ「ここにはどうやらあの一体だけのようだ みんな奴等の噛みつきには十分注意な よし!入ろう」



当然鍵はかかっていない



ドアを開き4人が中へ入るや婦人警官ゾンビがこっちを振り返った。



婦人警官ゾンビの左側頭部から眼球、耳、首筋にかけ食いちぎられ欠損する痕



感染が脳に達する前に即ショック死したと見られる



そんな婦人警官ゾンビがエレナ達に向かって硬直した筋肉を無理やり動かし迫って来た。



「うぅぅぅぅぅ」



低く鈍い声音を発し、トロくぎこちない足取りでこちらへと向かってくる。



4人は動きからすぐにアンデッドと認識、無視してEVへと向かっていった。



純やがボタンを押しながら「EVで一気に最上階へ」



エレナが婦人警官ゾンビへ視線を向けるとゾンビは受付カウンターに体を阻まれ、こっちを見ながらも移動が出来ずにもがいていた…



人を食い殺せとインプットされし哀れで醜い操り人形 …



あんな姿にはなりたくない…



エレナはそう思い、カウンターにつかえつつ、こちらに手を伸ばしながらもがき続ける婦人警官を凝視した。



見開かれた無機質とも言える瞳…



エレナがジッと見ていると



それはまるで…



これは私の意思じゃない…



私の魂を… 楽にして…



お願いだから早く私の身体を壊して…



そう言ってるように思えた…



ひとおもいに頭を壊してあげれば…



楽にしてあげれば…



あの婦人警官の魂は浄化されるんじゃないか…



安心して天に召されるんじゃないか…



その悲痛とも言える思いと望みがふとエレナの頭を駆け抜けて行った。



江藤も婦人警官ゾンビへ視線を向けるが危険が無いと判断したのかEVの下降してくる数字へ振り返った。



ハサウェイも婦人警官ゾンビに視線を送った時だ



エレナがある頼み事をした。



エレナ「ハサウェイさん 1つお願いがあります あのおばさん苦しんでいるんです… どうか楽にしてあげてくれませんか」



どうして…??



そんな野暮ったい問いかけをする事無くハサウェイはエレナの目を見つめ、軽く頷いた。



そして婦人警官ゾンビへ向け矢をセット、構え



狙いを澄まし



シュ!



放たれた矢が額へグサリ



婦人警官ゾンビは崩れ落ち、カウンター内へと姿を消した。



それと同時にありがとう…



そう囁やき声が聞こえた気がした。



エレナ「ありがとうございました」



エレナはゾンビに対して今まで恐怖心しか抱いていなかった



怖くて… 怖くてたまらなくて…



今までずっと奴等から逃げ回る事しか考えていなかった…



この人達はゾンビに変貌し襲いかかってくるのだが



これは全てウイルスの仕業なだけ…



勝手に入り込んできて身体を自在に操られている



この人達も被害者なんだ…



この人達の魂は私達に助けを求めているに違いない…



強制かつ強引に自分の体内から追いだされ、抜かれた魂は悲痛な叫び声をあげてるに違いない…



きっと私達に早く楽にしてと訴えかけているに違いないんだ…



エレナの中で微かだが何かが変わった…



次第に奴等に対する恐怖心も和らぎ体の震えがスーッと消えていくのを感じた…



チーン



到着したエレベーター



ドアが開き4人は乗り込んだ



EVは上昇して行く



扉が開いた途端に遭遇する恐れがある。



江藤、純や、ハサウェイはいつでも攻撃に転じられる構えを取った。



チーン! そして最上階8階に到着



扉が開く



ドアの開くその隙間から生前刑事だったのだろうか!?ワイシャツの腰にバッチをつけ、血まみれでこちらを向くゾンビの姿が見えた。



江藤はドアが完全に開く間もなく飛び出し刑事ゾンビのクビにサバイバルナイフを突き刺し、振り抜いた。



ブシャャー



半円を描いた刃は頸動脈を見事に切り裂き、切られた喉から大量の血が天井や壁に飛び散った。



次いで江藤と並列する純やが既に金属バットを振りかぶっていた…



上腕筋に力が込められ、右スイングされた金属バットがゾンビの鼻筋にヒットされた。



バコ



ハサウェイとエレナから見て刑事ゾンビの頭が取れた様に思える程後ろに折れ曲がった刑事ゾンビはソッコー沈黙された。



バンバン ドンバンバン バン



通路の奥で何やらドアを激しく叩く音



3体の感染者だ



その感染者等が先程の物音に気づき振り向くや… 殴打を止め、通路を駆けだした。



L字に続く通路の奥からうめき声と共に足音が聞こえて来る…



「おぎゃ~~ うぎゃゃ~~」



2体…? いや…3体か



ハサウェイ、江藤、純やは足音からすぐに何体なのか数をはじき出した。



「痴漢は犯罪だぁ 痴漢と万引きはするなら絶対捕まらぬように行え~~」



ハサウェイ「3体だ 来るぞ」



声が近づき壁の死角から1体目の感染者が姿を現した



その瞬間



それを待ち構えていた純やが金属バットの底部で打突した。



バコ



打突をモロに受けた感染者がよろける



すると 



シュ  グサッ



閃光のような1本の矢がよろけた感染者のこめかみに突き刺された。



次いで2体目、3体目が同時に壁から姿を現したと同時に



またもそれを待ち構えていた純やが豪腕をうならせ渾身の右スイングを2体同時に喰らわせた。



バチコン



感染者2体の側頭部と顔面に堅い金属が炸裂



側頭部に入った感染者は頭を陥没させながら地面を転げ、また顔面に入った感染者も顔面が陥没し壁に叩きつけられた。



純やはすかさず地面へ転がる感染者の頬めがけ金属バットをおもいっきり振りかぶり



再度バットをスイングした。

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