第四話:チェリーボーイとファム=ファタール
俺が薫子の手で事務所内に強制連行されたのは、それから一分と経たないうちの出来事だった。
抵抗なんて、とてもできる状況になかった。
こいつがしかけた非道な精神攻撃、「しっかりと握手」が、俺の心身を一時的な麻痺状態に陥らせていたからだ。
そんな惚けたオツムがやっとのことで混乱から立ち直った時、この目が真っ先に認識したものは、目の前に置かれた珈琲カップとその中身だった。
淹れたての熱い珈琲から、湯気と一緒に芳醇な香りが立ちのぼり、嫌が応にも鼻腔の奥を刺激する。
そいつは、普段から飲んでるインスタントコーヒーとは違う、豊かで、高級感あふれる芳香だった。
「炒ったばかりのクリスタルマウンテンよ。この薫子さんが直々に入れてあげたんだから、きっちりと味わって飲みなさいよね」
いつのまにか俺の右脇を占めていた薫子が、耳元で恩着せがましく囁いた。
俺が軽くしかめ面をこしらえるのを見て、端正な口元を綻ばせる。
それは、小憎らしくも魅惑溢れる微笑みだった。
俺たちが並んで腰を下ろしてるのは、事務所の奥にあったカウンター席の部分だ。
四人分の丸椅子が床から伸びるような形で備え付けられている。
ちょっと窮屈な感じがするけれど、もともと狭い「トレジャー」の事務所だ。
ある意味、仕方のない配置なのかもしれなかった。
カウンターの向こうは、店側の専用スペースになっている。
薫子がその位置に陣取ろうとはしなかったのは、たぶんそいつが理由だろう。
でもその一方で、接客用の珈琲セットを迷うことなく勝手に取り出してくるこいつのさまは、図々しいを通り越して、あまりにも自然体に過ぎた。
いっそ清々しささえ感じられてしまう。
そのあたりは、勝手知ったる兄の店ってところか。
もっとも、いまの発言から察するに、備品の一部を薫子が管理している可能性は極めて高いものだった。
確かに、あのどことなく覇気に欠けた感のある
その微妙な力関係を想像すると、なぜだかおかしさが込みあげてくる俺であった。
実はこの時、事務所の中にいたのは俺と薫子のふたりだけだ。
悟さんは、と言えば、ガレージで薫子の「インテグラ」をリフトアップし、ミッションオイルの交換作業に入っている。
この魅惑的な美女とふたりきりっていう状況に、俺はなんとなくだが居心地の悪さを感じてしまっていた。
ふわりと甘い薫子の体臭が漂ってきた時、それが頂点に到達する。
心臓の鼓動が確実に三割以上はアップした。
なんでこんな風に心身が反応するのか、まったく理解できなかった。
妙にいらつく。
不愉快だ。
「冷めないうちにどうぞ」という薫子の勧めを待つことなく、すぐさまコーヒーカップに口を付けた。
揺らぐ内心を、誰にも悟られたくなかったからだ。
砂糖もクリームもいっさい入れない素のままの珈琲を、文字どおり、口の内部で堪能する。
奥深い苦みとまろやかなコクとが多重構成された味わいを形作っていて、それはある種の快感だった。
キューバの「クリスタルマウンテン」と言えば、ジャマイカの「ブルーマウンテン」に比肩する高級豆だ。
俺みたいな貧乏系雑食派にとっちゃ間違いなく贅沢品の類なんだけど、これほど美味いのなら、次から購入対象に選んでもいいかな、なんて考えてしまう。
世の中には、やっぱり試してみなくちゃわからないことが多いんだな。
そんなあたりまえの現実を、思いがけずに実感した。
先入観だけを根拠にして畑違いの商品にチャレンジしてこなかったいままでを、ちょっとだけだが恥じ入ってしまった。
「さて」
そんな俺の様子を気にも留めずにいた薫子が、紅い唇をカップから離した。
艶めかしいハスキーボイスが、確かな言葉を形成する。
「お互い朝の一服も済ませたところで、さっきの続きといきましょうか。君、あたしに言いたいことがあるんでしょう?」
唐突にそう促されて、俺は思わず顔を上げた。
そうだった。
そもそも俺は、この女に昨夜の借りを返すべく、わざわざ
妙な展開にかき回されて、本来なすべきことを綺麗さっぱり忘れちまっていたとは!
まったく、なんという失態だ!
「そ、そ、そのとおりだッ!」
自分の間抜けぶりに気付いた俺は、無自覚な照れ隠しも手伝って、素っ頓狂な声をあげた。
それでも、努力は放棄しない。
無理矢理に自分自身を奮い立たせ、俺は必死に発言を続けた。
続けようと試みた。
でもそんな俺を、薫子の左手が鋭く制した。
オトナの風情を漂わせる妖艶な眼差しが、長槍みたいに俺を突き刺す。
「大丈夫大丈夫。みなまで言わなくても、おねーさん、君の言いたいことはちゃあんとわかっているから。つまりはこうよね」
残った右手で頬杖をつきながらうんうんとわざとらしく何度も頷き、こいつは真面目くさった顔でとんでもないことを口走った。
「右手と左手、どちらの手でストロークさせたほうがより満足度の高いオナニーができるか聞きたい、でしょ?」
「違うわ!」
脊髄反射で俺は叫んだ。
右手が、どんと音を立ててカウンターに叩き付けられる。
「俺が、いつどこでそんな話題を持ち出したッ!? 話しの脈絡が一ミリも合ってねェじゃねェかッ!」
「やあねェ、ちょっとした冗談じゃない」
怒号をさらりとスルーして、からからと薫子は笑った。
「君もオトコなら、女の子と楽しく会話する時には、もっと心に余裕を持たなくちゃ駄目よ」
「公の場で言っていい冗談と、そうじゃない冗談とがあるだろうが」
俺は、きっぱり断言した。
「だいたいだな、女が白昼堂々と下ネタを口にするなんて、恥ずかしいことだとは思わないのかよ」
それを聞いた薫子の眼が、驚いたように丸くなった。
頬杖をついていた姿勢を改め、まじまじと俺の顔面に視線を這わす。
「なんだよ。文句でもあるのかよ」
挑発的な反応にも動ぜず、こいつは、はっきりとした発音で呟いた。
かわいい、と。
「まさか、君みたいな男の子からそんな素敵な台詞を聞けるなんて思わなかったわ。その年で、まだ『女の子』に幻想持ってくれちゃってるわけだ」
意味ありげに、ふ~んと鼻を鳴らす。
「もしかして、君、童貞?」
「悪いかよ!」
言わなくてもいいことを、勢いでつい言ってしまった。
「キスだってまだしたことねえよ」
「そっか、童貞か。それなら、まあ仕方がないよね~」
童貞か、童貞か、と幾度も噛み締めるように繰り返す薫子。
その顔付きからは、悪戯好きのやんちゃ坊主にも似た雰囲気が、それこそ痛いほどに感じられる。
いやむしろ、小動物を弄ぶ子猫と言ったほうが正しい表現か。
俺は改めて、自分が何を言ってしまったのかを悟った。
湧き上がって来る恥ずかしさが、顔全体を紅潮させる。
ふたたび現れた出所不明のいらつきが、心身を衝動的に突き動かした。
「俺は、そんな話をしに来たんじゃないッ!」
強引に会話の主題をねじ曲げて、単刀直入に俺は言った。
「俺は、あんたにリベンジするために来たんだ。この俺ともう一度戦えッ!」
「戦えって──」
きょとんとした顔付きをこしらえながら、薫子は俺に応じた。
「あたしとベッドインしたいってこと? 童貞くんが? そりゃ、あたしみたいな絶世の美女と知り合っちゃった君の気持ちはわからないでもないけど、そこはもう少し順序ってものをね──」
明らかにからかわれていることがわかった。
怒りにも似た感情がほとばしる。
「誰もそんなことは言ってねえよ!」
叩き付けるような口調で、俺は頓珍漢なこいつの台詞を頭ごなしに否定した。
「言いたいのは、『俺とクルマ同士のバトルをしろ』ってことだ! 俺は、どうやっても昨日の借りをあんたに返したい。それだけだッ!」
「なんだ。つまんない」
急に冷めたような口振りになって、薫子は、ぷいと俺から目線を外した。
「そんなの、端っからお断りだわ。だって、君、はっきり言って下手糞なんだもの」
「へ、下手糞だとォッ!」
俺は激高した。
「あんたが俺より上手いのは認める。認めるが、俺だって見晴峠じゃこれまで負け知らずできてたんだ。それを下手糞だとは言わせ──」
「下手糞なのを自覚していないようじゃ、本当に救いようがないわね、君」
いまにも噛み付かんばかりの勢いを軽くいなして、薫子は俺の台詞に割り込んだ。
精気あふれるふたつの瞳に見詰められ、不覚にも一瞬気圧されてしまう。
その隙を突くようにして、こいつは言った。
自分の言葉で。
薫子は、決して蔑むような色を見せずに、淡々と、あの夜に俺が演じた走りのすべてを第三者視点で解説してみせた。
それは、きっちりと系統立ち、ちゃんとした理屈に則った内容だった。
アクセル、ブレーキ、ステアリング。
そのすべてにおいて俺の操作は雑で、とても理論的なものじゃなかった、と、こいつは語った。
具体的にその標的となったのは、俺が路肩に飛び出した、あの右コーナーについてであった。
「クルマはね、タイヤのグリップが許す範囲でしかコーナリングを行えない乗りものなのよ」
まるで熟練の教師が出来の悪い生徒に伝えるような穏やかさで、薫子は俺に言った。
クルマが左右に頭を振る力、すなわちヨーイングって奴は、前輪のグリップによって左右される。
方向舵である前輪が路面とグリップして横方向への力を発揮しない限り、どれほどハンドルを切ってもクルマは直進しようとする。
だから、クルマをしっかり曲げるためには、それをヨーイングさせるのに必要なだけ、前輪をグリップさせてやらなくちゃいけない。
そこで重要なのが、いわゆる「荷重移動」という奴だ。
クルマっていう乗り物は、加速することで後ろへ、減速することで前へ、と、かかる荷重が変化する。
そいつはまったく物理法則に従った動きで、全能神の思し召しでもない限り決して揺るぐことはない。
そしてグリップは、対象に押し付ける力、すなわち垂直荷重が大きければ大きいほど、それに比例して強く働く。
つまり、まっすぐ前に進もうとするクルマを左右に動かすためには、前輪にかかる荷重をより大きくして、発揮できるグリップを増やすことが効果的なのだ。
「ドライビングテクニックってのの大半は、どうやって四つのタイヤに効率良く仕事をさせるか、それに尽きると言っていいわ」と、薫子は断言した。
「でも、あの時の君は、クルマに荷重をかけて曲がるなんてちっとも考えてなかったでしょう? そうじゃないと、あの速度でブレーキングもせず、タイヤ任せにコーナーインするなんてありえない話だもの」
俺は、ひと言も言い返すことができなかった。
そのとおりだったからだ。
あの時は、ただただ前に行くことだけを目論んで、「クルマを操る」なんてことは頭の片隅にすら思い浮かべていなかった。
図星を突かれるとは、まさにこのことだった。
「そんな君がこれまで敵なしでこられた理由も明らかだわ」
沈黙したまま反論しようともしない俺に向かって、なおも薫子は畳みかける。
「危険を顧みないでガンガン踏んでく君を見て、誰も彼もが『付き合ってらんない』って感じたからよ。要するに、いままで君が踊ってきたステージは、本当に君だけのものだったってことね。
薫子の言っていることは、それまで俺が自覚していた事実の再確認に過ぎなかった。
でも、改めてはっきりそう言い切られるのは、正直かなりの衝撃だった。
内心で抱いていたささやかなプライドは、文字どおりぺしゃんこに踏み潰された。
「……それでもだ」
歯軋りしそうになる自分自身を必死になって押さえ込み、俺はやっとのことで言い返した。
「たとえ、あんたからそう思われていても……いや、そいつが真実であっても、俺はあんたと再戦して、そして勝ちたいんだ」
「莫迦ね」
今度は侮蔑の意志を隠そうともせず、薫子は俺のことを一瞥した。
「本気であたしに勝てるつもりなの。度胸一発だけが強みでやってきた素人少年が」
「そんなこと、やってみなくちゃわかんないだろ!」
「やるだけ無駄よ」
食い下がる俺を振り払うように言い切った薫子は、何を思ったのかカウンター脇に積み重ねて置かれていた緑色のクリアブックへと手を伸ばした。
ぱらぱらとファイルをめくり、意図した箇所を目の前に広げてみせる。
そのファイルには、どこかのホームページ画面をプリントアウトした紙が差し込まれてあった。
表題に書かれた文字列を、無意識のうちに口ずさんだ。
「G6ジムカーナ? ルーズドッグ
「関東・中部・関西地区にあるチューニングショップが合同で開催している競技系のイベント、その今年第一回目のリザルトよ」
説明口調で薫子は俺に言った。
「JAFが主催する正式競技とは違うけど、きちんとしたルールに基づいてドライバー同士が腕を競い合う、れっきとしたモータースポーツ。君が自己満足に浸っていた峠攻めなんかとは、全然違う世界のバトルね」
言われてむっとした俺は、ふんと鼻を鳴らして唇を歪めた。
眉根をしかめて言い返す。
「それが、いったいどうしたってんだよ?」
「黙ってここのところ見なさいな」
諭すようにそう告げて、こいつは細く白い指先でページ上の一点を指し示した。
それは、この競技会における成績一覧みたいな表だった。
細かい数字が並んでいるのは、おそらく走行タイムだろう。
俺は、その箇所に「大橋薫子」の名前を見付けた。
ぎょっとして身を乗り出す。
FF3クラスの二位。
そこには、間違いなくそう記されてあった。
並んでファイルに挟まっている別のページを見ると、FF3クラスってのは「競技用以外のタイヤを履いた、排気量千六百ccを越える前輪駆動車」の枠とある。
言うまでもなく、薫子の愛車「インテグラ・タイプR」が属するクラスだ。
無差別戦が当然の公道バトルとは違って、れっきとしたモータースポーツの場では参加するクルマのタイプによってクラス分けが行われているんだってことを、俺は生まれて初めて知ることになった。
そのクラスに出走しているクルマは、十台を満たすだけの数じゃない。
だけど、こうした競技系イベントにわざわざエントリーするような連中が「走り」に関して「ド素人」なわけもなく、そのなかで二番手を取るという実績は十分誇っていいことだと思われた。
つまり、いま俺の隣りにいるこの美女は、正式な競技の場でその実力を認められた、本当の意味での「凄腕」だったっていうわけだ。
夜の公道をがむしゃらに突っ走っているだけの俺なんかとは、文字どおり住む世界が違っていた。
例えるなら、クラス一番の駆けっこ自慢と、大会出場歴を持つスプリンターとの違いって感じか。
そのことを悟った俺の唇が、今度はぎゅっと真一文字に結ばれた。
悔しかった。
言葉が、喉の奥から一向に顔を出そうとしてくれなかった。
なぜだろうと自問するけど、その問いかけに応えてくれる者は誰もいない。
視線が、知らず知らずのうちに下方へと落ちていった。
「あたし、弱い者虐めは趣味じゃないの」
どことなく挑発的な微笑みを浮かべて、薫子は、俺に向かって淡々と告げた。
「でもね、これから君が腕を磨いて今年のG6ジムカーナで三位内入賞、つまり表彰台の上に登ることができたなら、その時は、あなたの挑戦を受けてあげてもいいわ」
意外とも取れる発言だった。
確かに条件付だけど、それは挑戦の受諾にほかならなかったからだ。
急に目の前がぱっと開けた気がした。
だから俺は、「本当か!」とひと声叫んで、目の前に垂らされた蜘蛛の糸に脇目も振らず飛びついた。
絶望的だと思われた復讐戦の機会が、ほんのわずかだけど与えられたんだ。
無駄になんてできるはずもない。
「ただし!」
だがその一瞬、歓喜の表情を形成した俺の鼻面を、薫子は強いひと言でもって叩き付けた。
続けざまに奴は言う。
「一度チャレンジが失敗するたび、君にはちょっとした罰ゲームを受けてもらうわ」
罰ゲーム。
その発言を耳にして、俺の勢いはまたしても第一歩目から挫かれた。
もちろん、ここで退く気などさらさらなかったけど、それでも弱気の虫が腹の底から這い出るのを止められなかった。
「ば、罰ゲームってなんだよ?」
内心で格好悪いとは思いつつ、恐る恐る俺は尋ねた。
それを受けた薫子の表情がまるで契約を求めるメフィストフェレスみたいに見えたのは、果たして気のせいだったんだろうか。
いや、その印象がまったく正しかったことは、直後に放たれたこいつの発言で明らかとなった。
薫子は、「それは、その時になっての、お・た・の・し・みってことでよろしく」と乗りのいい軽快な口調で告げると、その直後にとんでもない要求を突き付けてきたのだ。
「加えて」という言葉を先鋒にして、奴はその内容を口にする。
それは、なんと「一度も表彰台に登れなかった時には、君のクルマに貼ってあるあの悪趣味なイラスト、全部はがしてちょうだいな」という驚天動地の代物だった。
「パルサー」から「俺の嫁」をはがすだと!
そいつを聞いた俺は、思わずごくりと息を飲んだ。
まさしく魂を削るような想いを込めて描きあげた、俺の、そう俺だけの「フレデリカ」を無惨にもカッティングシートの成れの果てとする。
そんなこと、到底受け入れられる要求じゃなかった。
相思相愛でラブラブやってきた熱烈新婚カップルに、「離婚しろ」って言っているのと同じようなものだ!
くっ、と唸って拳を握り締める。
なんという究極の選択だろうか。
確かに「勝てば問題ナッシング」という向きもある。
そのこと自体はまったくもって正しいし、俺だって真実だと思う。
だがしかし、初体験となるモータースポーツの世界、その戦場で並みいる猛者どもを掻き分け表彰台に登るという偉業を成し遂げられる自信を、この時の俺が持っていなかったっていうのも、また疑いようのない事実だった。
胸中で、ちっぽけなプライドと「フレデリカ」への愛とが、激しくせめぎ合いを演じ始める。
どういうわけかその戦いは、ほぼ互角な推移を見せていた。
ほとんど鍔迫り合いさえに近い。
普段の俺なら、迷わず「フレデリカ」との蜜月を守るほうに舵を切っていただろう。
なぜそうしなかったのかは、この時にも、そしてあとになってからも、さっぱりわからない理由からだった。
「悩んでる、悩んでる」
鏡の前のガマガエルみたいな俺の様子をなんとも楽しそうに眺めていた薫子が、ふふっと微笑みながら告げてきた。
それは、ある意味で決定的な一打となって、俺の背中を力一杯どすんと押した。
そう。
奴は、紛れもなく言ったのだ。
耳を疑う、とんでもない提案を──…
「もし、君が見事あたしと再戦する権利を掴み取ることができたなら、あたし、ひと晩君のものになってあげてもいいわ。もちろん、オトコとオンナの関係でって意味よ。どうする? 圭介くん
薫子の口元がにぃ~っと嫌らしい笑みを浮かべたのを、この時はっきり、俺は見た。
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