第74話
四人とも準備を済ませ、酒場に向かう頃には軽く日が傾きはじめていた。
宿を出ると街中は、さらに煌めきを増し色鮮やかになっていた。
様々なところから聞こえてくる賑やかな声。
街ゆく人達はとても明るい。
そんな中、大きめの酒場を目指して歩き出す。情報集めをするにも静かなお店よりは、広々としたところで何気なく聞くのがいいだろう。なによりこの街の人達の雰囲気も含めてどんなところかを見たいしな。
そしてある店の前で足を止める。
豪気な声を上げながら酒場に入っていく冒険者や商談だろうか複数人で笑いながら入っていく商人、お付のような人を連れてきているのはどこぞかの貴族だろうか?
(色々な人達が入っていく。セツナとユウヤはお腹ぺこぺこのようだし、ミラは酒〜酒〜っと悶えてて少し怖いしそろそろ入るか)
俺達は酒場へ足を運ぶ。
大きな店構え同様、店内はとても広く何十という大きな丸テーブルが広がっている。階段を上がるとさらにテーブルが並んでいるのが見える。
すでにそのほとんどが埋まっていた。
飯時よりかなり早くきたのにすごい混みようだな。
店員に案内され入口近くのテーブルへ案内されると、そこにはすでに三人で飲んでいる冒険者の人達がいた。
「よう。お疲れ。子供連れてなんて珍しいな。気兼ねなく座ってくれや」
座る前に冒険者の一人が声を掛けてくれる。
「すごい混みようですね。では失礼します」
俺も軽く挨拶をして腰を下ろす。
そんな様子を見てユウヤ達も座っていく。
メニューを見ると適当な盛り合わせと飲み物を注文する。足りないものは各自注文してもらうことにした。
店員が下がったところで先程の冒険者の人達を見る。
装備を見た限り、かなりの手練れだろう。年季は入っているがどれもしっかりと手入れされている。
すると先程声をかけてくれた冒険者の人と目が合う。
「お前さんたち来たばかりか?この酒場はいつもこんな感じに混んでるんだせ。相席なんていつものことだから気にしなくていいからな」
ガハハと笑いながら気さくに話しかけてくれる。
そして飲み物と料理が運ばれてくると七人での乾杯が始まった。
ガツガツとひたすら食べる育ち盛りのユウヤとセツナ。
狂ったように笑いながら上機嫌にガバガバとお酒を飲むミラ。
競うように食べて飲んでと相席の冒険者達。
皆とても楽しそうだ。
さてと俺は俺で動こうかね。
「みんな盛り上がってますね。あの聞きたいことあるんですけどいいですか?」
挨拶をしてくれた冒険者も俺同様全体を見る感じでいたので声をかける。
「ああ。まあ俺の知ってる範囲ならな」
酒を煽り髭についた泡を腕で拭っている。
「それでは──」
話はとてもわかりやすく説明してもらえ、この街の構造やコロシアム、カジノについてなど話が聞くことができた。
この人達はコロシアムに出て金を稼いでいるらしい。この街自体に貴族の人達が沢山いるので娯楽のためというのもあるが、上位になるとこの街での警護職につけるらしい。それがとても魅力的みたいだ。
カジノについてはしっかりとした取り決めがあり、無秩序ではなくしっかりと管理されこの街の発展に貢献しているということだ。
街に入る時に通された装置は、この街での前歴チェックだそうだ。
なるほど。コロシアム上位になる腕の立つ人を高待遇の警護に回すことでこの街の治安の良さがあるわけか。
見えないところでどんなことをしているのかなどは分からないがこうして治安よく街を維持できているのだから大したものだな。
俺は周りにいる客層を見る。
改めてみるとガラの悪い客層は一切いない。荒くれ者は生活が出来ないのだろう。
コロシアムで稼ぐにしても相当腕が立たなければいけない。カジノで一悶着あったら腕の立つ警護人が取り締まる。
なるほどね。大体どんな街かわかったな。
冒険者の人がこちらにも質問をしてくる。
「そういえばお前さん達こそ、この街になにしにきたんだ?女子供がきてもあまりやることなさそうだが」
するとユウヤが口を開く。
「僕達もコロシアムに出るんだ」
冒険者達はこんな子供が無理じゃないかといった顔をする。
続いてミラとセツナは目を輝かせて
「私はカジノにようがありまして」
「私は一気にお金を稼ごうと思いまして」
冒険者達は陽気に笑い出す。
「そうかそうか。よし。じゃあ今日はお前さん達の勝利を祈って乾杯だ」
大分お酒も回ってきたのだろうテンションが高くなり陽気になっている。
そして俺達は楽しい食事を取って冒険者と別れ宿へと戻る。
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